がんばロトルルした

 前回までのあらすじ。

 アイテム全ロス。

 以上。終わり。


「ウソダドンドコドオオオオオオオオオオオオン!!」


 ストレージスキルとインベントリスキルを合成したら、今まで集めてきた全てのアイテムが虚空に消えるとかありえないでしょ!?


「こんなバグ、運営の怠慢でしょうがッ! メンテはよッ!!」


 幼女神が居るという事は、この世界も他の神々が運営しているはずなので、スキル担当の神様、どうか私のアイテムを返してください、お願いします!


「ストレージ……なんも無し……インベントリ……なんも無し……」


 虚空にすぽすぽ手を突っ込んでみますが何もありません。


「んぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」


 過度のストレスで頭を抱えて仰け反りながら野生動物のような声を上げてしまいました。


 スキル担当の神は絶対に泣かすッ! 絶対だッ!!


 手当たり次第に八つ当たりして気持ちを落ち着かせ、これからの事を考えました。


「金目の物は、まあ良いとして、ポーション類もまた作れば良いし、素材アイテムも集め直すとして、服も買い直せば良いし、食材も買い直して、それから……あぁ、ギルドカードか……再発券……面倒くさいな……」


 SSDに入れていたデータをQTDに移し替える時に、誤って全データ消去した時並みに面倒くさい……。ちなみにQTDとは次世代ハードディスクの略称で正式名称は……クアンタム? クアッド? ……そもそもSSDの正式名称も知らないや……。


「ソリッドかソリダスか、リキッドは無いな……」


 現実逃避したくてどんどん思考が脱線していっている気がします。


 時を戻しましょう。


「うぅぅ……時間逆行系魔法はどれもこれも超級魔法……過去の自分にテレパシーを送るだけでも超級魔法……万物魔法スキルをカンストさせて使っても、死ぬかも?」


 いずれ成長した私になら使えるかもしれません。


「なら、未来の自分に頼るのは……超級魔法ですよねぇ……コールドスリープしても自分が成長しなきゃ意味が無いですし……詰んだ……」


 ロトルル選手、ここで投了です。


「はぁぁ……地道に集め直しますか……」


 私の心の海に住まう者たちもそれが良いと言っている気がします。我は汝、真なる我。


 私の心の海に住まう者たちが神か悪魔かは知りませんが全員一致なので、それが私にとっての最善手という事なのでしょうね。めんどくさいけど。


「めんどくさい、めんどくさい、めんどくさい! いやだ、いやだ、いやだ、いあ、いあ、さなのうた、ふたぐん!」


 うっかりまつろわぬ神を讃えてしまいましたが、前世の世界の創作物に出て来る架空の神なのできっと大丈夫でしょう。


「フラグになれぇ……そしてスキル担当神を追いやれぇ……」


 そう上手くは行かないと思いますが、ここは異世界なので似たような神様が居てもおかしくはありません。というか居て。


「はぁ……現実逃避はこの辺にして、がんばロトルルするとしますか」


 とりあえず気合いを入れる為に、身体変化スキルで人差し指から皮膚を紐状に伸ばして錬金スキルで液化切断し、ハイポーションで……。


「全部虚空に消えたのよね……ヒーリング」


 やる気がー。


「がんばロトルルよ! 私!」


 さらに気合いを入れ直し、紐状にした皮膚を使って自分の白茶色の髪の毛を束ねてポニーテールにしました。


「次は服です」


 ストレージからエアロアダマンタイトを……。


「いい加減に学習しなさい私。全て虚空に消え去ってしまったのよ!」


 ……服は後で作る事にします。


 ポニーテールにした事で、とりあえず半分くらいの気合いは入ったと思うので、ハイポーションの材料集めをしましょう。


「薬草……ハイ肥料ポーションが無いから地道に採取しないといけないのツラタニエン」


 薬草の群生ポイントはあちらこちらにあるので、そこまでの苦労ではありませんが、やはり面倒くさいが勝りますね。やりますけど。


 集めた薬草を合成していき、効能を高めてからポーション化します。


「はい、ハイポーションの完成!」


 あとは未収穫だったブドウの実を食べて種を吐き出し、ハイポーションとブドウの種を合成します。


「……ハイポーションもう一本いるやん」


 ハイ肥料ポーションよりは育ちは遅くなりますがハイポーションでも植物はすぐに育つので、それでハイポーションを量産しようと思いましたが、私の精神が不安定なのか凡ミスが多いですね。


 ちゃっちゃか薬草を集めてハイポーションを作成し、ハイポーションの効能を持ったブドウの種を地面に植えて、先程作ったハイポーションをぶっ掛けました。


 数十分後。


「実がいつもより少ないですが、ちゃんと育ちましたね」


 精神を落ち着かせる為に瞑想して待っていましたが、途中で寝ていた気がします。

 リフレッシュは出来たので結果オーライです。


 あとはブドウの実をポーション化し、ハイポーションを作成、ストレージに仕舞う、の繰り返し作業です。


 前にリンゴで量産した時はハイ肥料ポーションで育てたのでメガポーションに成長していましたが、ハイポーションで育てるとハイポーションにしかならないみたいですね。


 100本ほどハイポーションを作成したところで、樹木ごとポーション化出来る事を思い出し、深いため息を吐き出して、3000本ほどハイポーションを作成しました。


「半分はメガポーションにしましょう」


 地面に落ちている1500本のハイポーションをストレージに仕舞い、残りは一気に合成してメガポーション750本をストレージに仕舞いました。


「そういえばメガポーションを合成した事はありませんでしたね」


 早速試してみましょう。


 ストレージからメガポーションを2本取り出して合成。


「エクスポーションの完成!」


 名前は私が決めました。


 鑑定スキルで表示された正式名称は滋養強壮精力増強体力全快万病治癒健康長寿ポーションです。長いわ!


 効能はどんなケガや病気も治せて、さらに健康的な体にしてくれるらしいです。

 つまりゲーム的に言うところの最大HPや最大MPを増やしてくれる効果を持ったポーションという事ですね。


「飲んでみよっと、ゴクゴクゴク」


 水です。


「特に変わったところは……ん、お腹がちょっとふっくらしましたか?」


 腕や脚も以前より少しだけふっくらしている気がします。


「もっと飲んでみよう」


 ストレージからメガポーションを10本取り出して、エクスポーションを5本作成して飲んでみます。


「おお、太った太った。ぷにぷにだ……えへ、えへへ、分身の術!」


 分身魔法を使って正確に身体検査しましょう!


「うっふん」

「エッッッ!!」


 ヒョロガリだったロトルルちゃんの体が見違えるように健康的な体へと変態していました。変態だけに。


「近寄らないで、この変態」

「おふぅ……もっと言って……」

「キモッ、この変態! さっさとどっか行きなさいよ!」

「おぉ……最高でしゅ……」

「キモイ! キモイ! キモイ! それ以上近付いたら通報するから!」

「ロトルルちゅわん! ムチュー!」

「ンムッ!? ぷはっ! いやっ! 離して!」

「えへ、えへへ、えへへへ。ロトルルちゃん可愛い」

「自分で演技してて何だけど、最高に気持ち悪いわよ?」

「自分に何したって良いじゃない、自分なんだもの」

「それもそうね。じゃあ続きから、やめてっ! これ以上酷い事しないで!」

「クンカクンカ、ペロペロペロペロ、チュッチュッチュッチュッ」

「いやっ! やめてっ! 離してっ!」

「えへへ、もっと気持ち良い事しましょうねぇ。ぐへへへ」

「いやあああああああ!」


 その後も黒歴史を量産していくロトルルたちなのであった。

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