黙示録戦争後に残された世界でたった一人冷凍睡眠から蘇ったオレの日常

ありふれた日常 第4話『重要会議?』


 黙示録の最終戦争は実際に起きてしまった……そして、人類は一度滅亡した。


 だが、もう一度世界は創生され、新しい魔法文明が栄えた世界となっていた。


 ところが、そんな中、冷凍睡眠されていたジンはなんと蘇生されてしまったのだ。



 ジンが目覚めたのは自分の自宅が魔改造された超人工頭脳のアイが管理する『霧越楼閣』。


 この日はダイニングルームで『霧越楼閣』のメンバー全員が集まり、ある重要会議が行われていたのだ。





 「さて……。みなさま、静粛に! 議長はこのワタクシ、アイが取り仕切らせていただきますわ。」



 カンッカンッ……!



 アイがまるで裁判官のように、あのなんというかわからないトンカチのようなものでテーブルを叩いた。


 つか、その木槌、どこから出したんだよ!


 (マスター。この木槌の正式名称は『ガベル』でございます。)


 (お……おぅ……。)






 「では、改めまして……。今回の議題は……! 何ラーメンが最高か? ということです!(キリッ)」



 そうなんだよ。ラーメンは何がいいかって言い出したら、みんな熱くなってきちゃったんだよねぇ……。




 「はいはーい! 僕はさっき言った通り、塩ラーメンが一番だと思うなぁ! あの透き通ったスープが僕の全細胞のひとつひとつにまで染み渡る……。くぅーーっ!」


 ヒルコは塩ラーメン派らしい。




 「イシカは醤油ラーメンがいいであるゾ!」


 「ホノリは味噌ラーメンがいいなのだっ!」



 ふむふむ。イシカが醤油ラーメンで、ホノリは味噌ラーメンか。




 「我は魚ダシの澄んだラーメンが美しいと思うのである。」


 コタンコロが続いて発言する。




 「わたしは……、あの、その、鶏白湯(とりぱいたん)のラーメンがまた食べたいですっ!」


 ズッキーニャが珍しく、勢い込んで声を上げた。


 よっぽど、この前食べた鶏白湯(とりぱいたん)ラーメンが美味しかったのかな。



 「我も鶏白湯(とりぱいたん)ラーメンを所望しようぞ。ズッキーニャを我は完全に支持するぞ!?」


 ズッキーニャの背後に控えていたサタン・レイスが追従する。



 いや……。サタン・レイスって霊体だよね?


 ラーメン食えないんじゃね?




 「拙者はやはりとんこつラーメンが好きでやすな。」


 ジロキチがここでとんこつ派を自白する。



 「ああ。それは僕も好きだなぁ。」


 「ええ。私も好きです。」


 アーリくん、オリンもとんこつラーメン派か。



 「ふふんっ! 僕はとんこつはとんこつでも背脂ギットギットが好物だよ!」


 ジュニアくんがそこで目をキラッキラに輝かせて叫んだ。




 なるほどな。月氏種族はとんこつラーメン派のようだな。



 「ああ。ジュニア様。油多めは身体によくありませんよ。私は野菜だしラーメンが美容に良さそうで好きですわ。」


 ああ、モルジアナ。やはり女性は美容に気を使うようだな。


 まあ、見た目は可愛いハムスターでジュニアくんもモルジアナも、オレには区別つかないけどな。




 「シャアアアアアアーーッ!! 今日の昼飯、ラーメンだぜぇええーーっ!!」


 突然、目の前の空間に空いた穴から勢いよく飛び出てきたのはデモ子だった。



 バゴンッ!



 ものすごい音とともにデモ子が地面にめり込んだ。




 あ……。アイが超ナノテクマシンの巨人の見えざる手のゲンコツで上からデモ子を叩いたらしい。



 「痛ってぇええ!! 何するの!? ……って、アイ様? 消える! 消える! また、その魂魄消滅プログラム! 来てるって! 流れて来てるって!」



 どうやら、アイがデモ子にきつく叱ってるようだ。


 ちょっとかわいそうだな。




 「まあまあ。アイもそのくらいで勘弁してあげなよ。それで、デモ子は何ラーメン派なんだい?」


 オレはデモ子にも聞いてあげる。



 「ちっ……。仕方ないですわね。マスターのお優しさに感謝しなさい! で、何ラーメンがいいの!?」


 アイもデモ子を許したようだ。




 「おお! ジン様!! ありがたきかな! そうですねぇ。ラーメンはつけ麺一択じゃないですかね?」



 ほほぉ……。デモ子はつけ麺派なのか。




 「私は油そばがよろしいかと。」


 「ふむ。あれは良いな。」


 「ワタシはチャーシュー麺が好きですね。」


 我が家のバイオロイドたち、ドクドク・ドクターも、クックドゥー・ドゥルドゥーもマル・コポ郎も意見を言う。




 「ところで、アイは何ラーメンが好きなの?」


 「ワタクシは徳島のご当地ラーメン、徳島ラーメンが好みですわ。」


 「徳島ラーメンか! 茶色いスープのものだったよね?」


 「イエス! マスター! 濃厚な豚骨スープに醤油で濃いめに味付けし、麺は柔らかめの中細麺。全体的に、甘辛い味付けのラーメンで、チャーシューの代わりに豚バラ肉を使うのが多いのも徳島ラーメンの特徴で、ご飯によく合うんですよ。また、茶色いスープの徳島ラーメンでは、ラーメンに生卵を混ぜて食すのが絶妙なんです!」


 「お……おぅ……。」




 なるほど。徳島ラーメンか。食べたことはあるけど、たしかに美味しいよね。


 でも、それってラーメンの種類に入るんだっけ?


 それを言ったら、博多ラーメンとか佐野ラーメンとか喜多方(きたかた)ラーメンなどなど、たくさんあるよね……。




 「では、最後にマスターのお好みのラーメンをお伺い致します。」


 「うー……ん、そうだな。オレはどのラーメンも好きだけど……。」


 「好きだけど? 特には何ラーメンがお好きでしょうか?」


 「そうだなぁ。」




 ゴクリ……。


 みながオレの言葉を待っている。


 ああ、思念通信が流れ込んでくるぅ……。



 とんこつとんこつ……。


 みそみそ……。


 油そばでして!?


 しおしおしおしおお……。




 何選んでも支障が出るなぁ。


 あ! これだ!




 「オレが好きなのは……。」



 「「はい!」」




 「カップラーメンだっ!!」





 「「え……えええええええーーーーーっ!?」」



 この日はみんなそれぞれの好みのカップラーメンをありがたく頂戴しましたとさ……。




~続く~



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