空中戦

第216話 空中戦『ウルタールを目指して』


 オレたちは戦闘の終わったヘルシングさんたちのところへ急ぎ足で駆けつけた。


 空からコタンコロとアテナさんたちも降りて来ていた。




 「ヘルシングさん!! やりましたね!」


 「ああ。ジン殿のサポートがあったおかげだ。礼を言う。」


 「いやいや。ヘルシングさん。オレのサポートなんてぜんぜん無くても平気だったじゃあないですか!?」


 「そんなことはないぞ。周囲からヤツラを逃さないようにしてくれていただろう? あれのおかげで闘いを有利に進められた。」


 「あら……。わかっちゃってましたか?」


 「はっはっは……。もちろんだ。ジン殿のその奥ゆかしさも変わらないな。」




 「ジン殿。ヘルシング殿。やったな! これで、この周囲一帯はヤツラの勢力圏から取り戻せたであろう。」


 「アテナさんたちも。空の敵をすべて、お任せしちゃって……。助かりました!」


 「うむ。さすがは『法国』の聖女騎士だな。あれほどの数をよくぞ逃さず仕留められた。尊敬に値するぞ。」


 「何を言うのだ。卿らこそ! たった今も数万にものぼる吸血恐竜どもを殲滅したところではないか!? 敬意を表するのは私たちの方だよ?」


 「まあまあ。お二方ともすごすぎましたよ。さすがですね!?」




 「……。」


 「……。」


 ヘルシングさんとアテナさんが、二人して黙ってしまい、ジト目でこっちを見てくる。




 「な……、どうしたんですか?」


 「どうしたもこうしたもないであろう? 今回の戦いで一番の功労者が何を言っているのだ? ジン殿。」


 「そうだな。アテナさんの言う通り。ジン殿こそ、あのとんでもない破壊力であっという間に敵の街とティラノ皇帝を葬り去ってくれたというのに……。」


 「え……? いや、あれはただ隕石を落としただけで……。」




 「「それがとんでもないスキルだって言ってるんだよ!?」」


 アテナさんとヘルシングさんが息ぴったりで声を揃えて叫んだ。


 まあ……。


 たしかに、やりすぎちゃったかな……。






 「まったく……。あんな魔法かスキルかはわからないが……。神話クラスだぞ?」


 「うむ。あんなことをさらりとやってのけるジン殿のチカラは計り知れないな。これは歴史に残る偉業だぞ……。」


 「いやいや。そんな、おおげさな!?」


 「いえ! お二人の言う通りです! マスターは歴史に残る偉業を行ったのです! さすがはワタクシのマスターです!」



 いやいや、アイさん……。


 あなたの計算あってこそでしょう?


 オレ、指示しただけじゃん……。




 「ジン様はすごいのです!」


 「ジン様、イシカも尊敬であるゾ!」


 「ジン様、ホノリもリスペクトなのだ!」


 「うむ。我が主。さすがである!」


 「さすがは、アイ様の大ボス! ……恐ろしや(ボソリ)」


 「はぁ? ……なんか言いました?」


 「いえいえいえいえ……!! さっすが、ジン様ですね!」


 デモ子がアイに慌てて言い訳をする。




 「みなさん! これからどうしますか? アイ。状況を説明してくれ!」


 「イエス! マスター! まず、北の地でサルガタナスさんたちが待機しております。『不死国』の第五葷・空軍は、そのさらに北の街『トゥオネラ』を滅亡させ占拠している模様……。」


 「本当に『トゥオネラ』の街が全滅したのか……!?」


 「そうです。監視衛星『ヴァスコ・ダ・ガマ』からの映像分析によると、街の住民は虐殺されたようです……。」


 「くぅ……!? あの街には偉大な王・トゥオニ王が……。魔女レダもやられたのか……!?」


 「生き残った者はいないようです……。」


 「そうか……。残念だ……。」


 ヘルシングさんもアテナさんも沈痛な表情をしていた。




 「目下のところ、『不死国』第五葷は動く気配がないというところか……。」


 「はい。そして、『ウシュマル』の街を味方の軍が三軍で包囲しております。」


 「なるほど……! それは『黄金都市』からのレンミンカイネン軍、『テオティワカン砦』からの軍、そして、『チチェン・イッツァ』からの軍だな?」


 「そのとおりでございます。」




 ふむ……。そうなると、北の防衛線はこのまま、サルガタナスさんに警戒態勢を維持してもらいつつ、『ウシュマル』の街へ加勢に行ったほうが良いのか?


 もしくは、オレたちはサルガタナスさんたちと合流し、『トゥオネラ』の街を解放しに行くのが良いか……?


 だが、『トゥオネラ』の街にはもう生き残った住民はいないんだよな……。




 「ジン殿……。『ウシュマル』の街は御味方の軍に任せようではないか? それより、『トゥオネラ』が落とされたとなると、この川沿いの北の街『ウルタール』も心配だ。」


 「うむ。アテナ殿の言うとおりだな。『ウルタール』の街のさらに下流には、かの犯罪都市『ダイラス=リーン』もあるからな。」


 「そうなんですか!? それじゃあ、サルガタナスさんたちと合流して、北の地に向かいましょう!」


 「では、マスター! この『ケルラウグ川』を下り、『ウルタール』の街を目指しますね?」




 アイがそう言って、通信を飛ばす。


 (ジンさん……。ジンさん……?)


 (んん!? その声は……!? サルガタナスさん!?)


 (はいはぁーい! そのとおりですわ! ジンさん、聞こえてるようね?)


 (思念通信、サルガタナスさんも使えたんですか!?)


 (いや……。アイさんが魔法でつないでくれたんじゃあないの?)


 (イエス! ワタクシがお繋ぎさせていただきました!)


 (おお! アイ! 有能な……!)


 (くふぅ!! ありがたきお言葉!)




 (そうだ……! サルガタナスさん! こっちは片が付いたから……、これから『ウルタール』の街へ向かうことになったんですよ!)


 (なぁるほどねぇ……。やはり、さきほどのものすごい衝撃はジンさんの仕業だったのねぇ……。理解しましたわ。私たちも合流しますよ! 『ウルタール』で会いましょう!)


 (はい! くれぐれも『トゥオネラ』の吸血鬼たちには気をつけてくださいね!)


 (ほぉ……。敵は『トゥオネラ』にあり……ですか……。)


 (そのようです。では、『ウルタール』で!)


 (はい。『ウルタール』で!)





 「サルガタナス様……。やはり、『ジュラシック・シティ』を滅ぼしたのはジンさんでしたか?」


 「そのようね。恐ろしい方……。」


 「サルガタナス様、良かったですね? 味方で……。」


 「たしかにね。協定結んでおいて良かったわ。」


 「サルガタナス様、もしもジンさんと敵対することがあったなら……、勝てますか?」


 「そうね……。わからないわ……。なるべく、そうならないようにしないとねぇ……。」


 レラージュも、ウァレフォルも、ファライーも大いに恐怖し、決してそうならないようにと祈るばかりでした。


 サルガタナスたちは、北の地を警戒しながら、『ウルタール』の街へ移動するのであった-。




 ****





 「じゃあ、オレたちも行きましょうか……。えぇ……っと、川を下るんだよな……。どうするか?」


 ……とオレはちらりとデモ子を見る。


 「マスター。そうですねぇ……。」


 アイもちらりとデモ子を見る。


 「もう! あたしの出番じゃあありません?? 普通に声をかけてくれたって……ブツブツ……。」


 「はぁっ!? 自分から進んで役に立とうという気持ちはありませんの?」


 「いえ! ありますよ! もちろん、喜んでっ!」






 「では、行きますよぉ! みなさん、並んで並んで! 開け! 『異界の穴』っ!! 」


 デモ子がその手をかざし、空間をまるでジッパーを開けるかのように引き裂く。


 すると、目の前の空間に巨大な穴が空いた。






 まずは、オレたちが、そして、アテナさんたち、ヘルシングさんたち……と続き、異界の穴をくぐり抜けていく。


 そして、その後、『日本の銅像群』がずらりと一列に整列し、歩を揃えて、進んでいくのであった。


 うん。やはり、日本の銅像たちだからか、並び慣れている……気がするな……。




~続く~



「続きが気になる!」


「面白かった!」


「まあ、読んでもいいけど!?」


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あっちゅまん

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