2.夜は退屈だ。

 何もすることがないから、夜は退屈だ。仕事に行ったお母さんとお父さんはまだ帰って来ないし、友達もみんな寝てしまったから遊ぶことも出来ない。でも今日という日とお別れしたくない。だからこんな日はこっそりとお散歩に出かける。本当は家でおりこうさんにしておくように言われているのだけれど、じゃあこの退屈はどうすれば良いって言うの?

 お気に入りのカーディガンを羽織り、誰もいない家に行ってきますを言ってからなるべく音をたてずに外へ出るのが好きだ。

 家を出てすぐ目の前には、だいぶ前に舗装された道路や大昔に潰れてしまったちいさなお店の跡。少し歩けば、友達との遊び場になっている小さな公園もある。さらに歩けば、住宅街や普段のお買い物のお店がある。だから、この町と向こうの栄えた町を隔てる川の方が、家から近い。河川敷まで降りていくと、ぴかぴかと光る町の外側を眺めることが出来る。道路沿いに坂を下り、河川敷でお母さんとお父さんの働く姿を思い浮かべながら、いつまでも光っているその町を眺めるのがお決まりのコースだった。

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