レポート・4「某遊園地、観覧車内清掃」

4−1「違和感のある風景」

その園内の雰囲気に僕はどこか違和感を覚えた。


ビニールシートで入り口で覆ったジェットコースター。

同じくビニールシートで周りを囲んだメリーゴーランド。


これから向かう観覧車のゴンドラには飛び散る血の跡がついており…


「中で数人ほど喉を裂かれて死んだって話だからね。撤去班があらかた片付けたとはいえ、まだまだ綺麗にしなきゃいけないだろうし…」


防護服姿の主任が無線越しにため息をつく。


園内の各所で指示を出すエージェント。

遺体が入っているのか大きな袋を担架で運ぶ救護班の姿。


某都内の遊園地。


ここは今、僕らの会社が事故処理をしている真っ只中にあった。

…そこに全体無線でアナウンスが響く。


『観覧車清掃に当たるグループに注意。車内の個室で清掃する際には決して声を出さないこと。繰り返します、個室で清掃する際には決して声を出さないこと…』


「…だってさ。」


そう言うと、主任は清掃用具を載せたワゴンを押していき今は動かない観覧車のゴンドラの中へと乗り込んでいった…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る