異世界行ったら驚いた

 オギャアッ! と産まれて早10年。

 赤ん坊の頃の記憶は全く覚えていないし、いつの間にか孤児院に預けられているし、他の孤児達にイジメられながら、厳しく先生方に育てられ、つい先程、卒業という名の厄介払いで孤児院を追い出されてしまいました。


「ロトルルちゃん。またどこかで会おうね!」

「うん! いつかきっとまた会おうね!」


 孤児院で唯一仲良くしてくれた3歳年下の美少女、レフィーをぎゅぅ! っと抱きしめて、いつまでもいつまでも手を振ってくれる姿に後ろ髪を引かれながら街を目指す途中、石ころにつまずき頭から盛大にズッコケた瞬間、前世の記憶が蘇って来ました。


「はっ!? 私!? いや、俺!? 女!? 女なの!? TS転生とかどういう事ですか神様!?」


 ドロワーズに手を突っ込んで相棒が居ない事を確かめ、ついでに新しい相方を触って、男の身では決して味わう事の無かった感覚に身悶えてしまった。


「はふぅ!?」


 敏感過ぎてむしろ痛いぐらいだ。これでは一人遊びも暫くお預け……って違う違う! そんな事をしている場合では無い。


「落ち着け、落ち着く時、落ち着く、ふぅ……」


 まずは冷静な判断が大事だ。

 30歳引きニートの童貞が死んで異世界転生したのが私、ロトルルちゃんだ。

 自分にちゃん付けは何か違う気がする。

 ロトルルとしての記憶より、引きニートだった時の記憶が勝って自分自身が他人のように感じられる。

 TS転生とか少しムラムラします!


「落ち着け、落ち着くのよ私! 30歳引きニートは死んだ! もういない! だけど私の心の中で生き続ける! そして私はロトルル、10歳、美少女! この世界基準だと不細工扱い! ヒドイ! 私をイジメて楽しんでたアイツらはどこかでばったり出くわしたら必ずぶっ飛ばす! よしっ!」


 前世は所詮前世でしかない。

 こっちの世界で前世の知り合いに会ったりする事も無いだろうし、せいぜい知識チートぐらいにしか使い道は無い。ゲーム三昧の引きニートに知識チートが出来るかどうかは分からないけど。


「そうだ。幼女神から何か楽しみにしておけって言われてたんだっけ、ステータスオープン!」


 ゲームでよく見るステータス画面が表示、されたりはしないのである。

 そういう能力が今はまだ無いだけかもしれないし、いずれは見れるようになる可能性もあるかもしれない。異世界なんだしある事に期待したいけどね。


「今は分からないし、やっぱりどこかのギルドに登録しないとな」


 この世界には冒険者ギルドやら傭兵ギルド、薬師ギルドなどなど多種多様なギルドがあって、ギルドに登録するとカードが発券され、その時初めて自分の持つ才能が何なのかが分かるようなのだ。


 せっかくの異世界だし、ここは王道の冒険者ギルドだよね。

 私的には裁縫ギルドか彫金ギルドが良かったんだけど、オタク君の望みは叶えてあげないとね。

 自分で自分を慰めるって変な感じだ。


「とりあえず街までレッツらゴー!」


 この先に待っているだろう夢と希望にあふれる異世界生活に心躍らせながら意気揚々と街へと出発するのであった。

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