第6話 〜ミリー視点〜

王子が転びそうになった可憐な少女を助ける、そんな小説のようなことが起きているところに私は遭遇した。


(どうしてイベントが起きているの⁉︎)


この言葉から分かるように、私、ミリアンナ・は転生者だ。そしてこの世界はある乙女ゲームに酷似している。さらに残念なことに、私はいわゆる悪役令嬢に転生した。

それがわかった時期が早かったのがせめてもの救いだった。


その頃の私は幼児で、話すこともままならなかった。が、何かやらかす前に思い出せたのだ。

私が転生した悪役令嬢の末路は、それはもうひどいものだった。国外追放、爵位剥奪。まだここまではいい。対策のしようがあるし、前世ではただの一般庶民だった。

ここからがひどい、ひどすぎる。死刑、どこかのロリコン貴族の後妻、さらにはエンディングさえも迎えられず、そこらの魔物に殺されるというものだった。

せっかく大好きだった世界に転生したのにそんなことってない!

だから私は頑張って行動した。


お父様とお母様の不仲も、お互いがお互いに気を使った結果だとわかったし、家庭教師の人にビシバシ鍛えてもらった。令嬢らしからぬ悲鳴をあげてたら、どこからか怪談が流れてきたし。私の悲鳴ではない、筈だ。

そして何より頑張ったのがヒロインであるマリアとの出会い。乙女ゲームの描写を思い出すのはとてつもなく疲れた。マリアを見つけるためだったけど。でもそのおかげでマリアと仲良くなれたのだ。


最初は様子を見て、どんな子なのか確かめるだけの予定だった。昔の私はラノベが大好きで、特に悪役令嬢転生系のものが好きだった。いやー、実際なってみると何かしらの力を特別にもらうこともなく、前世のことを思い出すたびに頭痛がした。これに順応してた悪役令嬢さまたちパネェと思ったわ。


小説では、よく授業の内容とか、外国語の習得とか、簡単に身につけたり、そういうシーンはたいていとばされていていつのまにか終わってたりするでしょ?実際はそんなこともなく、家庭教師と一対一だから、もう頭パンクしそうだったわ。


とにかく、そういうジャンルによくあった、ヒロインも転生者、なのかどうか見に行ったの。


あの乙女ゲームは主人公にツンデレ要素+愛想がいい、という相反してそうなもので。中盤になるにつれて素が出てきてツンデレが出てくる感じでヒロインの人気が高かった。


実際はツンデレ要素どこいった?ってくらいに素直だし、恋人がいて、結婚を前提に付き合ってるし……。


私は多分、その時にこの世界は乙女ゲームと同じになるわけじゃないんだって受け入れたんだと思う。

ちなみに愛想がいいのと客を捌くのが上手いことがわかった。

若い男がマリアに「君かわいいね!俺と今夜一緒に食事でも……」と言えば、「あはは、ご冗談を」と返す。ちなみにご冗談を、のところはすごく冷え冷えとしていた。


話しているうちに、打算的にじゃなくて、心からマリアといるのが楽しくなってた。ルイスさんもマリアも、結婚後のためにコツコツとお金を貯めていて。健気すぎて泣いたわ。顔面崩壊とまではいかなかったけど。ご令嬢らしく品良く泣いたわ。

だからこそ、王子たちに邪魔させるわけにはいかない!と思って、いい婚約者として接していた。

マリアの容姿は王子が一目惚れするほどドストライクらしいし。


でもイベント?は起きていた。


(ちょっと!マリアの顔よく見なさい!思いっきり愛想笑いでしょう!ああ、そんなに近づくな!私の今世の推しカプの邪魔するな!)


表情には出さないようにしていたが、となりにいた義弟にはバレていた。今にも襲いかかりそうな怖い顔してたよ、と言われた。義母上にバレたらはしたないって怒られるね、という言葉も。


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