第13話 1枚目:スキル発掘

 結局、偏食スキルからボロボロと出てきたスキルは感知系スキルや【採取】や【錬金】まで巻き込み、掲示板と周囲の反応から各属性の魔法スキルや魔力・霊体関連スキル、果ては一部魔物固有スキルにまで影響がある事が判明した。今持ってるスキル、ほぼ全部関連してるんだけど。

 魔物プレイヤーの中にも検証班と呼ばれるプレイヤー集団の一員が居て、泡を食った様子で誰かと連絡を取っているのが印象的だった。いや、まさかこんなことになるとは思ってなかったんだよ。

 その結果として、本としての人気は最底辺、最も読まれない筈の図鑑・事典系が大人気という事態に。


「いやしかし、まさかあんな所から派生するとは思っていなかったな!」

「あなたも何か飛び出したんですか、「第一候補」」

「うむ! 神官を目指し神を復活させると言っただろう?」

「……神に関するスキルすらあったと?」

「まさか歴史資料から派生するとは思わなんだぞ!」


 ガタガタガッシャン、と、種族関係なく頭を突き合わせていた検証班の辺りから派手な音が聞こえた。私もたぶん内心は一緒だ。つまり、マジか。


「何。ほれ、聖遺物や奇蹟の跡と言ったものは歴史を調べる事で出てくるものであろう? なれば、神の痕跡はすなわち歴史にあるのではないかと。むしろ歴史になければ何処にあるのだ! と、片っ端から目を通しておったらな!」

「先程まさかとか言っていませんでしたか? まぁ理は通っていますが、本当に全く……検証班としては、むしろこちらがイベントの本番になっていそうですね」

「くはは! ダメ元で半ば可能性潰しであったのは否定せん! あぁそうだ、少し気になって会場に戻ってみたら、見事ながらんどうであったぞ!」


 どうやら、見学エリアに来ているプレイヤーは1人残らず大会の観戦を放り出しているらしい。「見学」エリアとは。


「……しかし、神、ですか。歴史から」

「ふむ。何か引っ掛かったか? 「第三候補」」

「引っ掛かる、というより……」


 もしかしたら、理屈が過不足なく通る場所には、残らず「何か」あるのかも知れない。探検や探索といったものは本来、莫大な資料を調べ上げ、厳密に場所を絞り込み、入念な準備をして、それでもなお不測の事態が起こるものだ。

 つまり……思った以上に作りこまれているこのフリアドの世界は、思ったよりも目と足で稼ぎ、理詰めで突き詰める事で何かを得る、そういう仕組みになっているのでは無いだろうか?

 ……あぁ、そう言えばコトニワもそうだった。検索ワードや記事の内容によって、出現するアイテムの傾向は決まっていた。その量と種類が莫大過ぎたから、結局法則全てをはっきりさせる事は出来なかったけど。


「……理が通る、なら、有り得る。それが正しい、とするなら」

「ならば、何だ」

「正しいとするなら……「理が通りません」」


 理が通るなら、理が通らない。何を言っているのか、と、いつの間にか近寄って聞き耳を立てていたらしい検証班の1人が首を傾げているが、「第一候補」は至って真面目な顔のままだ。


「空を飛ぶのは容易な筈です。「なのに」碌な地図が存在しない。解析・調査に類する技術は高い。「なのに」詳細不明なロストテクノロジーだらけ。こんなに多くの本がある。「なのに」歴史に不明だったり空白だったりする部分がやけに多い」

「ふむ……ふむ、ふむ、なるほど。確かにそれは「理が通らぬ」な。理が通る事が正しいとするならば、不自然な事だ」


 「第一候補」の同意を受けつつ、考えを整理しながら言葉へ変える。そう、不自然なのだ。ゲームとしてのご都合主義、プレイヤーに開拓させる為の下地と流すなら別に問題ないが……。


「……まぁそれを言えば、「此処は何処なのか」を含めて論じなければならないので、流石に情報も力も足りませんが」

「くっははは、なるほど確かになぁ。今の所の共通認識として「碌な通信手段は無い」筈だ。その前提に則るなら、あの特大モニターはどういう事かとなってしまう!」

「この「訓練室」も、本も、料理も、空間も、その全てですからね。「理が通る」事を正しいとするなら、此処は文字通りの意味で何もかもが不自然極まりない。それこそ、私達の今の姿すらも」

「くはは! その極まった不自然の恩恵を受けなければ、会話も出来ぬ我らにはまだ時期尚早か!」


 真面目な顔をしていた「第一候補」が、その究明の難易度を笑って評した。全くだ、という全面的な同意を込めて、長く息を吐く。

 ……あ、聞き耳立ててた検証班メンバーが泡を吹いて気絶した。


「ところで「第三候補」。神と歴史の話から、何故そのように飛躍した?」

「その辺のご都合主義的な言い訳って、大抵の場合「神の奇跡」や「神の御業」って言葉が使われるでしょう? しかも此処では実際に神が居ますし」

「なるほどな! 道理だ!」

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