レポート・2「某県パーキングエリア、店内清掃」
2−1「フードコート」
10月の観光シーズン。
パーキングエリアのフードコートには活気があふれていた。
「いらっしゃい、たこ焼きいかがですか?」
「名物のブルーベリーを使ったソフトクリーム入りのクレープはいかがですか?高原の美味しさがぎっしり詰まった甘酸っぱい人気商品ですよ!」
沸き立つ湯気、売り子の声。
防護服を通して感じる美味そうな匂い。
耳にインカムをつけての床掃除。
「3番テーブル席のお客様、黒豚入りチャーシュー麺が上がりました!取りに来てください!」
ドンっとカウンターに置かれたのは、湯気の立つ美味しそうなチャーシュー麺。フードコートに並ぶテーブルを見ると3と書かれた番号札が1枚置かれている。
何もなかったはずのテーブルに突然現れた番号札。
僕は一瞬ためらうも、その番号札を取ろうと手を伸ばし…
「食べちゃダメよ。すぐに撤去班が来るから。」
主任にポンと肩を叩かれ、僕はハッと伸ばしかけた手を止める。
そうして時間を置かずに室内に撤去班が数人入ってきて、机にあった番号札と、ラーメンをおか持ち型の専用のガラスケースに入れて持っていく。
電気が通っておらず開かれたままの自動ドア。
その向こうを撤去班の人がくぐり抜ける。
その時、僕は見た。
どんぶりの中身がみるみる黒い煤のようになり底にたまっていくのを。
長いこと放置されたように埃にまみれて汚れていくのを。
そうして、一緒に持って行かれたプラスチックの番号札がたった一言。
『また、お越しください。』
男とも女ともつかない声で喋るのを僕は確かに耳にした。
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