お尻ぺんぺんした

「はい、スキルの合成終わりましたよ」

「どれどれ、おお、沢山ある!」

「カードの偽装はどうしますか?」

「お願いします!」

「では、カードをお借りします。えいえいむん。これで大丈夫ですよ」

「おお、元に戻ってる!」

「レベルの高い鑑定スキルでセイラさん自身を鑑定されると、すぐにバレるので気を付けてくださいね」

「分かりました! 今日は本当にありがとうございました!」

「いえいえ、セイラさんの今後の活躍に期待していますよ」

「はい!」


 ということで無事にセイラさんのスキル合成が終わったので、私はそそくさと宿屋から退室する事にしました。


「では、またどこかで」

「またね! ロトルルちゃん!」

「え、あれ? もう帰るの?」

「ルリコさんもまたです。夜はキャンセルで」

「え、何? キャンセル? あ、ちょっと、まだ話が」


 森に作った秘密基地へ転移し、壁に頭をぶつけて項垂れました。


「はぁぁ、ああいうのは良くないよ……罪悪感で心が痛いや……」


 あの純真無垢なセイラさんに対してセクハラをするなんて私はどうかしてました。

 一応謝りはしましたが本人が気付いていなかったのですから、もうどうしようもありません。

 許されざる罪を背負うってこういう感じなんでしょうか?


「はぁ……分身体、ちょっと来てください」

「我は汝、汝は我、我は汝の心の海より出し者、懲罰執行者ロトルルなり。さぁ、お前の罪を数えなさい」


 禍々しい黒紫色に光る謎の魔法陣が床に描かれて、そこから私の分身体が腕を組んでせり上がって来ました。

 こんなエフェクトを発動したつもりはありませんでしたが、それよりも今は懺悔と罰を受けたいのです。


「私、ロトルルは、純真無垢なセイラさんにセクハラをしてしまいました」

「有罪。懲罰執行。百叩きの刑。お尻を出しなさい」

「はい……」


 スカートとパンツを脱いで、正座した懲罰執行者ロトルルの膝にうつ伏せに抱えられると、全力のお尻叩き100回が始まりました。


「ロトルルは悪い子!」

「ひんっ! 私は悪い子です」

「ロトルルは悪い子!」

「ひぎっ! 私は悪い子です」

「ロトルルは悪い子!」

「あぎっ! 私は悪い子です」


 エアロアダマンタイト製のお尻とはいえ、同じくエアロアダマンタイト製の手で何度も叩かれれば赤く腫れ上がって来ます。


 罪には罰が必要ですが、結局のところ、こんなものは自己満足でしかないんですけど、やらずにはいられないし、やった方が私の心が軽くなる気がするのでそうしているんです。


「ロトルルは悪い子!」

「ぎぃっ! 私は、悪い子です」

「ロトルルは悪い子!」

「ぎゃぃっ! 私、は、悪い子です」

「ロトルルは悪い子! だけどこれからは良い子になります!」

「があああっ!! くっ、ぅぅ、私は、良い子になります……!」


 100回目に全力中の全力でお尻を叩かれ、お尻が割れたような痛みが走りましたが、この痛みを忘れずに、今後は良い子になろうと自分自身に誓いました。


 分身体の視覚共有で赤く腫れ上がった自身の桃尻に、少しムラムラしてしまいましたが、今はそういう気分では無いので、よく頑張ったお尻を撫でるだけにしておきました。


「うぅ、痛い……」

「私の罪はこれで軽くなりましたが、生涯消える事は無いのでよく肝に銘じなさい。では、また、私の罪を数える時に会いましょう」


 スゥーっと勝手に居なくなって行きましたが、アレ自我を持っていませんでしたか? 私の演技ですよね? 私、演技してましたよね? あれれ?


「ふぅぅ、怖い事は考えないようにしましょう」


 脱いだパンツを穿こうとしたら痛過ぎたのでスカートだけ履く事にしました。


「スースーする……」


 パンツを穿いて無いから恥ずかしくないもんって、本末転倒ですね。


 自然に治るまではポーションや回復魔法を使ったりはしません。

 この腫れが治った頃には私の罪もより軽くなっていると思いますので。


「さてと、鑑定指輪とルリコポーションの栽培を始めましょうか」


 秘密基地には窓枠が空いていますが、日が傾いて来ていて薄暗いので魔法で光球を天井に張り付けて明かりをとります。


 ストレージからエアロアダマンタイトを取り出して、錬金スキルで指輪に加工し、同じくストレージから鑑定スキルを持ったグレープフルーツ大のブドウを取り出して少しずつ液化合成してスキルレベルを高めて行きます。


 スキルレベル1しか持たない物体でも100等分してから別の物体に合成していけばカンストしたスキルを作れるので合成スキル様様です。

 あまり小さくし過ぎるとスキル自体が消えてしまいますけどね。


「出来た」


 エアロアダマンタイト製の鑑定指輪完成です。

 すぐ使えるようにインベントリに入れておきましょう。


 次は外に出てルリコポーションを栽培します。


 インベントリからルリコポーションを取り出して眷属などの不要な効能を取り除き、普通の大きさのブドウの種に合成して、地面に植えます。


「メガポーションを試してみますか」


 ストレージからメガポーションを取り出して地面に植えたブドウの種にぶっ掛けてみました。


「お、早い早い。実もちょっと大きいぐらいですし、メガポーション良いですね」


 次からハイ肥料ポーションが無くなった時にはメガポーションを使って行きましょう。ハイ肥料ポーションは増えていく一方なのでそうそう無くなったりはしませんけども。


 スキルだらけのブドウの種だけあって突然変異スキルが大量に収穫出来ました。


「奴隷化スキル、催眠スキル、ラッキースケベスキル、時間停止(体感時間)スキル、透視スキル、盗聴スキル、拘束スキル、調教スキル、淫乱スキル、媚薬スキル……これ、なんてエロゲ?」


 とりあえず全部指輪にしてインベントリに保管しておきましょう。ナニかに使えるかもしれませんからね。


 腫れたお尻がズキリと痛みましたが、犯罪に使ったりは絶対にしませんのでご安心ください。


「これで基本的な物は揃ったかな……?」


 虚空に消え去ったスキルも手に入ったので、あとは食べ物や生活必需品などを揃えて行きましょう。


「街の近くの秘密基地より、ルリコさんの宿屋からの方が早いか……んー、まぁいいか」


 下手に拗らせて「どんな顔して会えばいいか分からない」とか、それこそ罪から逃げているようで嫌ですし、普通に接すれば良いのです。


「それが出来ないから悩むのよね……今こそがんばロトルル!」


 頬を両手で叩いて気合いを入れ、ゲートを開いてルリコさんの泊まっている宿屋の部屋へと向かいました。

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