第8話

その日のテストは、あの幽霊の言ったとおりの出題となった。


テストが始まった途端、教室のあちこちから小さなため息や呟きが聞こえてきた。


そこに山を張ったやつはほとんどいないだろう。


俺も山を張ろうとしたときに真っ先に候補から外したところだ。


おそらく教授もそれを見越して、テストの範囲をここに集中させたのだ。


この講義の成績は点数の順位で決められる。


俺はこの時点でかなり有利になれたわけだ。


鼻歌まじりでアパートに帰ると、早速言葉が頭に入って来た。


――お帰り。わたしの言ったとおりでしょ。


――ああ、すごく助かった。ありがとう。


――これで少しは信用してくれる?


――うん。でもなんで俺について来たんだ。廃病院にいたんだろう?


――気がつくとあそこにいたの。自分が死んでいることはわかったんだけど、なんであそこにいたのかは全然わからないの。あそこで死んだわけでもないのに。かといってどこにも行くあてがなくて、ずっとあそこにいたのよ。


――それじゃあなんで俺について来たんだ?


――優しそうだったから。


――優しそう?


それは意外だった。


俺は怖そうとかやばそうと言ったタイプの人間ではないが、優しそうと言われたことも、これまで一度もなかったからだ。


でもこの幽霊は俺のことを優しそうと言う。


まあ感じ方は人それぞれなんだろうが。

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