第26話
目の前のわかりやすい現実が、残念なことに1ミリも見えていない。
現実逃避の極みというか、頭がおかしいというか。
――まったく。何度言ったらわかるのかしら。しつこい。女々しい。キモい。男らしくない。潔くない。往生際が悪すぎる。ほんとキモい男ね。今すぐ廃病院に帰りなさい。みみっちいストーカー男!
――そうだ。ここは俺たち二人で仲良く同居しているんだ。女々しいストーカーなんてお呼びじゃないんだ。とっとと廃病院に帰れ!
――なんだと、こら。俺とミキの仲を裂いているのはおまえだろう。こんなにも愛し合っているのに。こいつ、呪い殺してやろうか。
――うるさい!
――うるさい!
俺とミキで同時に叫ぶと、眼に見えないのにそいつがひるんだことが俺にもわかった。
ミキが言った。
――まさと、こいつひるんだわよ。
――ああ、そうみたいだな。
――もう一度二人で力を合わせましょ。
――力を合わせるって?
――幽霊なんて精神とか気の塊なんだから。二人で力を合わせてそれこそ気合、気迫、気持ちでこいつを追い出すのよ。
――二人で力を合わせて。
――そうよ。二人の絆を見せてやるのよ。
――そうだな。それじゃあやるぞ。出て行け!
――出て行け!
――うっ。
――まさと、もう一度よ。出て行け!
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