吸血鬼殲滅戦・離

第175話 吸血鬼殲滅戦・離『人ごろし城・潜入』


 『人ごろし城』の中は薄暗く、見えにくい。


 階下のはるか下の方から、牛の魔人や、骸骨戦士どもがわんさか上ってこようとしていた。


 オレたちが侵入した塔の部屋は塔の最上階のようだ。


 全部で5,6階くらいか……。




 塔の螺旋階段を下りながら、迫ってくる骸骨戦士や、牛の魔人たちを切り倒していく。



 「巨人の見えざる手!メガトン・パンチだっ!!」


 オレは超ナノテクマシンを巨大な手に集合させ、前方から遅いくる敵に一撃を食らわせた。


 骸骨たちはバラバラになって吹っ飛んだ。




 「ほお! さすがだな! ジン殿! よし! オレも!」


 ヘルシングさんがそう言って、大剣を構えた。


 牛の魔人や骸骨戦士たちが一斉にヘルシングさんに襲いかかる。



 「聖(セント)ビンセントおよびグレナディーン・ショトウ!!」




 ヘルシングさんの目にも留まらぬ剣が何十も切り刻む。


 目の前の数多の敵が一瞬でバラバラになってしまった。


 この強化された補正の入ったオレの眼でもいヘルシングさんの剣の動きの殆どが眼に追えないほどだった。


 すごい……。


 鍛錬された剣に一点の曇りもない。




 「ワタクシも負けていられませんね。」


 そう言って、アイが両手を上にかざした。


 超ナノテクマシンが整然と何かのエネルギーの流れを作っている。



 「超伝導・氷結!」




 超ナノテクマシンで急激に冷やした大気を一気に敵にぶつけたのだ。


 瞬間冷凍されたミカンのように、骸骨たちや牛の魔人たちが固まってしまった。



 「なるほど。一体一体相手にしていたらキリがないものな!」


 「イエス! マスター!」


 「よし、一気に階下へ下りよう!」




 凍った塊になった骨や牛の獣人たちを通り抜け、オレたちは塔の1階に下り立った。


 広間にいた骸骨戦士を素早く、ヘルシングさんが一刀に処すと、上へ向かう階段へ向かう。


 階段を上がる途中も襲いかかってくる牛の獣人たちだったが、超ナノテクマシンの『シャドウ・アーム』で蹴散らして進んでいく。


 しかし、いったいどれくらい魔物が潜んでいるんだ。




 ギンッ!


 ドカッ!


 バコッ!



 次々と攻撃してくる骸骨戦士たちを吹き飛ばして進んでいく。


 上階へ上がると部屋がある。






 その部屋の扉をどかっと蹴り飛ばして開けた。


 中には強盗団の元首領ラバー・ブライドグルームが待ち構えていた。



 「来たな……。男爵様に歯向かいし愚かなる者どもよ!」


 その両手に青龍刀が二本、握られている。





 「ふん! 吸血鬼に魅入られた者か……。」


 ヘルシングさんが大剣を構える。


 オレもアダマンタイト・ソードを構え直す。




 盗賊ラバーの後ろから、あらくれた男たちが数十人現れた。


 「我が盗賊団は、不死身の盗賊団に生まれ変わったのだ。これからは財宝も女も奪い放題だぜぇ!」


 「「うぃーーーあぁーー!!」」


 盗賊団たちは一斉に掛け声をあげた。




 一斉に牙をむき出し、吸血鬼と化し襲ってきた。


 「ええい! 我がマスターに近寄るでないわ!」


 アイが結束力を強めた磁気による反射防御壁を周囲に展開する。



 襲いかかってきた吸血鬼どもが強力な電気によって、焦がされ、弾き飛ばされた。


 電磁気フィールドってやつだ。


 一瞬、吸血鬼どもは何が起きたかわかっていないようだった。




 「むぅ……!? 貴様ぁ……。高位の魔道士か!?」


 「いいえ! ワタクシは賢者よ!」


 「け……、賢者だと!? レアな職業だな! しかし、吸血鬼には他の種を圧倒する魔力があるのだ!」


 「喰らえ! レベル3減速呪文『かたつむり』!!」


 『でんでん、むしむし、かたつむり! お前のあたまは どこにある! つの出せ! やり出せ! あたま出せ!』


 ラバーが呪文を唱えると、吸血盗賊団たちの動きが素早くなった。




 まるでスーパーボールを狭い部屋の中で思い切り投げつけたかのように、盗賊吸血鬼たちが立体的にあちことバネのように跳ね回って襲ってくる。


 だが、アイの防護壁を打ち破ることはできないようだ。


 しかし、その持っている武器が防護壁を貫いて、時折り、中のオレたちにその切っ先が届かんとした。




 「こうしていては埒が明かない! 早く倒して上へ行くぞ!」


 「イエス! マスター!」



 オレは手のひらを前にかざした。


 「火炎放射だっ!!」



 目の前に業火が巻き起こり、敵を焼き尽くす。


 しかし、骸骨戦士たちは火炎を苦にせず、襲ってくる。


 そこをヘルシングさんが大剣で斬り飛ばしていく。


 息ピッタリって感じだな。




 「ぐぅ……。なんという魔力……。これほどの火炎は初めてだ……。」


 盗賊ラバーが焼けただれながら、うめき声をあげる。


 焼け焦げながらも反撃してこようと剣を振るう。




 (マスター! 吸血鬼は魔核を破壊しなければ倒せないと推測されます!)


 (そうか!? 火炎の威力が足りない……かな!?)


 (炎で外殻を燃やすのは良いかと存じます。しかし、あと一撃が必要かと推測します!)


 (なるほど! では、剣の一撃をあわせ技で食らわすか!)


 (良いアイデアかと思います!)




 「はっはっは! 何を考えてるのか知らんが、この俺は男爵様により無敵の身体を与えられたのだ! 無駄なんだよ! 下等種族どもがぁああっ!!」


 ラバーがその手から長い爪を伸ばした。


 その場にあった岩をなんなく切断してみせる。


 「どうだ!? 鋼鉄よりも硬いこの魔爪の威力! ガードしても無駄だぞ!」




 その直後、瞬時に飛びかかってきたラバー。


 オレはその動きを超スロー再生のように見ながら、剣を前に突き出すように構えた。


 そして、周囲の超ナノテクマシンに最大出力の超高エネルギーをアダマンタイトの剣に集中させた。


 超エネルギーを一点に集中させれば、ダイヤモンドでも砕ける!




 周囲の熱が豪炎と化し、渦を巻いて、盗賊ラバーの心臓部へ集中していく。


 そこを思い切り剣で貫いた。


 「業火剣乱!!」



 ラバーの胸元には風穴が空き、その周囲から炎が燃え広がる。


 「ぐぅ……、ぐはあぁああーーーあああはぁああーーーあん!!」




 やはりなんだか喜びにも似た断末魔をあげ、盗賊ラバーは散っていった。


 やった……。倒した。


 まわりを見ると、雑魚の吸血鬼どもはヘルシングさんが全部倒してくれていた。


 やはり、頼りになるな、ヘルシングさん。




 「あ……。マスター。業火剣乱とおっしゃいましたが、本来は豪華絢爛と書くのが正解でございます。」


 「いや……。そこは技の名前だからなんとなくカッコいいほうがいいかと……。」


 「ああ! それは差し出がましいことを言って申し訳ございません。業火剣乱はかっこいいということですね?」


 「い……、いや、そんな念を押されたらなんだかな……。」




 「ジン殿! 上に続く階段があるぞ。」


 「ええ! 行きましょう! 青ひげ男爵はこの上でしょう!」


 「マスター! それに骸骨戦士を操っている魔術師もいましょう! お気をつけて!」


 「そうだな! 行くぞ!」


 「イエス! マスター!」




 こうして、オレたちは『人ごろし城』の上階を目指すのであったー。




~続く~



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