第232話 迷路館の戦い『ダブル』


 カストールがその剣を薙ぎ払う!


 だが、その剣撃がその瞬間に、アイの『シャドウアーム』によって防がれる……。



 キンッ!


 キンッ……


 カキィーーン!!


 激しい金属と金属がぶつかったかのような衝撃音が響く。


 アイの超ナノテクマシンが超硬化され、カストールの持つ『ジェミニの連星剣』を弾き飛ばしているのだ。




 「な……!? なんだ? どういうことだ!?」


 カストールにはまったく見えていないようだ。


 「シニ晒せぇえええーーーーーっ! 許すべからじぃいいいーーーっ!!」


 アイがいっそう激しく超ナノテクマシンにエネルギーを集め始めて……。




 「な……!? なに!? まぶし……。」


 『シャドウアーム』がその超凝縮されたエネルギーを一気に集中させたため、眩しい光を放ったのだ。



 「輝彩拳骨(きさいげんこつ)のもぉーーーーーーどぉおおおおおっ!!」


 アイが叫んだ!


 巨大なげんこつと化した『シャドウアーム』……、いや、むしろ『シャイニングアーム』で、カストールをただただ殴りつけたのだ!





 ……いや、オレの好きなあのマンガ『奇妙な聖典』の悪役の使ってたスキルじゃあねえか!


 アイよ……。


 どうせなら、主人公側の技をパクるならパクってくれ……。




 「むぅ……!! ぐぅ……ぅううう……っ!?」


 カストールがその衝撃に剣を盾替わりにして耐える……。


 「うおおおーーっ! 『ジェミニの連星剣』よ! 隠されたチカラを見せろぉおおおっ!!  二重分身体……『ダブル』っ!!」


 カストールが魔力をその愛剣に注ぎ込む!




 「……っ!? マスター!! 伏せてください!!」


 アイがそういうが早いか、超ナノテクマシンがオレを床に伏せさせた!



 シュババァ……ッ!



 オレの後方の壁が切断された……!?




 「ふふ……。よくぞかわしたな……。」


 そこに立っていたのは、金髪のイケメン、カストールだった!




 「いったい……、どういうことだ? カストールが二人いる……?」


 そう、アイの『シャイニングアーム』で殴り飛ばされたはずのカストールが一瞬にしてオレの後ろから現れたのだ。


 オレの思考は今、超ナノテクマシンのドーピングによって光速思念となっている。


 一瞬の動きも見逃すことはない……。




 「ぐ……っふふ……。驚いたか? 実体と変わらない魔力の二重分身体『ダブル』だ! まるで二人いるかのようなこのスキルをとくと味わうがいいぃ!!」


 正面にいるカストールがアイの『シャイニングアーム』で受けたダメージがあるだろうに、立ち上がってきた。


 「そんな……!? 不死身だとでもいうのかしら……? あの一撃を食らっても起き上がってくるだなんて……。」


 アイも予測と外れたのか、驚いている。




 「ふっふっふ……。こっちの小僧は俺にまかせるがいい……。」


 そう言ってオレの後方のカストールが『ジェミニの連星剣』を構える。


 剣まで一緒なのか。


 つーか、魔力で創った『ダブル』って言ってたけど……。




 いや、単純にこれ二人いるんじゃねえか!?


 ほら、カストールって、双子座だし……。


 アイはどう思って……。




 「恐るべきは『魔力』というものかしら? まったく同じ者が二人いるようにしか観測できません。たしかに、二人が実体として存在する……かのように分析結果が出てしまいますわ! 完璧な観測結果なはず……。『魔力』は分析不可能……ということでしょうか……? 」


 アイがそうつぶやく。


 いや、アイさん……。


 やっぱ双子……とかいうオチじゃない?


 完璧に観測して実体として二人いるなら、それ、二人いるんじゃあないです?




 「ふはは! 見破れまい!? 俺たちのスキルを!!」


 「そうだ! 素晴らしいだろ!? 俺たちの魔力は!」


 カストールたち(?)が揃って自慢気に言ってくる。


 「く……、悔しいですが、魔力のないワタクシには見破れない……ですわ。マスター、ふがいないワタクシをお許しください!」


 アイも相当に悔しそうだ。




 いやいや……。


 だから、『俺たち』……って言ってしまってますがなぁあああっ!!


 二人なんでしょ!?


 双子なんでしょ……!?


 バレバレなんだよおぉおおおお!!




 カストールたちがそう言いながら再び、剣を構えた。


 アイも周囲の超ナノテクマシンをさらに集中させ、攻防一体の陣を敷く……。


 オレも見ているだけでは埒が明かなそうなので、アダマンタイトソードを構え、アイとオレとで前後のカストール(?)と相対するのであった……。




 *****






 いっぽうその頃、ヒルコはというとー。


 「うーん……。ずぅーーーっと、なぁーんにもないなぁ……。退屈だなー!」


 ぴょんぴょん跳ねるように進んでいた。




 だが、本当は途中で骸骨のモンスター、スケルトンが出てきたり、豚の魔物オークが現れたりしていたのだが、ヒルコがあっさりその超強力な消化液で消滅させてきただけのことで、実際はなかなかハードモードな道であったのだ。


 『右手法』に則って、右を壁に触れさせながら、すいすいと前進していくヒルコ。


 その道はどうもぐるぐると同じ地点を回っているかのようにも思えてくる。


 「はぁーあ……。ジン様と一緒に行きたかったなぁ。アイ様ばっかり、いっつもズルいんだぁ!」


 そうボヤきながらヒルコはひたすら前に進む。


 だが、その行く手には恐るべき魔人が待ち構えていることをヒルコはまだ知らなかったのである……。





 *****






 地下迷宮の奥深く、7人の魔人たちが座して侵入者の到着を待っていた。


 ネズミに似た魔物の種族・ズーグ族の長たちである。


 彼らの種族は、クトゥルフ神話では、ドリームランドの真ん中にある「魅惑の森」に住むネズミに似た知的生物だ。


 鼻の下には髭のような触手が密生しており、口からはみ出している凶悪な牙を隠していて、穴の中に住んでキノコなどを食べているが、実際は雑食性で、肉なども食べるようだ。


 ズークは人間と同程度の知性を持っており、非常に文明的な生活を営んでいる。


 もしズーグと遭遇した場合、注意深く、社交的に接することによって交渉が可能であろう。


 ただし、ズーグは狡猾で頭がいいため、交渉には細心の注意が必要であり、言葉が通じない相手には襲いかかってくる危険な種族なのだ。




 彼らの族長の名は、ズーグレア・ラミゲラ。


 そして、それに付き従う6匹の魔人が、ヨーセ、イェホーシュア、イェフーダー、シェマーヤー、ヒレル、シャンマイという。


 はるか古代の伝説のズーグの聖人の名を冠した彼らは、ズーグ族の英雄であった。




 「ふん……。我らがわざわざ迎え討つ必要があったのか? 族長。」


 「ヨーセの申すとおりじゃ……。さっさと討ちに行けば、済むことであろうて……。」


 「ほんにほんに。」


 「まあ、族長も協力者である『不死国』のやつらの顔を立てねばならんのじゃろうて……。」


 「ぎぃぎぃ……。」


 「まあ、そう言うな。我らは役割を果たせばよいのじゃ。かの『ウルタールの猫』どもをみなごろしにするためにもな?」


 「まったくだ……。ぎひひひ……。」




 すると、そこへ全身黒尽くめの侵入者が現れた。


 勢いよくズーグ族の待ち構える部屋の扉を開ける……。



 「む……!? 誰じゃ? おまえ……。あのジンとやらの仲間じゃなさそうだが……。」


 族長ズーグレアが尋ねる。




 その全身黒尽くめの人物が地の底から響くような空虚な声を発した。



 「オレの名は『ヴァニタス・ヴァニタートゥム』。虚空の彼方から貴様ら聖人の名を冠する者どもを葬り去りにやってきた……。」


 「なんじゃと……? 我ら古の聖人の生まれ変わりも同然……。それに歯向かうなら、どこの誰だろうと容赦はせんぞ?」




 「愚かなことよ……。貴様らが本物であろうと偽物であろうとどうでもいい……。場違いの時代の遺物『オーパーツ』はすべて消し去るのみ……。貴様らは禁忌に触れている……。」


 ヴァニタスと名乗ったその男は、ただそう告げ、恐ろしいまでの空虚な眼で、ズーグ族たちを見たのであった……。




~続く~



「続きが気になる!」


「面白かった!」


「まあ、読んでもいいけど!?」


と思ったら、


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何卒よろしくお願い致します!!



あっちゅまん



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