第66話 ルネサンス黎明期 『再び円柱都市イラムへ!』
「あ……! アーリくん! ごめんっ!!」
アーリくんが可愛いネズミっ子と一緒のベッドにいたのだ……!
「ジ……ジン様! いや、これは!」
アーリくんもあわてて服を着る。
オレはすぐに扉を閉めて、外に出た。
……まぁ。よく考えてみたら、アーリくんも立派なオトナなんだし、別にいいんだけどね。
つか、アーリくん、彼女がいたのか……。
なんだか、うらやましいというか……。
(マスター! マスターにはワタクシがおります! ご安心ください!)
(お……おぅ……。アイ。ありがとね。)
たしかに、アイのモデルになったヴァーチャルアイドル『猫ミミク様』はオレの嫁とかなんとか言ってたけどね……。
実在してみると、恐れ多いというか、超人工頭脳のA・Iなんだよねぇ……。
(え……えーと……。アイの本体って今どこにいるの?)
(はい! ああ。ボディ本体のことですね? ワタクシは今、地図作成班を連れて、砂漠を越え、帝国領に入ったところでございます。)
(そうか。『帝国』か……。気をつけて、引き続き頼んだぞ!)
(イエス! マスター!)
アイのほうはこれからってところだな。
そうしているうちに、アーリくんが表に出てきてひざまづいた。
一緒に若い女性のネズミ、月氏もオレの前にひざまづいていた。
「いやいや。そんなかしこまらないでよ。立ってくれる?」
「は……はい。」
そう言って二人は、いや二匹は立ち上がった。
「ジン様。この娘は、オリンと言います。ぼ……僕たち、付き合ってるんでチュ!」
「お初にお目にかかります……。女月氏小僧のオリンです。アーリ様とは懇意にさせていただいております。
ジン様のことはアーリ様からかねがね聞かせていただいておりました。以後、お見知りおきをよろしくお願いします!」
うん……。しっかりした娘さんだぁねぇ。
「あれ? 女月氏小僧ってことは……。君もジロキチと同じ忍者なのかな?」
「はい! そのとおりでございます。ジロキチ様は月氏の忍者の頭領でございます。」
「ほぇー。そうなのか。ま、よろしくね。オリン。」
「はい!」
「じゃあさ、ちょっと、オリンもアーリくんもうちに来てくれる?」
「え? うちっていうと……?」
「ああ。オレの家、『霧越楼閣』だよ。」
「は……はい! あのすごい邸宅ですか!? ジュニアくん……いや、ジュニア様から聞きましたよ!」
「うん。これからのこと話し合っておきたいからね。」
「「かしこまりました!!」」
アーリくんとオリンが二人声を大にして口を揃えて返事をした。
オレたちは、上空にある『霧越楼閣』に続く『異世界エレベーター』に乗った。
オレとイシカ、ホノリ、ミニ・アイ、アーリくんにオリンが定位置につくと、超ナノテクマシンが一気にオレたちを上空へ運んだ。
すぃーーっと、あっという間にオレの自宅『霧越楼閣』に着いた。
玄関の扉を開けると、そこは大パノラマの幻想的な風景の広がる『幻想の広場』だった。
果てしなく広く感じるが、広いことは広いのだけど、360度すべてがスクリーンになっていて、それが立体映像でもあるため、オープンワールドのように感じられる造りとなっているのだ。
アーリくんとオリンがその丸い目をさらに丸くしている。
「おかえりなさいませ。ジン様。」
「おかえりなさいませ。」
出迎えはやっぱり、ルン婆とアカナ・メイドだ。
彼女たちはいつもこの広い邸宅を掃除してクリーンに保ってくれているのだ。
さて、集まったメンバーをオレは振り返ってみる。
オレとイシカ、ホノリ、ミニ・アイに加えて、アーリくんとその彼女オリン。
「では。砂竜捕獲は成功した! これで、『円柱都市イラム』への定期便として砂竜を使った『砂竜鉄道』を開通することにする。」
「おお! あの砂竜を! さすがはジン様。」
「砂竜ガレオンの背中に、アイの作る貨車をつけることによって大量の荷物や人を運べるはずだ。」
「マスター。空間圧縮工法で作る列車の部屋で、一度に乗れる人数は『サービス定員』で推定1000人。それ以上乗っては危険だという人数を示す『保安定員』ではその倍の2000人程度でございます。さらに、荷物を乗せる貨車をつけるのであれば、コンテナいっぱいで東京ドーム5個分の荷物を圧縮空間内に積載可能でございます。」
「お……おぅ……。つまり、いっぱいってことだな?」
「イエス! マスター! いっぱいでございます!」
とにかく大量輸送と大量移動が可能となるということだな。
「砂竜の速度はどれくらいだった?」
「はい。『無名都市』から、この『楼蘭』まで半ドラゴンボイス強の距離(約1000km)を半刻程度の時間(つまり約30分)で移動してきました。
重量いっぱいで運搬するとしてその倍と見ても……。
『楼蘭』から『円柱都市イラム』までは、直線距離で半刻(約1時間)で『円柱都市イラム』に着くことができます。」
「おお! まさに高速鉄道だね!」
「あとは『宅配』の配達員だけど……。月氏の中から集めても、まだ足りないよねぇ……。」
「アンドロイドもそんなに急に増やせないですね。」
「イシカが頑張るゾ!」
「ホノリがやるのだ!」
……う……うーむ。気持ちはありがたいけどね。イシカとホノリだけでも足りないよね。
「イシカもホノリも気持ちはありがとうね。でも、『円柱都市イラム』は人口数十万もいるからね……。」
「誰か雇いますか? 何人くらいいればよいのでしょう?」
アーリくんが聞いてきた。
「人口の100分の1くらいかな。つまり……400名から500名くらいか。」
「そ……そんなにですか!? うーむ。」
「マスター! 以前『円柱都市イラム』へ向かう際に出会ったゴブリンなる生き物を捕獲するのはいかがでしょうか?
推定数万匹はサファラ砂漠の北に生息しているかと……。」
ゴブリン……? ああ!! あのゴ……が大きくなったようなヤツか!
うう……それは気持ち悪い……。
「そ……それはやめておこう……。」
しかし、数万匹もアレがサファラ砂漠北の『死の平野』にいるのか……。ぶるぶる……。
「ジン様……。あと数ヶ月もすれば、新しい月氏が生まれて、300匹くらいは増えます。今しばらくお待ちくだされば、人員不足は解決できるかと思います!」
な……なんだって!? そんなに増えていくのか……。まさに、ネズミ算式!!
「そ……それはいいかもしれないね。最初は規模を小さくやっておいて、だんだん増やしていくのはいいかもしれない。」
「アーリさん! オリンさん! どんどん子を増やすのです!」
アイがそう言ってアーリくんとオリンに迫る。
「は……はぃ……。」
「ぽっ……。」
二匹のネズミは顔を赤らめて口をふくらませていた。
「じゃあ、最初は、『円柱都市イラム』で人員募集するか!」
「そうでございますね!」
「お待ち下さい! そんなにヒトを雇うお金は、今のこの『楼蘭』には……。くっ……。ございません……。」
オリンがそうつらそうに告白する。
オレはミニ・アイと目を合わせ、微笑み、アーリくんとオリンに向かってこう言った。
「うん。それは大丈夫! この『霧越楼閣』周辺の砂漠一帯の砂から、超ナノテクマシンを使って、砂金を掘り出しておいたんだ。」
「ええ。マスター。ざっと集めたところで金貨5億枚分になりました。すでに金貨として5億枚、3Dプリンターで鋳造が完了しております。」
「おう。よくやった!」
「金貨……5億枚……!?」
「ええぇえええええーーーーっ!!」
アーリくんとオリンが驚きすぎて、目をまん丸くしていた。
……あ。目が丸いのはもとからだった。
じゃ、いざ『円柱都市イラム』へ!!
~続く~
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