2-6
家に帰って買ってきた弁当を食べて、それからパソコンに向かった。
しかしアリスにログインするのではなく、インターネットのブラウザを立ち上げて海について調べる。
そこには様々な情報があった。
ネットが普及した今、調べようと思えば誰かが海へ遊びに行った記録を見ることができる。それもご丁寧に写真付きでいろいろ書いてくれているからわかりやすい。そして、当然と言えば当然だが、その写真には顔は隠されているが水着の女子も映っている。
やはりみんな海には異性と行くのだろうか。まあ確かに、男だけで海に行ってもなんだか寂しくなりそうなのはわかる。ということは、古山の言っていた通り、夏と言えば海で、海といえば女子と水着なのだろうか。
(水着、かぁ)
パソコンの画面に映る写真を見る。顔の隠れた女子の水着姿。顔が隠れていることで、より想像力が働いてしまった。ここに映っているのが、もしもウルズだったら――。妄想していた彼女の素顔が、水着女子の隠された顔に重なった。
「――っ」
とたんに恥ずかしくなった。なにを考えているんだと頭を振ったが、一度思い描いた彼女の水着姿は簡単には消えてくれなかった。
「……これも、今までそういうことを犠牲にして勉強ばっかりしてきたツケなのかな」
だとしたら本当にもったいない日常を過ごしていたと思う。
いろんな水着写真を見た。そのどれもが顔だけ隠され、身体だけが映っている。その写真に写る女子の水着姿の全てに、尋人は妄想の中のウルズの顔を重ねた。
ウルズの素顔についてはいろいろと思った。固定された一つのパターンではなく、髪型から目の大きさ、鼻梁、顎のライン、唇の色――いろいろなウルズを想像していた。その想像の中で生まれたいくつもの彼女の顔が、その写真の隠された顔の部分と一体化する。
でもそれは、あくまでも尋人の妄想だ。現実の彼女の顔ではない。
とたん、知りたいと思った。
ウルズのことが――いや、ウルズというアバターを操作している彼女の素顔が、彼女の名前が、彼女のことが、知りたいと思った。妄想なんかじゃない。本物の彼女のことが知りたいと思った。
ウルズがどういうつもりで誘ったのかはわからない。
もしかしたら、本当にアリスの中にあるどこかへ連れて行ってくれるだけなのかもしれない。
でも尋人は違う。
アリスではなく、現実。
現実の世界で、彼女に会いたいと思った――。
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