第3章 第17話

きっちり最速で繰り出されるSeregranceの攻撃に翻弄されるラインハルト。


取り囲むギャラリーのその奥には、ボス部屋を目指してきたであろうパーティの姿。

ボス部屋前で繰り広げられる戦いを前に、近寄るのをためらっていたのだろう。


[ボスが出現しました]


『セレ。時間切れだよ。

 ボス待ちのパーティーも増えてるし、そろそろ行かないと。』

「あら、ほんとね。じゃぁ、そろそろ終わりにしましょう。

 command shortcut one end」


ラインハルトの目の前で堂々と装備を変更するSeregrance。

「ふ…ざけんな!5秒で殺す!」


キィンッ

「死ねっ!」

キィンッ

「死ねっ!」

キィンッ

キィンッ

「死ねぇぇぇぇぇっ!」

キィンッ


あーあー…

ペナルティで動けないSeregranceに向かって、

狂ったように斬り付けるラインハルト。


キィンッ


「ごめんね。あなたの攻撃、全然痛くないのよ。」

闇雲な大振りで隙だらけのラインハルトに、硬直が解けたSeregranceの攻撃がヒットする。

そのまま倒れるラインハルト。


「もうあなたの固有スキルは無いからね。

 熟練度が足りてないんじゃないかしら?」

幽霊状態のラインハルトに微笑みかけ、くるりと回って歩み去るSeregrance。



「おいおい…スピラーさん。

 あんただけじゃなくて、夫婦揃って化け物かよ。」

シンカーが呆れたように言う。


「あなたがスキル狩りさんね。

 さきほどは彼がお世話になりました。」

隣に並んだSeregranceがニッコリ笑って声をかける。


「でも、レディに向かって化け物は失礼しちゃうわっ!」

「おっと失礼。

 ラインハルトも逆走組で、それなりに強いはずなんだが…

 まるで子ども扱いだったもんでな。」


『さぁ、ボスも復活してるし、そろそろ行こうか。

 シンカー、奥の方で待ってるパーティーもいるし、

 この集団を解散させてくれないかな。』

「あ、でも誰かがあのパーティー相手に対人戦仕掛けるなら、

 私が相手するわよ。」

「いや、勘弁してくれ…

 少なくとも今この場でしかけようなんて奴はいねーよ。」


いつの間にかラインハルトは転送されている。

残った14人に向かってシンカーが言う。

「よし、ラインハルトのケジメについては、また後で話そう。

 ひとまずこの場は退散しようや。」

Seregranceの戦いっぷりを見てざわついていた連中も、その言葉を聞いて引き揚げ始める。


「つえースキル手に入れたら、

 今度は彼女さんともやらせてくれよな。」

リックが背中越しに手を振りながら一緒に引き揚げていく。


「じゃぁな、スピラーさん。

 今後会うことがあるか分かんねーけど、

 エリア攻略するんだろ?頑張ってくれ。」

『あぁ、ありがとう。

 シンカー達も納得が行けば、またエリア進めるんだろう?

 その内会うこともあるだろうから、その時はよろしく。』


そしてシンカーは集団の方へ歩み去る。

俺はSeregranceと並んでボス部屋に歩み入った。

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