第3章 第7話
『じゃ、これは返すよ。さすが後半エリアの武器だ。
強化も十分だし強いね。この辺じゃ敵なしでしょ。』
「それを軽くあしらっておいて、よく言うよ。
あんたこそ敵なしだろ。
普通、強いと思う武器なら返さねーよ。」
「強さもそうだが、その戦績が意味わかんねーぜ…
わざとやってんのか?」
街で落ち合ったシンカーとリックに、槍をトレードしながら言葉を交わす。
「っと、詮索は無しだったな。悪い。」
さっきの戦闘中の怒声が嘘のようにリックが大人しい。
槍を返すにあたり、戦績や戦闘技術等で詮索をしないで欲しいという交換条件を付けた。
特にシンカーは、間に合うはずの無いガードや、装備変更を間近で見ている。
色々と聞きたい事もあるだろうが、聞かれたところで簡単に教えられる話でもない。
そもそも埋め込まれたチップの事など、寝言にもならないだろう。
『あんたらに絡まれたお陰で色々と気付けた事があったからさ。
武器を返すのはそのお礼みたいなもんだ。
でも、次にフィールドで絡まれたら、
あんたら相手なら今度は最初から全力で行くよ。
覚悟しておいてね。』
「絶対勝てないと分かってる相手にには絡まねーよ…つーか
これから絶対勝てないヤツになっていくんだろうがな。」
シンカーは、やはり何か色々と気になる所があるようだ。
「俺は、つえースキル手に入れたら、また挑んでやるからな!」
リックはニヤニヤと言う。なんというか、あれだ。こっちはその気も無いのに、勝手に拳を交えて一方的な友達気分だ。
…そういうノリも嫌いじゃないけどな。
『じゃぁ、俺はこれでログアウトするから。』
「あっ、待ってくれ。」
シンカーが慌てて声をかけてくる。
「別に詮索しようだとかは考えてねーけどよ…
あの…フレカ交換してくれないか!
フ、フレンドの枠がいっぱいになったら、
消してもらってかまわねーから!」
『お、おう?』
「なんつーか…あんた
この先きっと一気にのし上がるんだと思うんだよ。
有名人になる前に…その…
サインを貰っておこう的な」
さっきの戦闘中の鋭い目線はどこへやら、若干気恥ずかしそうに小声で呟く。
『…ははっ、そりゃ嬉しいな。
これでまた何か騙されてるとしても、
全力で返り討ちにしてみせるよ。』
「いやもう勘弁してくれよ…本当にそんなんじゃねーって。」
初めて本気で対人戦をやり合った相手だし、名前を憶えておくのも悪くない。
第9エリアでレア武器を入手してるくらいには、やり込んでるプレイヤーだ。
今後、何かあった時にフレンドチャット出来る相手は、居ないより居た方が良いだろう
という打算もあった。
結局シンカー、リックとフレカを交換してからログアウトとなった。
『小夜香。早速フィールドでプレイヤーに絡まれて
対人戦やってきたよ。』
「あらあら。極力不要な対人戦は避けて進むって言ってたのに。
朝令暮改ってやつ?」
『違う違う。夜になって不用意に発火能力で灯りを付けたら、
スキル狩りに遭遇したんだってば。』
「スキル狩り?」
『初心者エリア卒業したての初心者をPKして、
スキル奪取を狙ってるプレイヤーのこと。』
「なるほど。頭いいわね。」
『発火で火を付けちゃうと一目瞭然だからなぁ。
今後は不用意に使わないようにしないと。
でも、そのおかげで★★★★★の効果が分かったよ。』
「あら、良かったじゃない。
慌ててないってことは、対人戦でもちゃんと勝ったんでしょ?
流石、ダンス唯一のダブルスキル所有者。
…で、どんな効果だったの?」
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