第6章 第4話

スイッチ踏むと中ボスが出てくるんだっけ。

さっさと片付けよう。


ガコンッ


グオォォォォッ!


『おー、懐かしい。初心者エリア以来のサイクロプスだ。』


叫び声が終わると同時に足を殴りつける。

グオォォォ…


「懐かしいでしょー。攻撃パターンは変わってるけどね。」

『えっ、そうなの?しまった、もう倒しちゃったわ。どうせなら見ればよかったな。』

「スピさんならそうなるよね。もう笑うしかないや。

 サイクロプスの新モーションは永遠の謎として、悶々とするといいと思うよ。」

『そこまで気になるもんじゃねー。』


**********


中ボスとはいえ、サイクロプスを一撃か…


第7エリアのスケルトンは、そこまでHPが高くなかった。

最新エリアのプレイヤーであれば、一撃で倒せる者もいるだろう。


だがこのサイクロプスは、今の私でも一撃ではとても倒せない。

これがチートでなければ、スキルの効果か武器の強さということになる。


だが、スキルは発火能力で間違いない。

武器はどう見ても初心者のメイス。

一体どういうことだ。


**********


「次は雑魚がわらわら出てくるよー。

 それで戦闘は終わり!」

『おっけー。それじゃ、ここもさっさと終わらせるよ。』


ガコンッ


スイッチを踏んだ瞬間、取り囲むように6体のモンスターが出現する。

目についたモンスターから順番に片付ける。


特にガードされたり、躱されたりすることもなく、

サクサクと片付いた。


「見事なものですね。」

『おわっ!』


真横で声が聞こえ、思わず振り向く。

いつの間にかHoneySwordが真横に立っていた。


**********


間近でじっくりと見て分かった事がある。

この観察は意味がない。


ViertenSpielerが強すぎるのだ。

これはもう規格外だ。


仮に武器が異常に強いとしよう。

敵が一撃で倒せることはこれで説明できる。


だが、あの動きはやはりマネができない。

硬直が解ける瞬間に最速で次の行動を起こしたとしても

ああはならない。

正直、ErsterSpieler様でもマネできないのではないだろうか。



はっ、私は何を考えているんだ。

ErsterSpieler様が他人をマネるなど。

あの方は最強なのだ。他人を追う必要などない。


だが、ViertenSpielerなら良い勝負をするのではないかと

頭のどこかによぎるものがあるのも否定できない。


万が一、この先ErsterSpieler様と敵対する関係になるなら

間違いなく最大の脅威となって立ちはだかるだろう。

ならば、この強さの理由は誰かが理解しておかなければいけない。

見て分からないのならば、聞き出すまで。



だが、エアスタ様のために聞き出したいという思いの端に

わずかに違う思いも混ざる。

純粋にこの男のことを知ってみたい。

そして、私のことを分からせたい。

なぜかは自分でも分からない。



戦闘が終わった直後のViertenSpielerの傍に立ち、

スキルを解除して声をかける。


「見事なものですね。」

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