最高にハイッた
街に戻り不動産ギルドへ行き空き地を確認します。
「空き地? 秘密基地でも建てるのかな?」
「そんな感じです」
不動産ギルドのお姉さんにお金の掛からない空いている土地はあるか聞くと子供の遊びだと思ってくれたようなので乗っておきました。
「うーん、ここが良いかしら?」
街全体の地図をテーブルに広げてどの辺が良いか指差しで確認していきます。
「もうちょっと離れた場所が良いです。秘密基地なので」
「ふふ。じゃあ、ここが良いかな?」
「ふむ、そこなら民家からも離れてて良いですね。そこにします。ありがとうございました。遊びに付き合ってもらって」
「いえいえ、私も暇つぶしが出来て良かったわ。ねぇ、秘密基地が完成したら見に行っても良い?」
「良いですけど、誰にも秘密ですよ?」
「ええ、もちろん」
お姉さんは犬小屋程度の物を想像しているのかもしれませんが普通に一軒家を建てる予定です。今からお姉さんの驚く顔が目に浮かびますね。
お姉さんに貰った街の地図を確認しながら目的の場所へと向かいます。
街の中心部から離れ、目的地に近付くに連れて段々と民家が少なくなっていき、最後には雑草生い茂る未開の地へと辿り着きました。
「確かにここならお金掛かりませんね」
ご近所さんは遥か遠くに見える農家さんです。ご近所付き合いはしなくて良さそうですね。
水場が無いのは不便ですが、錬金スキルで地面を液状化させて調合スキルで真水にしたり、そもそもポーションを作れるので問題は無いと思います。
なんなら井戸を掘ってみるのも良いでしょう。
とりあえず家を建てます。
「パンッ! ドンッ! ズモモモッ!」
擬音を言っただけです。
そんな、毎回毎回パクる訳無いじゃないですか。
ネズミがトラウマになって怖いので今回の家は木の上に建てようと思います。
地面に栗を4つ等間隔に埋めてハイ肥料ポーションをぶっかけます。
にょきにょきと4つの連なった栗の木が見る見るうちに、太く大きくなっていき、縄文杉とまでは言いませんが大きな栗の木が育ちました。
飛行スキルで飛び上がり、家作りに邪魔な枝をレベル上げも兼ねて各種魔法スキルで剪定していき、エアロアダマンタイトを合成した木粉で円錐屋根のツリーハウスを錬金スキルで建てました。
最後に合成スキルで家と木を癒着させて完成です。
「ふぅ、中々良い出来じゃないですか」
ツリーハウスなので中はあまり広くありませんがキッチンと居間、風呂場とトイレを作りました。
居間にベッド。キッチンに流し台とかまど、それとダイニングテーブルと椅子を四つ。風呂場に浴槽。トイレに腰掛け便器をそれぞれ作ります。
ストレージのスキルレベルが2に上がっていたので物置は必要無くなりました。
もちろん私はトイレに行きません。アイドルなので。
そういえば肥やしポーションが減ってしまったのでちょっと作ってきます。
ベッドに横になり少し休憩。
小腹が空いたけど起き上がるのも面倒なので、そのままの格好でストレージからキノコと細長い枝を取り出し、キノコを枝に刺して、人差し指の先にビー玉ほどの大きさのファイアボールを作り、キノコを炙って食べました。うまー。
お腹が満たされたのでそのまま眠っちゃいました。
眼が覚めると真っ暗だったのでそのまま二度寝し、朝までグッスリ眠りました。
森の中だと色々な生物の鳴き声が聞こえて来ましたが、木の上という事もあってかここは凄く静かでちょっと寂しいぐらいです。
朝食は茹でたジャガイモとステーキ、トマトと食用雑草とキノコのサラダです。
「パクパクモグモグゴックン」
調味料無しでこの美味しさ。調合スキル万歳!
ふと思い付きました。
ジャガイモと肉を合成するとどうなるかと……。
「肉ジャガだ。グロい」
生肉の様なジャガイモが出来ました。キモいし何より見た目がグロい。正気度がガリガリ下がる。
とりあえず栽培出来るか試してみますか。
一々外に降りるのは面倒なのでプランターを作ってそこに土を入れ、家の中で栽培する事にしました。
肉ジャガをプランターに植えてハイ肥料ポーションを掛けると肉の花が咲き、肉トマトが実りました。キモい! 気持ち悪すぎる!
収穫してフライパンで焼いてみるとお肉の良い匂いがして、食べてみると肉とジャガイモの味でした。
タンパク質と炭水化物が同時に摂取出来て良いですね。
とりあえず持っている食品を全部合成してみようと思います。
「形容し難い物体になってしまった……」
黒い紫色のドクドクと脈打つ、この世に決して存在してはいけない様な形状の生物の様な植物が呻き声を上げながらプランターに植わっています。
鑑定しても???マークだらけで謎です。
食物だけで合成したので食べられるとは思いますが、まぁ、食べたくはありませんね。
「うまああああああずいいいいいいいいいいい!?」
折角なので食べましたが凄く美味しくて凄く不味いです。
最初はこの世にある美味なる物をいっぺんに頬張った様な味がして、咀嚼する間に糞尿嘔吐物、ありとあらゆる汚物を凝縮させた汁が口に広がり吐いてしまいました。
「ペッ! ペッ! 酷い味だ」
噛まずに舐めていれば美味しいのかもしれませんが、口からドブの臭いがするのでもう食べません。ポーションでうがいしました。
このままただ棄てるのは勿体無いので錬金スキルで粉末化して、ペロッとひと舐めすると天にも昇るような味と風味がしたので、樹脂から透明な調味料入れを作ってふりかけとして使う事にしました。
試しに肉ジャガの葉のステーキにふりかけて焼いてみると、うっかりアヘ顔になってしまう程の美味しい香りがして、この香りだけでご飯100杯は食べたい気持ちになりましたね。
良い感じに焼き上がったので、熱さも忘れてかぶり付きました。
「ひゃああああああああああああああ!?」
あ、私、死んだ。
「……はっ!?」
気付くと床に倒れ伏していました。
「恐ろしい……恐ろしく美味しい……」
あまりの美味しさに脳がショートして気絶してしまった様です。
この調味料を使い続けた場合、薬物中毒者と変わらない末路が待っている気がするので死蔵する事にしました。
特別な日など数年に一度だけ解禁する事にします。
「でも、あとちょっとだけ……あはあああああああああ!」
ばたりと倒れて気絶しました。
「……はっ!」
ダメですこれ!
調味料と残っていたステーキは全て消し炭にして破棄。
急いで忘却ポーションを作成し、自分宛にメモを書いてから、ここ一時間ほどの記憶を消し去りました。
「あれ、何だっけ?」
机に見知らぬメモが置いてありました。
「食品合成は危険、慎重に2種類ずつ合成すべし、一気に全部を合成すると記憶を失う……なるほど」
どうやら私は失敗してしまった様ですね。
食品合成は慎重にする事にしましょう。
「美味しい!」
トマキノコと雑草肉を作ってみました。
トマキノコはトマトとキノコを合成した、汁の滴る赤いツヤツヤキノコ。
雑草肉は肉の臭みが消えたヘルシーで食物繊維豊富なお肉。
どちらも美味しく出来ました。
そんなに食べていませんが、何故かお腹いっぱいなので食品合成はまた後日にしましょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます