第3章 第16話

矢を放つと同時にさらに下がるSeregrance。

そして再び矢をつがえる。


「てめぇぇぇぇっ!」

一瞬の硬直から解けたラインハルトは、Seregrance目掛けて走る。


キィンッ


再びクリティカルヒット。

Seregranceは矢を放つと同時に盾を拾い、音声コマンドで装備を片手剣に切り替えている。


5…4…

2度目の硬直が解けたラインハルトは、Seregranceの装備切り替えを見てすぐさま駆け寄る。

3…2…

もう無駄口は叩かなくなった。

ダメージの大きさで、舐めてかかる相手ではないと直感したんだろう。

1…


0

ガキンッ


ラインハルトの攻撃に、Seregranceの防御が間に合う。

こうなると弓2発のクリティカルヒット分、HP状況はSeregranceの有利に事が運ぶ。


ガキンッ

ガキンッ

ガキンッ


ラインハルトが一方的に攻撃を続けるが、Seregranceは躱したり防いだりと、うまく守り続ける。

片手剣同士なら、防御させた側が若干有利。だが、それは最速での攻撃を続けた場合だ。

はたから見ていると、ラインハルトの攻撃の組み立てはソコソコだが、攻撃速度はまだまだだ。


硬直の見極めは難しい。

硬直中に行動を起こしてしまうと、コンマ数秒だが追加で動けなくなるペナルティがあるし、

硬直より長く待てば、当然その分攻撃は遅くなる。

素振りでは分からないので、ひたすら戦闘を繰り返して身に付けるしかないのだ。


ラインハルトが不用意に出した下段への斬り付けに対して

軽いジャンプで躱し、そのままバックハンドの要領で上段に切り返すSeregrance。

ラインハルトが、しゃがんでかろうじて躱したところで攻守が入れ替わった。


こと、片手剣に関してはSeregranceもかなり研究をしている。

さらに、さっきの弓への装備変更を相手に見せないようにした場面のような発想力もある。

…あれはアリだな…俺も使おう。


おっと、話がそれた。

攻防を見てみると、Seregranceがラインハルトを圧倒し始めている。



対人戦は、攻撃の組み立てがかなり重要だ。

攻撃の種類は武器にもよるが、基本的には9種類。

上から下へまっすぐの振り下ろし、上から下に斜めのラインの切り払い、左右の横薙ぎ

下から上へ斜めの斬り上げ、下から上へまっすぐの振り上げ、手前から奥への突き。

さらに一部を除き、上段、中段、下段が存在する。


これらの攻撃の種類を、状況に応じて選択していくのだが、

繋ぎやすい攻撃と、繋ぎにくい攻撃がある。


振り下ろしから再度振り下ろし、もしくは切り払いに繋げようとすると、

当然自分の武器を再度振り上げないといけないので、攻撃判定が発生しない時間が長い。

同様に右から左への横薙ぎも、再度同じ方向の横薙ぎを繰り出すのは時間がかかる。

しかし、セオリー通りの組み立てでは読まれやすく、ガードされたり弾かれたりすることで、

攻撃の主導権を奪われる事が多くなる。



Seregranceは、そのあたりの組み立てが抜群にうまい。

同じ方向からの横薙ぎを繰り出すために、自分の体ごと一回転させたり、

振り下ろしに前転宙返りを組み込んで、もう一度振り下ろしに繋げたりと、

セオリーに無いパターンの攻撃を繰り出してくる。


1度目の攻撃をガードされてしまうと、その後の行動がキャンセルされ硬直となってしまうので、

相手がガードできる体制なのか見極めも必要になってくるが。

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