許されざる罪を犯してしまった
ルリコさんたちの居る宿屋の部屋へゲートを開いて転移すると、二人とも目をパチクリとさせて驚いていました。その後は質問攻めに遭いましたが私は終始ニコニコ笑顔で無言を貫き通したので、何を言っても無駄だと二人とも諦めてくれました。
「最初に消えた時は転移魔法。帰って来た時はゲート魔法を使用したんですよ」
「今更言うんかい!」
「絶対に何も言わないぞって雰囲気でしたが、どういった心境の変化でしょうか?」
「なんとなくです、が、転移系スキルはあげません!」
「なんですと!?」
「ええー!」
突然人が現れるとビックリするじゃないですか? 私が突然現れてビックリさせたいじゃないですか? つまりそういう事です。
「どうしても「ダメ」」
「なんでもするから「いいよ」」
「ちょっと!!」
「やった!」
セイラさんに「なんでもするから」なんて言われちゃあ、鋼の意思を持ったこのロトルルちゃんもお手上げだね。げへへ。
「あ、その、やっぱりやめておきます……」
「なんじぇ!?」
「下心丸出しの下品な笑みを浮かべていたからよ……」
そ、そんな……下心丸出しの下品な笑みなど、このパーフェクトアイドルロトルルちゃんがするわけが無いのだ!
「そう言えば、ロトルルちゃん、なんか太った? というか年相応になった感じというか……?」
「そう言えば確かに、健康的になったというか……?」
「ふふん。なんでもしてくれるのなら教えてあげます!」
「じゃあいいや」
「私も、いいかな……あはは」
ロトルルよ、次からは心の中だけで欲望は押し留めておくのじゃ! と前世のオタク君からありがたいお言葉を頂戴した気がしました。
というか前世のオタク君が欲望を垂れ流しているのでは?
前世も今世も同一人物じゃ! ではな! と慌てて消え去る前世のオタク君の姿が脳内で再生されました。
前世で見たアニメの話で、過去の自分をぶっ飛ばしに未来から来た赤い弓使いの人の気持ちが良く分かりました。
「まあ、いいです。ルリコさんにはちょっとお手伝いして欲しいんですけど、よろしいですね?」
「その有無を言わせない雰囲気がちょっと怖いけど、何かしら?」
「大したことではありません。天井のシミを数えていればすぐに終わりますので」
「……ロトルルちゃんのえっち」
「え? もしかしてルリコさん、私にエッチな事をされると想像しちゃったんですか? セイラさんが目の前に居るのに、流石にそんなこと頼んだりしませんよ?」
「くぅぅ……! ねぇセイラ、この子殴って良いかな? 良いわよね? ねぇ?」
「えっと……あははは」
ドスケベなルリコさんが耳まで真っ赤にしているのでもう少しからかって遊んでみましょう。
「では、セイラさんは後ろを向いててもらえますか?」
「え? うん?」
「そしてルリコさんは先程言った通り天井のシミを数えててください」
「天井のシミを数える理由は?」
「聞かない方が良いですよ?」
「……ねぇ? 本当にエッチな事じゃ無いのよね?」
「後ろを振り向けずに聞き耳だけ立てて興奮しているセイラさんを肴に私たちはしっぽり乳繰り合うなんて、ルリコさんはどんな性癖を拗らせているんですか? ヤバイですね!」
「そんな特殊な性癖なんて持ってないわよ!」
後ろを向いたまま話を聞いていたセイラさんの耳も真っ赤になったので余は満足じゃ。ほっほっほっ。
「冗談はこの辺にして、早速始めましょう」
「ああ、もう! 天井のシミを数えていれば良いのよね! 1つ! 2つ!」
これ以上私に質問しても藪蛇にしかならないと気付いてしまったのか、ルリコさんが素直に天井のシミを数え始めました。もうちょっと遊んでも良かったですが、後の楽しみに取っておきましょう。
セイラさんの方を見てみると、こっちはこっちで壁のシミを数えているようだったので、これで仕事が始められます。
先ずは静音魔法でルリコさんの周りを覆い、次に麻痺魔法でルリコさんの左手を麻痺させ、小指をポーション化し、ついでに栽培用のポーションも貰うために薬指をポーション化して、ストレージからメガポーションを取り出し振りかけて、失った指を再生させました。
掛けた魔法を解除して、未だに天井のシミを数えているルリコさんのお尻を撫でて終わった事を告げました。
「もう終わりましたよ?」
「そう。で、お尻を撫でる必要もあったのかしら?」
「安産型で良いお尻ですね」
「それはどうも。殴られる覚悟は良いかしら?」
「他人にエッチな事をした時は殴られる覚悟でしていますので、気が済むまでどうぞ!」
「じゃあ、遠慮無く。ロトルルちゃんのエッチ!」
頬っぺたを軽くビンタされてしまいました。
美人さんからのビンタプレイ……これはこれで良いものですな。
「あたっ、えへへ。エッチでごめんなさい」
「本当に反省しているのかしら?」
という事でルリコポーションを2本採取出来たので1本はインベントリに、もう1本はセイラさんに合成しやすいようにスキルレベルを1にしたり不要な効能を取り除いたり、調合スキルで整えておきます。
「そのポーションは?」
「ルリコポーションです」
「私のポーション?」
ルリコさんの持っている鑑定スキルレベル1ではポーションの名前すら朧げにしか鑑定出来ないので口頭で伝えます。鑑定指輪があればそれを渡して鑑定してもらう事も出来ましたが、今は持っていないので後で作る事にしましょう。
「潜伏スキル、釣りスキル、文芸スキル、見切りスキル、飛行スキル、剣術スキル、ストレージスキル、火炎スキル、鑑定スキル、裁縫スキル、料理スキル、精神力スキル、集中力スキル、持久力スキル、体力スキル、筋力スキル、視力スキル、聴力スキル、技術力スキル、毒耐性スキル、麻痺耐性スキル、睡眠耐性スキル、気絶耐性スキル、疲労耐性スキル、痛覚耐性スキル、アイテムドロップ率スキル、品質スキル、水質スキル、幸運スキル、仕事運スキル、健康運スキルなどなどのスキルが詰まったルリコさんのポーションです」
つらつらとスキル名を話していくと、ルリコさんのお目目がぐるぐるとして来たので思考力アップスキルも必要だったかもしれません。
「そのポーションをどうするの?」
「セイラさんに合成するんですよ」
「なるほど……」
思案気に右手を顎に当てて考え込んでいるルリコさんですが、多分考えている振りをしているだけですね。私には分かります。
そんな中二病なルリコさんは放っておいて、セイラさんのそばに行きます。
「……132、133、134」
「セイラさん?」
「135、136、137……」
未だに壁のシミを数えているセイラさんはきっと一つの事に集中し出すと周りが見えなくなるタイプの人だと理解しました。今ならおっぱい揉んでもバレへんかな?
「セイラさん、おっぱい揉んでも良いですか? 良いですよね?」
「141、142、143……」
答えが無いので肯定と受け取りましょう。
「では遠慮無く」
ふにゅ。
「おおぉ、これは中々……ふひひ」
「151、152、153……」
「ここまでして途切れない集中力……確か集中力アップ系のスキルは持っていなかったはず……まさか、忍耐スキルで単調な作業も耐えているとでも言うのですか……!」
「166、167、168……ふぅ、終わった」
「セイラさん!」
「ひゃっ!!? ひゃい!?」
「素晴らしいものをお持ちですね! すごく感動しました!」
「え、えっと……? ありがとうございます?」
「では、スキルの合成をしますのでお手を拝借」
「は、はい!」
セクハラなんて一切無かったかのように振る舞える私も中々じゃないでしょうか?
……ちょっとだけ罪悪感が。
でもでも、タダで大量のスキルを合成するんだし、これでチャラって事で。
「……おっぱいを揉んでしまってごめんなさいでした」
「んん? 何の話?」
「……いえ、なんでもないです」
「んー?」
この消せない罪は生涯背負って行こうと思いました。
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