第4章 第10話

「多分、小部屋の前に着いたわよ。

 8人くらい部屋の前で待ってるみたい。」

Seregranceからのパーティーチャットにドリッピーが答える。

「門番待ちだねー。小部屋の前に門番が居て、

 倒すと1分間だけ小部屋の扉が開くんだよ。

 かなり強いから、待ってる人たちと協力して倒すといいよー。

 扉が開いてる間なら誰でも入れるから、

 門番が倒されるまで隅っこで見てても良いけど、

 露骨にやっちゃうと小部屋に入ったところで

 PKされちゃうこともあるみたいだねー。」


会話を聞いているうちに、自分の行く先にも扉が見えてきた。

『こっちも小部屋の前に着いたけど、

 プレイヤーは誰も居なくて敵がいるだけだなぁ。』

「スピさんも到着かー。うーん、誰もいないの?

 1人だけで倒すとなると、ボクでも自信無いくらい強いから…

 ボクが手伝いに行こうか?」

『いや、そういうことなら大丈夫。

 普通に倒して部屋に入るだけだよね?』

「う、うん。そうだけど、その門番ほんとに強いからね?

 第7エリアはダンスのサービス1周年のタイミングで

 拡張されたエリアだから、運営がはっちゃけちゃったのか、

 ボスより門番の方が圧倒的に強いっていう

 だいぶ酷い仕様になってるんだよね。

 とは言え、ボスも少人数パーティーだと十分厄介だけどね。」


ドリッピーの説明を聞きながら、ざっと辺りを見回す。

人の姿は見えない。

『command shortcut one end』

+50メイスを構えて、一気に門番に駆け寄り、同体に叩きつける。

2本の腕にそれぞれ武器を持ったスケルトンの様な姿は、一撃で崩れ落ちた。


『門番ってスケルトンだよね。倒したよ。』

「えっ、もう!?スピさん、ほんとどんな装備してるんだよ…

 今倒したのは1段階目で、

 それ倒すと腕の数が増えて蘇るから、油断しないで!

 スピさん、セレさん、その門番は全部で3段階目まであって、

 最終的には腕が6本になるから!

 6本腕の状態だと、敵の攻撃がひっきりなしになるからね!

 集中攻撃されると、ほんとしんどいから気を付けてね!」


ドリッピーの説明が終わるか終わらないかというタイミングで

崩れ落ちた骨がカタカタと音を鳴らして組みあがっていく。

たしかに腕が4本に増えていて、構えている武器も多くなっている。


下手にプレイヤーが来てしまうと全力が出せなくなる。

誰もいないうちにさっさと倒してしまうに限る!と、すぐさま殴りかかる。


ギャインッ


甲高い音が鳴り、スケルトンに当たる手前でメイスが弾かれる。

この感じ前にもあったなぁ…

敵の無敵時間だ。

一瞬待ち、スケルトンが動き始めたところで改めて攻撃する。


ガキンッ


右から振りぬいたメイスは、スケルトンの2本の左手で十字に構えた剣に受け止められる。

『げっ、ちゃんと防御もしてくる相手なのか』

「そうだよっ!わざと武器狙った連続攻撃で、

 武器を弾いてきたりするからねっ!」

『おう…めんどくさいね…』


敵の攻撃を左右に避けて横振りを誘いながら、盾で受けて下段を攻める。

『えー…下段攻撃をジャンプで躱されたんだけど?』

「だから言ったじゃん!強いんだってば!」

『てっきり、単純に防御力が高いとか、

 攻撃力が高いっていう強さなのかと思ってたよ…』


敵の動きが賢いということは、対人戦と同じ感覚でやればいいだろうか。

とは言え、敵の武器の数が多いと多少相性が良かろうが関係なくなりそうだ。

シンプルに強い武器できっちり一撃入れて倒すことを考えよう。


という事で改めて盾を構えて近寄る。

敵の左腕からの攻撃をメイスで弾く。

右腕からの攻撃を盾で受ける。

ここでメイスを横降り、予想通り左腕2本で受け止められ、弾かれる。


ここだ!

弾かれて空いた左腕の防御の隙間目掛けて、さらにもう一度横降りを叩きこむ。

これは神速ではなく、型の熟練度上昇によるキャンセルでも実践できる。


HPや防御力が異常に高いということは無いらしく、

4本腕のスケルトンもカラカラと崩れ落ちた。


『ふーっ、今度こそ2段階目倒したよ。さて、あと1段階か。』

「ほんとに倒してるの?HPも全然減ってないけど…」

『ちゃんと倒してるって。セレはどんな感じ?』

「こっちは、ついさっき門番が湧いたところよ。

 先に待ってたパーティーが前衛で戦ってくれてるわ。

 か弱い女の子だから守ってもらえてるのかしら。」

『・・・』

「・・・」


「ちょっと…何か言いなさいよ…」

『おっと、3段階目が始まるから!ま、また後で!』

「ふーんだっ。苦戦すればいいのに!」


とやり合っていると、カタカタと骨が組みあがり始める。

どうやら3回戦が始まるようだ。

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