第171話 吸血鬼殲滅戦・波『チチェン防衛戦』


 吸血コウモリの大群が空を埋め尽くすように覆っていた。



 「ギャァギャァ……!」


 うるさく鳴いている。


 あれ? 吸血コウモリって鳴くんだな。



 そのコウモリの大群が渡り鳥が整列して飛ぶかのように、一糸乱れぬ隊列でこちらに向かってきていた。


 やはり、『リーダー・ヴァンプバット』の存在が、隊を指揮しているのだろう。


 ひと塊の群れの中に、赤く輝く吸血コウモリが見える。


 アイのマーカーをつけられた『リーダー・ヴァンプバット』というわけだ。




 「空中の敵か……。行くしかないなっ!」


 オレは周囲の超ナノテクマシンの一部に命令をして、足場を作った。


 それを階段状にして、ポンポンっと登っていく。


 名付けて『空中散歩』だっ!




 「よし! あの赤く輝くコウモリだな!」


 オレはそう言って、剣を抜く。


 アダマンタイト製の剣だ。


 ここに電磁気力を集中させていく。




 「ソニック・ブレード!」


 アダマンタイト・ソードを極限にまで高めた電磁気を込め、一閃する。


 大気がそのエネルギーで真空となり、その刃状を超電磁波が一瞬で走った。



 『リーダー・ヴァンプバット』の1匹が縦に切り裂かれた。


 ちょうど、心臓部分をスッパリと斬ったのだ。


 「ぎ……ぎぎ……。」



 落下していく吸血コウモリ。




 ドサ……



 地面に落ちた吸血コウモリはシュウシュウと煙をあげながら、消失していく。


 (マスター! お見事です! ただ切断しただけでは例の『魔力』によって、その生命力自体は絶てないところを、電磁気力で物理的に『魔核』とやらを破壊することで、生命そのものを絶ち切られるとは……。そのお考え、さすがでございます!)


 (あ……、いや、とくにそんな深くは考えてなかったんだけどね……。)



 オレは格闘ゲームのキャラの必殺技を真似ただけなんだけどね。




 「おお!? さすがはジン殿だな! では、オレも!」



 ヘルシングさんがそう言って、背中の大剣を抜いた。


 しかし、空中高くいる吸血コウモリたちにどうやって攻撃するんだろう?


 そう思って少し見ていたら、ヘルシングさんが何か呪文を唱えだした。



 『De time is nebber dreary. If de darkey nebber groans; De ladies nebber weary. Wid de rattle ob de bones; Den come again Susanna. By de gaslight ob de moon; We'll tum de old Piano. When de banjo's out ob tune!Ring,ring de banjo! I like dat good old song,Come again my true lub,Oh! whar you been so long.』


 「身体強化魔法『Ring de Banjo(バンジョーをかき鳴らせ)』だ!」




 するとヘルシングさんはそのままジャンプをした。


 それがとてつもないジャンプ力で、あっという間に上空の吸血コウモリの群れの高さに飛んできたかと思うと、その剣を大きく回転させ薙ぎ払った。



 「ぎゃっ!」


 「ぐぎ!」


 「ぐぇっ!」


 吸血コウモリたちがバタバタと切られていく。




 「ほお! あの赤く輝いて見えるのがアイ殿がマーカーをつけたという『リーダー・ヴァンプバット』か!?」


 ヘルシングさんにもわかるようにアイが化学反応で目立つようにしていたのだ。



 「聖(セント)・ルシアァーーッ!!」


 クロス十字に一瞬で斬りつけ、その衝撃波が周囲に飛散する。




 狙いすましたとおり、『リーダー・ヴァンプバット』が十字に裂け、蒸発した。


 ヘルシングさんの剣技には、吸血鬼に対して聖なる魔力が込められていて、吸血鬼を滅ぼすのだ。


 リーダーがやられた一団の統率が乱れる。




 「ミナ! あれを狙え!」


 ジョナサンさんの指差した方向に赤く輝く吸血コウモリが見えた。



 「ジョナサン! 了解したわ! 弓の型! ホーリートゥリー!」


 ミナがその手に弓を構えた。


 その弓から魔力のこもった矢が放たれる!





 フヒュゥ……



 スパンッ!



 赤く輝く吸血コウモリの胸に矢が命中した。



 「ギニャッ……!」


 吸血コウモリが錐揉みしながら落下していく。




 「うん! 一撃とはさすがはミナだね?」


 「ジョナサン! ありがとう!」



 ちっ……。


 なんだかリア充の感じがぷんぷんして素直に喜べないな。


 まあ、いいや。とにかく敵を倒してくれ。




 「敵指揮官を確認! ただちに迎撃体制に移る!」



 コタンコロは一瞬の判断で、周囲の敵の殲滅に入った。



 コタンコロがその口を開き、エネルギーを一点に集中させた。



 「超・電磁砲ぉーーーーっ!!!」



 ―チュィンッ!!



 次の瞬間には、周囲の吸血コウモリたちの一個師団が消滅していた……。




 「イシカ! ロケット・パァーーーッンチ!」


 イシカがその腕を『リーダー・ヴァンプバット』めがけて超高速で撃ち出した。


 吸血コウモリはそれを撃ち落とそうと、襲いかかるが空中で腕は螺旋状に回転し、それらを避けながら『リーダー・ヴァンプバット』の心臓を貫いたのだ。


 「ギギ……。」



 「ホノリ! 発射なのだ!」


 「ホノリ! 行ってらっしゃい!」


 アイの超ナノテクマシンの見えないシャドウアームで、ホノリの身体を空に向かって投げつけた。



 「烈風旋回脚っ!」


 ホノリは一直線に吸血コウモリの群れに突っ込んでいき、回転しながらその足蹴りで周囲のコウモリたちをなぎ倒していく。


 そして、『リーダー・ヴァンプバット』をさらに追撃する。




 「真芯・貫殺拳!」



 ホノリの拳が赤く輝くコウモリの胸を貫く。


 「グギャッ……。」



 みんな、うまく指揮官を狙って吸血コウモリの群れを抑えているな。


 オレも負けてはいられないな。




 ふと、眼下を見ると、王冠をかぶったバジリスクの将軍、クラウン・バジリスクさんが指揮を取り、『ククルカンの蜥蜴』というリザードマンの軍で骸骨戦士たちの大群を迎え討とうとしているのが見えた。


 「かかれぇーーーっ! 鬼が出るか、ククルカンが出るか! 目にもの見せてくれよう!」



 リザードマンの軍勢と骸骨戦士たちの軍勢がぶつかった。


 剣と盾と鎧の魔物の軍隊同士の戦いだ。


 なんだか、ものすごい光景になっている。




 骸骨戦士たちの上級戦士である骸骨騎士がこちらは統率しているようだ。


 骸骨の馬に乗った騎士の骸骨……。


 骨だけの姿であるが、膂力もあり、その剣の威力もなかなかの強さだ。


 こちらは生身のため、怪我をしたりすると動きが鈍るが、ヤツラは例え一部を砕こうとその勢いが衰えることはない。




 つまり骨を動けなくするまで、徹底して砕かなくてはいけないため、体力も消費が大きい。


 しかも、数は向こうのほうが圧倒的に多いのだ。


 これは不利な戦いだな。


 クラウン・バジリスクさん、頑張ってくれ。




 「アイ! あの骸骨たちはどうやって動いているのだ?」


 「マスター。『魔力』で操っているかと推測されます。」


 「なるほど。ラジコンとかドローンのようなものだな?」


 「イエス! マスター。そのとおりであります。」


 「ならさ? どこかにそれを操縦している操縦手がいるんじゃあないか!?」


 「マスター! さすがでございます! その確率は94%はありましょう!」




 どこかに潜んでいる死体操縦士……、ネクロマンサーをまずは見つけ出して叩くのが先決だな。


 オレはアイに戦場全体にスキャンをかけるように指示を出したのだったー。




~続く~


©「Ring de Banjo」(バンジョーをかき鳴らせ)(曲/フォスター 詞/フォスター)




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