ゼロ

 ルリコさんの泊まっている宿屋はすぐそこなので数分も掛からずに着きました。


「ルリコさん居ますかー」

「はーい。あら、ロトルルちゃん。それにセイラも一緒って事は、なるほどね」

「ルリコさん察しが早いですね」

「マッサージでしょ? ほら早く入って」

「ルリコさん察し悪いですね……」

「あれ? 違った?」

「違う事も無いかもしれない……まだその時では無い……」

「なんだか意味深な言い方ね。とりあえず入って入って」

「お邪魔します」


 部屋へ入るとルリコさんはベッドに腰かけ、私とセイラさんはテーブル席に座りました。


 早速本題に移りましょう。


「スキルの合成ですが、その前にセイラさんのスキルを見させてもらいますね?」

「は、はい!」


 鑑定、鑑定っと。


 鑑定スキルを発動させてセイラさんのスキル一覧が表示されました。


 回復魔法スキルレベル45、癒しの波動スキルレベル1、忍耐スキルレベル60、杖術スキルレベル10。


 忍耐スキルが高いのは見るに堪えない怪我人や病人を診てきたからに違いありません。違っていたら全裸でスクワット100回しても良いです。


「なるほど、ヒーラーらしいスキルをお持ちですね」

「えへへ、どうもどうも」

「では、欲しいスキルか、こんなスキルがあったら良いなと思う物を紙に書き出してください」

「分かりました」


 セイラさんが欲しいスキルを紙に書いている間にルリコさんが話し掛けて来ました。


「そういえばあの子、アルリナちゃんだっけ? 居ないみたいだけど?」

「裁縫ギルドで修行中です」

「へぇ、裁縫ギルドか……その修行が終わったら可愛い服でも作って貰おうかな?」

「前金で払えばきっちり仕事はすると思いますよ。金の亡者なので」

「酷い言いようね……」

「書き終わりました!」

「はやっ!?」


 元気良くスキルの書かれた紙を私に渡して来たセイラさんは無邪気で可愛いですね。

 早速拝見していきましょう。


「飛行スキル、ストレージスキル、鑑定スキル、回復系のスキルがあれば全部、家事系のスキルがあればそれも全部、運が良くなるスキルがあればそれもください。お金持ちになれるスキルってありますか? なるほど、可愛いですね」

「えへへ」

「可愛いかしら……?」

「これぐらいなら何とか出来ますが、今は手持ちが無いのでちょっと作って来ますね。すぐに戻って来るので少々お待ちください」

「はい! よろしくお願いします!」


 という事で近所の森に作った秘密基地に転移で移動します。

 この二人なら転移するところを見られても問題は無いと思いますしね。


 秘密基地から外に出て、先ずは自分の小指をポーション化します。

 純粋に在庫切れという事とエアロアダマンタイト化した私の体は、どの程度痛みに耐えられるのかの実験です。


「えいや!」


 右手で左手の小指を握ってポーション作成スキルを発動しました。


「いぎいいいいいいいい!?」


 やっぱり傷付けば痛いものですね。全耐性アップスキルがあるので前よりはマシですが痛いものは痛いです。


 ストレージからメガポーションを取り出して左手にぶっかけ、絶妙に気持ち悪い動きをしながらニョキニョキと生えて来る小指を見守りました。


「ヨシッ」


 金属と合成したので治らない可能性も考えましたが、普通に治ったので良かったです。


 次に調合スキルでポーションから記憶やら眷属やら不老不死やらの不必要なものを取り除き、ブドウの種に合成して私のスキルを持ったブドウの種を地面に植えました。


「そういえば私って不老不死なんですよね……」


 スキル一覧では表示されないので、すっかり忘れていました。

 アルリナとも約束していたので、あとで成長ポーションを作る事にしましょう。


「先にこっちから」


 ストレージからハイ肥料ポーションを取り出して、地面に植えたブドウの種に掛け、実が成った所で収穫して行きます。


「おぉ、変異種だらけ! ラッキー!」


 複数のスキルを持ったブドウの種を植えたおかげか、そのスキルの上位互換や下位互換、あるいは全く新しいスキルを持ったブドウの実が成ってくれました。


 査定スキル、解析スキル、観察スキル、鑑定スキルの派生かな?


 浮遊スキル、浮上スキル、滑空スキル、飛翔スキル、この辺は飛行スキル系だね。


 火魔法スキル、水魔法スキル……などなど、万物魔法スキルの下位互換しか無いのは万物魔法スキルが魔法系スキルの最上位って事だからかな?


 気力回復スキル、体力回復スキル、精神力回復スキル、魔力回復スキルの派生ね。


 刀術スキル、短刀術スキル、短剣術スキル、棒術スキル、剣術スキル派生か。


 アイテムボックススキル、アイテムチェストスキル、保管スキル、貯蔵スキル、収納スキル、倉庫スキル、クローゼットスキル、キャビネットスキル、コンテナスキル、ガレージスキル、バックヤードスキル、インベントリスキル、金庫スキル……インベントリスキルあるじゃん!


 ラッキー! 早速自分に液化合成しました。


「テッテレー! ロトルルはインベントリスキルを手に入れた!」


 インベントリスキルを発動!

 目の前にアイテム一覧が表示されましたが何も入っていませんでした。何故?


「んー? あぁ、ストレージと別枠扱いって事か……」


 とりあえず最大容量確認として土をインベントリに入れてみます。


「1kgで1ストック、最大99個までか……レベル1だからかな?」


 一旦レベルをカンストさせてどれぐらい入るようになるのか確認してみましょうか。


 インベントリスキルを持ったブドウを地面に植えて、ハイ肥料ポーションを掛けて量産、合成を繰り返して完成されたインベントリスキルを自身に合成。


「1kgストックは変わらず、最大999個まで……アイテム一覧で何を持っているのか分かりやすいとは言え……微妙過ぎる……」


 現在のストレージスキルは、いつの間にかレベル4に上がっていて、アイテムを600種類と同種アイテムを600個ストック出来る様になっているので成長度を見てもストレージスキルの圧勝です。インベントリスキル君バイバイ。


「と、思いましたがストレージスキルとインベントリスキルを合成すれば良いじゃないですか。私、頭良い!」


 という事でインベントリから土を全部出して、調合スキルでインベントリスキルのレベルをストレージスキルと同じレベル4に調整してから合成。


「あれ? アイテム消えた? あぁ、さっきと同じ別枠扱いね。じゃあ、調合スキルでストレージとインベントリに戻してと……」


 ん? 消えたままだぞ? どういう事?


「まさか、そんな……嘘でしょ? 嘘だよね……?」


 ストレージ内アイテムゼロ。

 インベントリ内アイテムゼロ。


 ゼロ……ゼロ、ゼロ、ゼロ。


「ゼロオオオオオオオオオオオオオオオ!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る