第3話

もとは総合病院だという、これぞまさしく心霊スポットというところだ。


見た目もそんな感じで、俺は一目見たとき、その中にわんさか幽霊がいるように見えたものだ。


気は進まなかったが、河本に促されて中に入ることになった。


入ってしばらく歩いたところで河本が言った。


「おい、おまえ怖がっているんじゃないのか」


「なに言ってる。怖いわけがあるか」


河本がにやり笑った。


「そう言うならここからは別行動にしようぜ。屋上にやんちゃなやつが書いた落書きがあるそうだ。それがなんて書いてあるか見てくるんだ」


そう言うと河本は廊下の先を指差した。


「しばらく行くと、また階段がある。俺はそっちから行くから、おまえは目の前の階段から行く。それでいいだろう」


ここで断ったら、大学を卒業するまでバカにされ続けるだろう。


俺は言った。


「いいだろう」


「話は決まったな。それじゃ行くぞ」


河本はそう言うとすたすたと歩き出した。


俺は仕方なく目の前の階段を登った。


ここは四階建てなので屋上はその上ということになる。


正直怖かった。


病院だったという大きくて無機質な空間。


それに昼間だというのに妙に薄暗いし、湿っぽくておまけに埃っぽい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る