第8話 遭遇 『桜蘭の町』


 移動手段だったラクダバ(ちなみに、オレはラクダウマと呼んだけど、あながち遠からずでラクダバというらしいラクダと馬の中間のような動物)を失ったアーリ・ババとともに、彼の住む町へと道を急ぐ。


 もちろん、コタンコロの上に乗って悠々と空を飛びながらだ。


 辺り一帯はやはり砂漠で、見渡す限り、砂、砂、砂だった。




 「ところで、ジン様はどこから来られたのですか?」


 アーリ・ババがオレに聞いてきた。


 「いや、それが、遠い遠い国から・・・かな。この辺りで道に迷ってたんだよ。こちらこそ助かったよ。」


 「なるほど、そうなんですね。このあたりの砂漠は、サファラ砂漠といって、広さは、約2億トキオドムもあるんですよ。

知らない者なら迷うのも道理ですね。それに、普通の旅人は砂漠を通る道は選ばないでしょうから・・・。」




 「トキオドム? 東京ドーム?」


 「ああ、広さの単位ですけど、、、やはり国が違うと単位も違うのかな。『七雄国』では統一されてたかと思いますので、ジン様はよほど遠くから来られたのでしょう。

それに、言われてみると、昔から使っている単位なのですが、起源は知りませんねぇ。1トキオドムはだいたい、約12エイカ、つまり2万6000タタミくらいです。」


 「へー、語源はわからないのか・・・。トキオドム、、、つか、タタミ!? それに2万6000分って、枚数? ・・・それ、もうまさに東京ドームじゃん・・・。」


 「エイカは土地などの広さ、タタミはだいたい部屋の広さの単位ですね。僕の部屋はだいたい4.5タタミくらいですね。」


 「お・・・おぅ・・・それはなんだかイメージわかる気がするなぁ。」"


 「あ、あと、『七雄国』って言ってたね。それは?」


 「はい、この砂漠の在る地域は、国が存在しませんが・・・『法・皇国』『南北・帝国』『ドワーフ国』『エルフ国』『海王国』『龍国』『巨人国』の勢力を持っている7つの国を言います。

まあ、他にも、『馬国』や『ヴァン国』『不死国』『小人国』『タカマガハラ国』『プレスター・ジョンの国』などがありますね・・・。

 それに魔族の住む魔界もありますから、『七雄国』の常識が世界の常識ではないってことですねぇ。」


 「ほお、いろんな国があるんだね。つか、魔界もあるのか・・・ん?『タカマガハラ国』って・・・高いに天の原って書くのかな?」


 「ああ、『タカマガハラ国』は、はるか北の「『巨人国・ブロブディンナグ国』のさらに東方にあると言われている国ですね。

僕も詳しくは知らないですけど、なんだか独自の文字、『和字(ワジ)』と言われる文字を使っている種族の国のようですね・・・。」





 「そっかぁ。一度行ってみたいな、その国・・・。」


 タカマガハラが高天原なら、日本神話に出てくる伝説の神の住まう場所のことだよな・・・。ワジっていうのも和の文字・・・のようだし。

その『タカマガハラ国』には、日本人の生き残りがいるのかもしれない・・・。


 オレは少しドキドキしていた・・・。なんだか楽しみだな。




 「ところで、アーリくん。さっき、『風』っ言って風魔法っていうのかな? それを使ってたみたいだけど、魔法について聞いてもいい?」


 「ああ、レベル2の風魔法ですね。僕はそんなに魔法は得意ではないので、他の魔法は生活魔法くらいしか使えないですけど。」


 「オレのいた国では魔法ってなかったんだよ・・・。詳しく教えてもらってもいい?」


 「ええ、それはもちろん構いませんが。・・・では、こほん。

魔法っていうのはもともとは魔力を強く持ってる魔族やスーパーヒーロー(超英雄)族が古代文明で使われていたものを蘇らせたものですね。

 失われた古代言語で作られたもので、『歌』って呼ばれていたようですね。だから、正確に意味はわかりません。今の歌とはぜんぜん違いますね。」





 「えぇ・・・古代に使われてたの? 魔法・・・つか歌か・・・。そういえば、風・・・なんかその歌詞、聞いたことあるような気がするな。」


 「ああ、やはり、魔法は知っておられたんですね。からかわないでくださいよ・・・。低レベルの生活魔法はどんなに魔力が少ない生物でも使えますし・・・。

魔法を知らないなんて、ありえませんよ。」


 「お・・・おぉ・・・もちろんだよ・・・(やっべ、知らないんですけど~っ!!) と,ところで、魔族やスーパーヒーロー(超英雄)族ってどんな種族なの?」


 魔族って言ったら、あれだよな。悪魔とかの・・・。たしか、アイも言っていたな。黙示録の神と悪魔の戦争は本当に行われたって。




 (はい、マスターのお考えのとおりです。神も悪魔も実在の存在です。)


 (・・・って、うわ!アイって僕の心が読めるの?)


 (あ、すみません。マスターが望まないなら思念通信オフにできますけど・・・。)


 (いや、まぁ・・・。別にいいんだけど・・・。)


 「ありがとうございます!!」


 アイが嬉しそうに返事した・・・思念通信じゃなくて・・・。


 アーリくんが突然お礼を言ったアイを不思議そうな顔をして見ていた。




 「あ、アーリくん、ごめん。スーパーヒーロー族って?」


 「あ、はい。超英雄族とも言いますけど、古の種族ですね。この世界の始まりの際、世界を支配していた種族です。古くは魔神族と言われていたと聞いています。魔族はその派生の種族ですね。あ、人間族も彼ら、スーパーヒーロー族が創造した種族だって言われていますね。スーパーヒーロー族は、皇国や法国の支配階級の種族です。」


 「ほーお。じゃあ、人間のいる国ってさっき、オレに聞いてきた法国と帝国ってことだったけど・・・。法国は超英雄が治めている国ってことか? 

つか、さっきの『七雄国』のひとつの『法・皇国』って1つの国ではないの?」


 「正確にはアーサヘイム皇国の属国がカーズ法国で、まとめて『法・皇国』って呼ばれています。」





 「じゃあ、『南北・帝国』っていうのも?」


 「ええ、もともと1つの国でシュラロード帝国と言いますが、今現在は国はひとつなんですが、統治体制は南北朝に分かれています。

『北部帝国』は皇帝が治めていて、『南部幕府』は将軍が統治していますね。」


 「そうかー。この世界全体の地図とか欲しいな・・・。」


 「地図ですか・・・。この辺りの地図なら、僕の村『楼蘭』にありますが・・・。世界全土の地図となると・・・それこそ、法国か、帝国にしかないかと思います。

あ!もしかしたら、黄金都市にはあるかもしれないです。黄金都市は交易で栄えている都市なので、あるかもしれないですね。」




 「マスター、ワタクシの人工衛星を飛ばして、世界の様子を衛星写真で撮りましょうか?」


 「そうだな・・・地形なんかはそれでわかるけどね。詳しい様子まではわからないね。やっぱり地図や、それぞれの国などの情報が欲しいな。」


 「そうですか。了解しました。調査部隊を選定し、世界に散らせましょう。」


 「ああ、それができるなら助かるな。アイ、頼りにしてるよ。」


 「まあ!マスター!!」


 つか、人工衛星なんて飛ばせるのか・・・けっこう何でもありだな・・・科学・・・そんな簡単に使えるのか・・・。



 「では、さっそく『霧越楼閣』で、調査機械を作成し、各地に派遣しましょう。」


 「おお!頼んだ!」


 「ヒルコもなにか手伝いたい・・・。」


 「ん~、ヒルコはオレのそばにいたらいいよ。」


 「え・・・? う・・・嬉しい! 私はずっとずっとジン様のおそばにいます!」


 「ああーーヒルコだけずるい!イシカもおそばにいるであるぞー。」


 「うんうんーー、ホノリもおそばにいるのだー。」


 「おほん! もちろん我もそばにいますぞ? ご主人様!」


 コタンコロまでそう言ってきた。つか、ちゃんと前見て飛んで! わき見運転、事故の元って言うんだよー。


 ん? 自力で飛んでいるのだから、運転ではないのか。






 「あの、失礼ながら、『七雄国』をご存知でないって、ジン様はどれほど遠い国から来られたのですか?」


 「いや、オレは、、、いや、オレたちは、ここから南に行ったところの小さい家にずっと引きこもってたんだよ。それはそれは長い間ね。だから、国ではないかな。」


 「あー、じゃぁ、砂漠の民である我々一族と似たようなものかもしれませんね。僕の町も砂漠の民って言われてまして。それこそ、どこかの国に属したりしているわけではないんです。」


 「あ、そうなんだ? じゃあ、似てるかもね。」




 そうこう話をしている間に、何やら前方に、砂漠の真ん中にオアシスのような場所が見えてきた。湖があって、緑もいっぱい生い茂っている。


 そこに、何やら石造りの家が十数軒、立ち並んでいるのが空から見えた。


 「着きました! あれが僕の町、『楼蘭』です。あの湖はロプノールと呼ばれています。」


 オレたちは、ようやく、アーリ・ババの町に着いたのだった・・・。



~続く~





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