第215話 恐竜の街へ『恐竜滅亡』



 「聖なる剣技……『聖(セント)ビンセントおよびグレナディーン・ショトウ』っ!!」


 ヘルシングさんの目にも留まらぬ剣が何十もディノエルフどもを切り刻む!



 「ぐぎゃぎゃーーっ!!」


 「ぎゅぇえええーーーーっ!!」


 ディノエルフたちの断末魔が響き渡る。


 ヘルシングさんが、どんどん無人の野を駆けるように、前へ前へ進んでいく。




 「くぅ……っ! 魔法が効かぬなら……、この俺様の剣で……! 叩っ斬ってやる!!」


 『十の災い』の『疫病を流行らせる』を象徴するタルボサウルスが、雄叫びを上げて切りかかってくる。



 「ふん!! アナタの相手は私がしましょう! 『バサタンは蟹の甲羅に似せて穴を掘る!』……というでしょう!?」


 身の程を知る……とか、そんな意味なんだろうか?


 ファット・フルモス大公が相変わらず、聞いたことがない格言めいたことを言いつつ、タルボサウルスと剣を交える。




 「おららーーっ!! 生意気なヤツめ! このタルボサウルス様が力で殺しまくり破壊し尽くすだけだッ! ブフ~~ッ きさまらの血のつまった皮袋どもがァ! どいつもこいつもズタボロの皆殺しにしてくれるゥ!」


 タルボサウルスが勢いづいてその巨大な剣でファット・フルモス大公に斬りかかった。



 「ふんふん!! スキありですよっ! 油すまし断ち大敵だ!」


 ファット・フルモス大公がその『イオニカ美童子の剣』を鞘に収めた!


 そして……。




 『剣の流儀・セント・ペトロ!!』


 居合抜きだっ!!



 シュィイン……




 目にも留まらぬ剣閃が、タルボサウルスの魔核を正確に切り裂いた……。


 タルボサウルスがその巨体をぐらつかせる。



 「ぐ……、ぐぅ……! なんだ……と……!? キャワワアァアアーーハァーーン!!」


 ズシィイーーン!


 タルボサウルスが倒れた。




 一方、『十の災い』の『虻を放つ』を象徴するカルノタウルスは、白亜紀後期のアルゼンチンに生息していた獣脚類で、体長は8メートル、体重は3トン。


 だが、仲間の中では小柄でほっそりとしていて、その軽い身体を活かして雄牛のごとく最速で走ることができた。


 「肉食の雄牛」という意味の名前の通り、素早いのだ。



 「上級加速呪文! 『静かな湖畔』っ!!」


 『Dans la forêt lointaine On entend le coucou 遠くの森からカッコウの声が聞こえる! Du haut de son grand chêne Il répond au hibou. 大きなカシの木の上からミミズクに呼びかけてる! カッコー、カッコー! カッコー、ミミスク、カッコー!』




 カルノタウルスがさらなる加速をする。


 目にも留まらぬ速さとはこのことだろう……。


 「キッシャァアアアアアーーーッ!!」




 その目の前に立ちはだかったのは、アーサー・ホルムウッド、ジャック・セワード、キンシー・モリスの三人だ。


 三人はルーシーという女性に惚れている者同士で、いわば恋敵同志でもある。


 だが、ここは息ぴったりである。




 「剣の奥義『セント・カテドラル・ケルン』……!」


 「剣の技『サンクチュアリ・エルサレム』ーーッ!!」


 「剣の技法『聖寿万歳』っ!!」


 『ヴァンパイア・ハンターズ』そろって聖なる剣技を放った。





 「グッ……パォーーーーーウフゥーーゥウウンッ!!」


 周囲をすごい速度で駆け抜けていたカルノタウルスが、ふっとばされて消滅していく……。


 吸血鬼の断末魔を残して……。





 しかし、ヘルシングさんたちの剣技はすごい。


 そして、その技の名は、非常に興味深い。


 オレにとってはなんだか懐かしい響きなんだよなぁ……。


 その伝統で受け継がれている技の名前が、聖なるものに関することっていうのはわかるんだけど……。




 もう、ディノエルフ軍も残っているのは、『十の災い』のシアッツ軍だけとなっていた。


 そのシアッツとヘルシングさんが今、最後の戦いを繰り広げていた。



 「このシアッツ・ミーケロルムがただ気候を操るだけだと思うなよ!? シアッツ(優れた捕食者)の名は伊達じゃあないぜ?」


 この二足歩行のディノエルフは、体重が4トン超、体長は9メートルほどあり、まさに巨大な肉食恐竜の姿そのものだ。


 シアッツとは、ユタ州の先住民ユト族の伝説に登場する大食いの怪物の名なのだ。




 「ぐぎゃ!」


 「ぎゃぅうっ!」


 「な……!? シアッツ様!? いったい、なにを!?」


 シアッツが周囲の同族であるはずのディノエルフたちに食らいついて捕食したのだ。




 「貴様らは我の糧になるがいい……。」


 「そ……、そんな!?」


 「ぐぎゃ……!」



 有無を言わせず、仲間を喰らい、自らの魔力をみなぎらせるシアッツ。


 身体も11メートルほどに成長し、体重も12トンは超えたであろう。


 ティラノサウルスの先祖は、このシアッツが最大の壁として立ちはだかった結果、長い時間、進化を阻まれたのだと推測されているのだ。




 「待たせたな! ヘルシングよ。我が『暗黒格闘術』を存分に……食らって死ぬがいい……。


 「もったいぶるな。どうせ貴様が死ぬ……。最初から全力で来い!」


 「ふん……。よかろう……。『暗黒霧双』!」




 シアッツの身体が暗黒の霧に包まれ、周囲が暗闇で覆われ、視界が遮られた!


 瞬間、シアッツの巨体が消え、ヘルシングさんの背後に回り込んでいた。



 「闇の一撃……『真闇・無闇』!!」


 シアッツの強力な蹴りが炸裂した。


 周りの大気ごと吹き飛び、真空になってしまい、暴風が吹き荒れるほどに……。




 「防御の型『サン・マリノ』っ!」


 ヘルシングさんがぐるり周囲を聖なる加護の剣で囲み結界と化す防御をする。



 ガッキィイイイーーーン……




 おそるべきチカラ同士がぶつかり、ものすごい衝撃波と衝撃音が響き渡る。



 シャシャシャ……


 超速度で繰り出されるシアッツの暗黒格闘術。


 その蹴りと強力なしっぽの一撃を、ヘルシングさんもその大剣で捌きつつ、寸前の見切りで交わしていく。




 一人と一匹のその闘いに誰も割って入れない。


 だが、その周囲のディノエルフたちが、次々と倒れていくのだ。


 シアッツがそのチカラを奪うために戦闘の合間に見えないほどのスピードで喰らい、捕食したことで数を減らしたというのもあるが……。


 だが、それだけではない。


 アイがその超ナノテクマシンを影のように忍ばせ、ディノエルフ一匹一匹の身体を補足し、その心臓……魔核を正確に破壊していっているのだ。




 ドカッ……


 シアッツの強力なしっぽの一撃が大剣ごとヘルシングさんを身体ごと後退させた。



 「終わりだっ! 『暗黒魔噛(あんこくまこう』っ!!」


 シアッツが暗黒の魔力を全開にして、ヘルシングさんに噛み付いた!!




 まさか……!?


 ヘルシングさんが……。


 ん……?


 噛み付いたはずのシアッツの様子がおかしい……。




 「聖奥義『バシレイア・トゥ・セゥー』……!!」


 シアッツの身体から光の帯が無数に漏れ、ヘルシングさんがシアッツの背後に現れた。


 まるで、瞬間移動したかのようだった。


 さすがに、今の動きは、オレの見てた視界でも、超ナノテクマシンの補正があっても、事後の残像しか見えなかったのだ。




 「ぐ……ぅ……、何万年も王として君臨するはずの我が……、我が……、こんなところで朽ち果てるとは……。き、さ……まぷわっ!! うふふふぅーーんっ!!」


 シアッツが断末魔を残し、消滅した。




 周囲のディノエルフも一匹残らず、倒されたようだ。


 文字通り、一匹残らず駆逐された。





 この世界からディノエルフ種族が滅びた瞬間だった-。


 恐竜は二度、滅亡したのだ……。




~続く~


©「静かな湖畔」(曲/スイス民謡 詞/作詞者不詳)




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あっちゅまん



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