第6話 1枚目:最序盤レベリング2

 もがもがと微妙に浮遊しているらしい身体を動かす事でそこらにある謎の当たり判定に接触し、ダメージを受けるのがスキル上げの基本だ。というか、ほぼそれしかできない。

 ではそれ以外には何もやることが無いかというと、攻略ページや掲示板なんかを見ながら一応色々頑張ってみていたりする。


「キュゥゥ……(特に感知系は助かる)」


 例えば早々に手に入った【心眼】は物凄く大雑把なグリッド線みたいなのが見えるようになったし、【魔力感知】は周囲にレーダー感知みたいな光点が見えるようになった。光点に当たればダメージが入った感覚があるので、あれが魔力で良いようだ。

 で。他に今の状態で取れるスキルは暇潰しも兼ねて片っ端から取得を目指している。お陰で控えスキルがごちゃごちゃと見にくくなってしまっているが、仕方ない。


「ピーッキュ(流石に単純作業はつらい)」


 だって、何もないと本当に、オフラインの作業ゲーをしている気分になるのだ。VRMMOなのに未だに会話どころか他のプレイヤーもNPCも見たことが無いってどういうことなの。

 コトニワは単純作業ゲーに見えて、その実アイテムの組み合わせや「庭」の景観いじりで無限に時間が溶かせた。あれでなかなか奥が深いというか、気を抜くと丸1日ぐらいなら簡単に持っていかれる中毒性があったりしたのだ。

 スタミナっていう概念が出来る前のゲームっぽいものだったから、ブログの記事を書いたり検索しまくったりしたらすぐかつたくさんアイテムは手に入ったし。そのアイテムの組み合わせも百科事典が作れるのでは? ってくらいの幅があったし。


「……キュー……(うちの子に会いたい)」


 ついコトニワの事を考えてしまい、ちまちまと画面の向こうで動いていたチビキャラの住民達を思い浮かべる。チビキャラの時ですらひたすらに可愛かったのに、実際に触れあえるとか一体どうなってしまうのか。いや嬉しいには違いないんだけど。

 ぺたーっと意識して地面に張り付き、じっとすることで隠密系のスキル取得を目指しつつ感知系スキルの経験値を稼ぐ。……控えに回している以上経験値は1%にまで落ちているのだが、入れ替えられないのだから仕方ない。

 スキル取得時点でのレベルは0なので、スキルを取得するだけでは種族レベルは上がらない。そしてスキルが多くなればなるほど、あらゆる行動で経験値が入るが、育てるのが大変になる。


「ピーッキューゥ!(分かってるけどとりあえず絶対レベルが必要なんだからしょうがないじゃないか!)」


 と、叫んだところでスキル取得通知。……【威嚇】。違う、そうじゃない。

 今度こそ大人しく地面に張り付く。他に気配が無いからか、なかなか取得通知が来ない。まぁこんな何の気配もない所で隠密とか難易度が低すぎる上にほぼ意味なんてないけどさ。だって自分以外何もいないんだから。


「……プゥ(しかしほんとどこだここ)」


 小声で呟きつつ、レベル0スキル補正で分かる範囲の周囲の様子を確認する。……なんとなーくデコボコしている事と、魔力の塊が上下左右前後どこにでもある事から、多分洞窟なんだろうな、ぐらいしか今の所分かっていない。

 頭の中に公式ホームページに載っていた、とてもざっくりとした『スターティア』周辺の地図を思い浮かべる。……岩山のような場所は無かった筈だ。という事は、その外にある可能性が高い。

 始まりの街にたどり着くまでにどれだけかかるのか、である。スタート地点とは何だったのか。


「キュー……(それでなくても魔物プレイヤーは街に入る難易度が高いっていうのに)」


 掲示板情報ではあるが、まず1回は門番をしている兵士に止められるのが大前提。その止められ方が人型から離れているほど警戒度が高く、完全に獣の姿をしているといきなり弓で威嚇射撃されたりするんだそうだ。

 そしてきちんと【共通言語】を上げておかないと、プレイヤーだと認識してもらえずそのまま倒されるまであるらしい。魔物プレイヤー同士だと、強く意識しなければ【魔物言語】しか上がらないのだそうだ。

 とりあえずレベル5あればギリギリ何とか話が通じる相手扱いされるらしいので、やはり簡単に上がる範囲では上げておけ、というのが最終結論だったか。武器スキルですら適当な素振りで上がるらしいし。


「……ピゥ(通りでチュートリアルがキャラメイクの場所で出来た筈だよ)」


 もしその辺が『スターティア』でしか受けれなかったら、魔物プレイヤーは全滅してるだろうな、と思った。キャラの作り直しという意味で。

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