お風呂を作って入ってみた

 朝はいつも早起きです。孤児院の教育は実に素晴らしい。……二度とゴメンです。


「今日は市場で買い直し、とお風呂を作ろっと」


 そうと決まれば早速行動開始です。


 大量のポーションはガラクタ置き場にあった冷蔵庫ならぬ室温庫に移しました。

 棚との違いは密封されているかどうかです。

 それに室温を下げれば冷蔵庫としても使えるはずです。そんな部屋には居たくありませんけどね。


 何日ぐらいでポーションが劣化していくのか観察してみるのも良いかもしれません。

 とりあえず日付を書いたラベルを瓶に貼っておきました。


 空にして軽くなったリュックを背負い、まだ寝ているお姉さんの顔にキスをして、ほっぺだからセーフ。市場に出掛け、昨日と同じ物(マジックバック除く)と作業道具一式を買い漁り、駆け足でギルドに戻って荷物整理、作業着に着替え、まだ寝ているお姉さんの胸に顔を擦り付けてから森に出掛けました。セクハラはやめましょうね!



 木材で浴槽を作ろうと思ったけど、錬金スキルで陶器の浴槽を作った方が早い事に気が付いた時には、丁度良さそうな木を切り倒した後でした。


「ハイポーションで治るかな?」


 ダメ元で振り掛けてみると新芽がニョキニョキ生えてきて、これまたメルヘン。

 この様子だと元の木の大きさに戻るまではもう少し時間が掛かりそうです。それでも十分早過ぎる成長速度ですけど。


 切り倒してしまった木を放っておくのは勿体ないので、せっかくですから小屋を作りましょう。

 ギコギコと市場で買ったノコギリで丁度良い大きさに切って行きます。


 無理です。子供の体力なめないでください。

 スタミナポーションを作りましょう。そうしましょう。


 霧吹きでハイポーションを散布。草花が生い茂るのを待ってから採取。

 採取した草花をポーションキットに適当に入れてハンドルを回せば謎のポーションの出来上がりです。

 スタミナ回復効果のあるポーションが出来上がるまで、一連の作業を繰り返します。

 スタミナ回復効果のあるポーションが出来上がったら、どの草花を使ったか鑑定ゴーグルで調べて量産していきます。

 量産出来ましたら合成スキルで効果効能を上げていき、不要な効果効能を調合スキルで取り除きます。

 それを繰り返せばスタミナ無限ポーションの完成です。


「ふっ、またつまらぬ物を作り上げてしまった……。ゴクゴクゴク」


 炭酸の抜けたエナジードリンクの味! リアルでゴールドなやつ! 炭酸水と合成したいです!

 と言っても未だに炭酸水は手に入っていないんですよね。市場にも出回って無さそうですし、この世界に炭酸水は無いのでしょうか?


 ところで、このスタミナ無限ポーションの効果はトイレに行くまで続きます。永遠に眠らなくて良い体にはなりたく無かったので。

 睡眠ポーション? 完全に眠ってしまうのでこの世界では危ないですよ。


 さて、それじゃあ小屋を建てて行きましょうか。


 ギコギコドッタンバッタントントントン。


「上手に出来ました!」


 木工スキルが無くてもこれぐらいなら簡単です! 四角く整えて釘を打つだけですから。窓枠を切り取ったら、はい、完璧!


「次はお風呂!」


 土に手をかざして錬金スキルで大きな陶器のお椀を作り出しました。

 スキルって本当便利ですね。


 あとは薪を集めて……お風呂、持ち上がりませんね。

 大丈夫です! 錬金スキルでお風呂の下にかまどを作りました!

 お風呂に入り辛くなりましたね……。

 大丈夫です! 錬金スキルでハシゴを作りました!

 水が無い? ポーションキットがあるじゃないですか! お風呂にポーションが貯まるまでハンドルを回します! その間に薪に火を着けて……火は……。

 大丈夫です! ユミギリ式もマイギリ式も前世のサバイバル系ネット動画を見て覚えてます! 火起こしキット作りならチョチョイのチョイです! 頑張ります!


 魔法を覚えようと本気で思いました。

 錬金術書とかに魔法を覚えられる薬とか載ってるといいなぁ……。


 四苦八苦しながらポーション風呂の完成です!

 一度煮立たせてしまったので冷ますのに時間が掛かりましたが、もう大丈夫です! 錬金スキルで温度計を作りました! 完璧です!


「それでは早速入ってみましょう! あふぅ、最高……」


 スタミナは無限ですが精神的疲労はありますからね。疲れが抜けて行きます。


「いい湯だな、アハハン」


 心が落ち着きますねぇ。このまま寝てしまいたいぐらいです。


「あ、そうだシャンプーしよっと」


 一旦お風呂から上がり、リュックからシャンプーを取り出して頭を洗います。

 こっちの世界では頭を洗う機会は無かったので長髪の洗い方とか知りません。適当にゴシゴシしちゃいましょう。わしゃわしゃ。

 シャワーは無いのでお風呂で洗い流します。

 有害物質は調合スキルで取り除けるので永遠にこのポーション風呂を取り替える必要はありません。

 まぁ、温めているのでその分減りますが。


「あぁー、頭が軽いぃ、最高ぉ……」


 至福の時とはこういう物なのですね。


「星空が綺麗……」


 すっかり日も暮れて、犬の遠吠えが聞こえて来ました。


 この森に犬を連れて散歩に来る人は居ませんけどね。

 ……狼かな?


「まずは冷静に、落ち着いて行動するのよ」


 慌ててお風呂から上がり、タオルでさっと体を拭いて市場で購入した服を着ます。パンツは白です。

 リュックに作業道具を詰め込み、火の始末をして街へと戻りました。

 小屋やお風呂はそのままでも大丈夫でしょう。人が来るような場所ではありませんから。

 逆に言うとモンスターの出て来る確率は上がっていますけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る