自覚した

「起きました。おはようございます」


 夜更かししても誰にも怒られないというのに早寝早起きしてしまうのは、最早癖です。

 孤児院時代を思い出してちょっとだけ目が曇ります。


「今日は畑でも作ろうっかな?」


 思い立ったが吉日。

 家から降りてその辺を耕します。


「テッテレー! えあろあだまんたいとくわ〜」


 風船のように軽くて隕石が衝突しても壊れない丈夫なクワの事です。


「えっさ! ほいさ! えっさ! ほいさ!」


 クワで適当に地面を耕して畑風に形を整えます。畑作りのイロハなんて知りませんからあくまで畑風です。


「何、植えよっかな?」


 合成野菜を植えても良いですけど、一応は街の中なので変な人に目を付けられると厄介です。普通の野菜や果物を育てましょう。そうしましょう。


「ジャガイモ、キュウリ、ニンジン、ナス、ピーマン、ネギ、キャベツ、イチゴ、ブドウ、メロン、スイカ、うん。これぐらいでいいかな」


 一列ずつに畑に同じ物を植えていき、ハイ肥料ポーションを霧吹きします。


「はい、完成!」


 実った野菜や果物をつまみ食いしながらストレージに保存していきます。

 収穫している最中にストレージのスキルレベルが3に上がり、より多くの物品を収納出来るようになりました。


 残った苗などはそのままにしておいて食事で消費した分をその都度ハイ肥料ポーションを霧吹きして補充していこうと思います。


「ふぅ、一仕事終えると気分が良いですね」


 つまみ食いでお腹もいっぱいなので、昼寝でもしちゃおうかな?


 ……なんだか悪い事をしようとしている気分に。孤児院でのトラウマが尾を引いてますね。


「木の上にハンモックか……いいかも」


 トラウマは記憶の彼方へと追いやって、気持ち良く寝られる方法を考えました。


 まずは、エアロアダマンタイトを長方形の薄い生地に錬金して、両端に紐を通す穴を形成、紐もエアロアダマンタイトで錬金、両端の穴に紐を通し、あとは良い感じな場所の木の上に括り付ければハンモックの完成です!


「よいしょっと。おぉ、気持ちいい!」


 ゆらゆらさせると本当に重力から解放された気分になれますね。

 飛行スキルで寝れば良い?

 歩きながら眠れる人なら良いんじゃないですか?


 そんな事を考えながら目を瞑っていると、いつの間にか眠ってしまいました。



「ロトルルちゃんは将来何になりたいの?」

「えーっとねぇ……うーんとねぇ……自分だけの家でゴロゴロする人になりたいな!」

「えー! そんなのダメだよ! レフィーはね、お洋服作る人になりたいの!」

「それなら私もそれにする!」

「わー! ロトルルちゃんがお洋服作る人になったらレフィーにも作り方教えてね!」

「うん!」


 レフィーの輝くような笑顔を見て、私の将来の夢は裁縫師になる事だとそこで決めたのでした。



「ん……?」


 起きると太陽が真上に昇っていました。三時間くらいは寝てたかな?


「んー! よく寝た」


 伸びをしてハンモックから降ります。


「……ちゃんと働こう」


 孤児院時代の夢は大体嫌な夢しか見れませんけど、先ほど見た夢は暗黒の孤児院時代でも楽しい思い出なのですが、今の私にそれを見せますか……。


 このままだと引きニート生活まっしぐらな事に気付いてしまったので、ちゃんとした仕事を始めようと思いました。

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