第6章 第3話

第8エリアのメインダンジョンも、第7エリアと同様の3人ギミックが存在する。

しかも今度は、左ルートのスイッチを踏んでいる間だけ右ルートの扉が開く。

右ルートのスイッチは真ん中ルートの扉が開く。

真ん中ルートのスイッチで左ルートの奥の扉が開く。

と、別のルートのスイッチと扉が複雑に絡み合いながら奥に進むという仕掛けだ。

間違ったスイッチを踏むとモンスターが湧いたり、別の場所にテレポートさせられたりと、嫌な仕掛けも満載だ。


実装直後であれば謎解きの要素もあり、さぞ楽しかったのだろうが。

今や調べれば答えが出てくる。


「さてとー、ここから別行動だねー。どう別れる?」

3つのルートに4人パーティー。どこかのルートは2人で進むことになる。

「私は居ないものとして扱って下さって結構ですよ。」


後ろからの声に振り返ると、いつの間にかHoneySwordが一人離れて立っている。

「同行するとは言いましたが、協力しようとは言っていませんし。」


「そうでしょうね。ここで協力的な方が気持ち悪いわ。」

Seregranceも意に介した風はない。

『それじゃ1人ずつ行こうか。ニードも適当に誰かに付いていくといい。ただし、扉を開けて待ってたりはしないからな。』

「ええ、お気になさらずに。」


それを合図に2人と別れ左のルートに進む。

HoneySwordとはパーティーを組んでいる。

ならば攻撃される事も無いし、さして問題も無いだろう。



しばらく進むと、扉とスイッチが見えた。

念の為に後方にも火を灯して明るくしてみるが、HoneySwordの姿は見えない。

Seregranceかドリッピーに着いていったようだ。


『左のスイッチ踏むぞー』

「オッケー。いつでもいいよー。」

ドリッピーから返事がある。


ガコンッ


平らなスイッチの上に立つと、派手な音とともにスイッチが沈み込んだ。

「開いたー!セレさん、ちょっと待っててねー!」

ドリッピーが通ってしまえば、すぐにスイッチを降りてもいいんだろうが…

HoneySwordがドリッピーに着いていっている可能性もある。

目の前の扉が開くまでは、特に何かすることがある訳出もないし…

念のためにスイッチ踏んでおくか。



「セレさーん、スイッチ踏むよー!」

「良いわよー。」


「開いたわ。それじゃ先に進むわね。」

「いってらっしゃーい!」

分かってはいたが、待ち時間が長いな。



「スピ、お待たせ。踏むわよ。」

『分かった。扉の目の前で待ってるよ。』


ゴゴッ


音を立てて目の前の扉が開く。

「スピさん、次は3つあるうちの真ん中のスイッチだからねー。」

『分かった。奥まで行くから少し待って。』


道は一本道らしいので、小走りに奥に進む。

通路を抜けると、少し広い円形の部屋があり、正面と左右に3つのスイッチがある。

『あったあった。真ん中踏むよ。』

「はいはーい、こちらリッピー。いつでもどうぞー!」


ガコンッ


「開いたー!いってきまーす!」



同じような会話を何度か繰り返す。

「えっとねー、次のスピさんの部屋は、敵を倒さなきゃいけないや。

 部屋の中にいる中ボス倒すとスイッチが出てくるから、

 さくっとやっちゃって!」

「どうせニードもそっちにいるんでしょ?たまには働かせたらいいのよ。」


『ん?ニードこっちにいないよ。2人のどっちかに着いていってると思ってたけど。』

「ボクのとこには着いてきてないよ。セレさんのとこ?」

「あら、私のところにも来てないわよ。」

『どっかに置き去りにした?…っと、部屋に着いたな。

 とりあえず中ボス倒してから考えるか。』


**********


ダンジョンに入り3人に着いて進む。

分かれ道に近づいた辺りでそっと離れる。


「さてとー、ここから別行動だねー。どう別れる?」

同行を切り出した目的はもちろんViertenSpielerを間近で観察することだ。


「私は居ないものとして扱って下さって結構ですよ。」

3人が別行動してくれない事には観察もできない。

第8エリアのメインダンジョンは、個別ルートで何度も戦闘がある。

じっくり観察するには好都合だ。


うまく3人が別ルートに進んだところでスキルを発動。身を隠す。

そのままViertenSpielerに追いつき、斜め後ろに着いて歩く。

後は戦闘が始まるまで待つだけだ。



「開いたわ。それじゃ先に進むわね。」

「いってらっしゃーい!」


パーティーチャットが聞こえてくる。仲の良いパーティーだ。



やっと門番部屋までたどり着いた。

尾行はさんざん繰り返し慣れてはいるが、いくら慣れたところで

一言も喋らず待つというのが暇であることには変わりない。

今回はパーティーに参加していて、賑やかな会話が聞こえるだけでも

随分とマシだった。


『ん?ニードこっちにいないよ。2人のどっちかに着いていってると思ってたけど。』

「ボクのとこには着いてきてないよ。セレさんのとこ?」

「あら、私のところにも来てないわよ。」

『どっかに置き去りにした?…っと、部屋に着いたな。

 とりあえず中ボス倒してから考えるか。』


そうだ。私の事など気にせずに思う存分戦ってくれ。

第7エリアの時は、まさかここまでの強さだとは思っていなかったので

遠目からの監視だったのだ。

今後は間近でじっくりと見せてもらおう。

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