街に着いたらロリコンが居た

 街に着く頃には足がガクガクでしたよ。子供の足じゃ、ちょいと遠過ぎたね。

 引きニート時代でも、この距離ならなんて事なかったけどやっぱり無理しちゃダメだな。

 とりあえず冒険者ギルドの看板は見つけたのでそこで休憩しようと思う。


 冒険者ギルドに入ると冒険者達が楽しく酒を飲み交わしていて、本当に異世界に来たのだと実感が湧いて来ました。

 感動はそこそこにして、とにかく今は座りたいです。


 空いている席に座って、テーブルに置かれている水差しからコップに水を注いで一息つきます。


「ふぅ……」


 子供が一人で冒険者ギルドのテーブルに座っていれば好奇の目で見られ、ゴロツキがちょっかいを掛けにやって来たりするイベントが発生したりするかもしれないとか考えていたけど特に何も起こらなかったよ。

 ちょっと期待してたのに。


 しばらく座って疲れも取れて来たのでギルド登録しに受付に向かいます。


「ようこそ冒険者ギルドへ。今日は、登録ですね。こちらに手をかざしてくださいね。はい、登録完了です。カードの再発券には手数料が掛かるから気を付けてね。それでは良き冒険者ライフを!」


 ギルド登録は思っていたよりもあっさりと済みました。

 というか私、一言も喋ってません。頷くだけでした。


 うわぁ! すごいステータスですよ! これなら魔王討伐も夢ではありません! みたいな事を期待していたんですけど、そもそもこの世界に魔王も勇者も居ませんでした。

 それはさておき、いよいよお楽しみのステータスオープンイベントです。

 カードに書かれたステータスを確認。


 ロトルル、人、女、10歳、冒険者レベル1。


 HPとか攻撃力は流石に書いてないか……。

 裏面を見てみるとスキル欄があり、そこには調合スキル、合成スキル、錬金スキルと書かれていて、それぞれレベル1と表記されていました。


 冒険者としての人生は絶たれた。

 いや、無理すれば出来る。錬金術士のゲームじゃ作ったアイテム投げて頑張ってたし! 爆弾でなんでも解決してたし! イケるイケる! たーる!


「現実的じゃ無いわよ、まったく……」


 10歳児に呆れられる30歳児であった。一人ノリツッコミだが。


 調合だと薬師ギルド、錬金なら錬金ギルド、合成は生産系ギルドならどこでもやっていけると思う。

 はぁ……。とりあえず異世界冒険譚は幕を閉じてしまったようだ。

 スローライフも悪くは無いがせっかくの異世界なんだから俺TUEEEEEEEEEしたかったよ。

 まぁ痛いのはごめんだけどね。あ、子作り……。

 痛み止めはさっさと開発しよう!

 相手が居るかどうか分からんけども! 男の娘が居たら良いなぁ。いっそ生やすか。


「君、大丈夫かい? 先程からウンウン唸っているけれど、どこか悪いのかい?」


 突然声を掛けられビクッと体が跳ねてしまいましたよ。

 声の主を見ると金髪青眼のイケメン冒険者様でした。うっとり。

 ま、ロトルルから見ればイケメンだけど前世の俺から見たら恋愛対象には程遠い。

 女装か女体化させればイケるけどね。ゲヘヘ。

 何がゲヘヘよ、我ながらキモイわね。


「だ、大丈夫です。戦闘職を期待していたのですけど、生産職のスキルしか無かったもので、この先の人生プランを練り直していた所でございます」


 孤児院でイジメられて育ったのでこっちの世界でもコミュ障です。

 目がキョロキョロ動いちゃうや。


「それは気の毒に……良かったら薬師の知り合いに紹介するけどどうかな?」

「いえ、もう少し考えてみます。ありがとうございます」

「そっか、そうだな。何か困った事があったら言ってよ。僕はシシドウ。これでも冒険者レベル38の中堅冒険者なんだ。護衛とか採取の付き添いなら出来ると思う。ドラゴンは流石に倒せないが翼竜なら倒した事があるんだ。これは自慢だけどね。あはは」

「ロトルルです。その時はよろしくお願いします」


 握手を交わしてその場を後にしたシシドウさんは他の冒険者からロリコン変態野郎と野次られていました。

 ロリコン仲間として記憶しておこうと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る