4−3「遊園地の隠し事」

「園内のメインキャラクターに盗作疑惑が出たの。ネットでもずいぶん騒ぎになって、キャラクターも全て変更することになって…それでオープンが遅れに遅れたのよ。」


社用車の後部座席で社員用に配布されていた焼き飯弁当をほうばる主任。

僕は助手席でアサリご飯を食べながらペットボトルの熱い緑茶に口をつける。


「調査の結論から言えば、盗作というより偶然の一致だったのだけれど。美大生がひと月前に課題で作ったキャラクターをSNSにあげたら、たまたまその翌日がプレオープンの日でね、画像があっという間に拡散して今回の騒ぎにつながったみたい。結構、有名な話なんだけど…小菅くん知ってる?」


主任の言葉に僕は慌ててスマホでニュースを探ろうとする。

だが、スマホを取り出したところで主任が手で制した。


「知らないのならいいわ。これ以上、余計な情報も与えたくないし。」


主任は食べ終えた焼き飯弁当の空を袋に入れると、同じくデザートとして配布されていたカップあんみつに手を伸ばす。


「まあ、それが原因でキャラクターを担当するデザイナーが亡くなったの。頻発するネットの誹謗中傷についで住所も顔も特定されて死ぬ直前まで自分の無実を訴えていたそうよ…まあ、あとは知っての通り。これだけの大規模な事件が起こったってワケ。」


…それは、僕でもわかる。

社員寮のテレビで全国ニュースをしていたからだ。


再度オープンした遊園地での大規模な過失事故。


ジェットコースターのレールのネジが弾け飛び、10人が死亡。

メリーゴーランドの屋根部分のパイプが外れ、9人が死亡。


「私たちの清掃する観覧車でもすでに5人も死んでいるわ。その仲間に入らないよう、沈黙を続けて仕事に励みましょう。」


主任はそういうと、あんみつの残った最後の白玉の一粒を口に入れた…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る