男を自宅に誘った

 そういえば、せっかくファンタジーな異世界に転生したというのに武具屋に一度も行ってませんでしたね。

 早速行ってみましょう!


「らっしゃい」


 おぉ、まさに異世界ファンタジーな武具屋!

 一見するとコスプレ道具にしか見えませんが全部本物ですよ!


「うわぁ、邪気眼使いが好きそう剣ですねぇ」


 私は邪気眼使いでも中二病でも無いですが心が躍ります。


 店内をうろちょろしてスキルか魔法が付与された物があるか探してみましょう。


「斬れ味アップ、こっちは毒、睡眠、麻痺、混乱、防御アップ、剛力、素早さアップ、色々ありますなぁ」


 お値段もそれなりにしますね。

 買っても良いんですけど悪人に目を付けられると困るので、そういうスキルや魔法がある事が知れただけ良しとしておきましょう。


「お嬢ちゃん、こんな所で奇遇だな」

「あ、知り合いだけど名前を知らないお兄さん!」

「お、おう、確かに名乗っては無かったか。俺の名はダイゲンだ、よろしくな!」

「改めましてロトルルです。よろしくお願いします」


 右手を差し出して握手を求められたので両手で握って笑顔で答えました。

 さながらアイドルの握手会みたいな感じになってしまいましたが相手の手がでかかったので自然とそうなっただけです。他意はありません。


「装備選びに困ってるなら俺のお勧めを紹介するぜ?」

「困ってはいませんけど、あ、これと、これと、これ買って来て貰えます?」

「ん、まぁ別に構わないが、お嬢ちゃんが使うには厳しいと思うぜ?」

「いいからいいから早く早く!」

「お、おぅ」


 防御力アップの兜、剛力の籠手、素早さアップのブーツをダイゲンさんに買って来て貰いました。合計60万エル。


「買って来たぜ?」

「ありがとうございます! 私が買うと変な目で見られそうなので助かりました」

「そういう事かい。まぁ、役に立てたのなら良かったぜ」


 カードで購入代金を支払い、それぞれ箱に入った装備品をお腹ポケットのアイテムボックスに見せ掛けたストレージに入れました。


「そいつは……なるほどな。用心深いのは冒険者の基本って事か」


 私のお腹ポケットを見てから私の顔を見て来たのでピンッと来ました。


「ダイゲンさん鑑定持ちですか」

「ん? さて、どうだろうな?」


 私の現在の鑑定レベルは10ですけどダイゲンさんのスキルぐらいなら鑑定出来るはず。

 試しに見ようとしましたが、モヤが掛かって分かりませんでした。

 ならばとストレージから鑑定指輪を装備。

 モヤが消え、ダイゲンさんのスキル一覧が表示されました。


 鑑定、鉄壁、ムードメーカー、豪胆、裁縫スキルレベル30、盾術スキルレベル20、料理スキルレベル10。


「みーたーなー?」

「そういう事って分かるものですか?」

「経験である程度は分かるぜ。スキルや魔法以外の、いわゆる「勘」って奴だ。ま、お嬢ちゃんの場合は突然ごそごそし出してじっと見つめられたからってのもあるが」

「なるほどなー」

「それにしても、お嬢ちゃんのスキルや魔法も中々にアレだな」


 私の現在のスキル一覧。

 調合、合成、錬金、鑑定、ポーション作成、飛行、風魔法、光魔法、魔力回復、転移、剣術、火炎、ストレージ、蘇生、万病治癒、身体変化に加えてて剛力、防御力アップ、素早さアップが追加予定です。


「スキル収集が趣味みたいな所はありますね」

「俺にも少し分けて欲しいもんだ」

「お金次第では分けてあげますよ?」

「マジか!?」

「自分の体以外でやった事は無いので安全は保証出来ませんけど」

「いいぜいいぜ、そうだなぁ、まず飛行スキルだろ、それから剣術とストレージだな。いくらだ?」

「えーっと、500万エルぐらいかな?」

「あー、飛行だけだと?」

「200万ぐらい?」

「……うーむ。食費削るか……?」


 右手で顎を触り、左手はお腹をさすって食費をいくらまで削ろうか考えている様子のダイゲンさん。

 その巨体で食費を削るのはやめた方が良いと思います。


「お金が貯まってからでも良いんじゃないですか?」

「いや、空を飛ぶのは男のロマンだ! 200万エル払うぜ!」


 そう言うとダイゲンさんが私に向けて懐からカードを取り出したので、釣られて私もカードを取り出して200万エルを受け取ってしまいました。


「よし、やってくれ!」

「こんな所で出来ませんよ。家に来てください」

「おう、そうか。早く行こうぜ!」


 我が家への二人目のお客様はダイゲンさんになりました。

 男を自宅に連れ込むのってどうなの? って思いましたが、まぁ変な事になるような人でも無いですし、別に良いかな?



「おぉ、すげぇ家に住んでんな!」

「ふふん!」


 自慢の我が家を見て驚いてくれると鼻が高いですな! 癖になりそう。


「けどよ、どうやって入るんだ?」

「飛行スキルですよ」

「なるほどな!」


 ダイゲンさんに抱き付くのは流石にあれなので手を繋いで飛びました。


「おぉ! 中も良いじゃないか! 俺もこんな家に住んでみたいぜ!」

「ふふーんっ!」


 こんなに褒められると私の鼻が天を突き抜けます。終いにはドリル鼻で天元突破すると思います。


「では飛行スキルを合成しますので手をお椀みたくしてください」

「お、もうか! 楽しみだぜ!」


 ストレージから飛行ポーションを取り出してダイゲンさんの手に注ぎます。


「合成!」

「むむ!?」


 飛行ポーションがダイゲンさんの手に染み込んで行きました。

 ダイゲンさんのスキルを鑑定すると飛行スキルレベル1と表示されてます。


「成功しました」

「おぉ! 本当か!? 飛べぐへぇあッ!?」

「oh……」


 ドゴォッ! というえげつない音を立ててダイゲンさんが天井にしこたま頭をぶつけてしまいました。急に飛ぶから……。


 この家はエアロアダマンタイト製なのでいかに衝撃吸収されるとはいえ、あの速度で頭をぶつければ相当な痛みでしょう。

 それとも鉄壁スキルがあるから大丈夫なのかな?


「痛ぇが大丈夫だ! ハハハッ! 俺もこれで空を飛べるぞ!」

「良かったですね。ただ今後は家の中での飛行スキルは禁止にした方が良いですね」

「だな!」


 早く空を飛びたいとウズウズしているので今日はこれでお開きにしました。

 食事を出して驚いた顔を見たかったですけど、今日の所はまぁ良いでしょう。


「じゃあ、また金貯めてからお邪魔するぜ!」

「普通に遊びに来てくれても良いですよ」

「そうか! じゃあまたな!」

「またです。低空飛行で気を付けて帰ってください」

「おうよ!」


 玄関を出ると早速飛行スキルで文字通り飛んで帰って行きましたよ。

 テンションマックスなのか雄叫びをあげながらなのでご近所迷惑ですね。

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