第3話

「なっ!学園へ転入する⁈」


この前会った出来事と一緒にそのことを告げると、案の定、店の常連で親友のミリーはその綺麗な顔いっぱいに驚きを表していた。


「どうして?マリアは恋人とラブラブで結婚するまで一直線コースだったのに……。やっぱり乙女ゲームの強制力には敵わないってこと………?」


小声でボソボソと呟く声は聞き取れなかったが、彼女が動揺しているのは間違いなかった。

学園へ入学する前に婚約をすると告げるとミリーはその手があったか!という顔をしながらパチンと手を鳴らした。


「いい考えだわ!さすがルイスさん、頭が切れるわね!ねぇマリア、よかったら私にも手伝わせてくれないかしら。」

「は?手伝うって……?」

「いろいろとツテがあるのよ。そうね、そうと決まればもしあの夢見がち王子が暴走してもいいように緻密に考えてなければ………」


さいごのほうはよく聞き取れなかったけど、夢見がち王子とか暴走とかなんとか言ってなかった?そういうに気持ちを込めてミリーを見つめると、にっこりと笑顔を向けられた。

………うん、何も言わないでおこう。


パンが買えなくなるのは残念だけど、そういう事情なら仕方ないわね、とミリーは納得し、家へ帰っていったのだ。



実は私には学園で一つだけ確かめたいことがある。ミリーはきっと貴族だ。だとしたらお忍びである可能性が高い。

だからこのことは誰にも言わないでいるけれど、本人の言葉の端々。そして所作にはどことなく気品が漂っている。きっと町のみんなも気づいていることだろう。


学園は貴族は強制入学と聞いた。ならきっとそこにはミリーがいる。

もし、ミリーが私と身分が全くかけ離れた存在だったら、私は親友だと胸を張って言えるのだろうか。

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