第3章 第8話

『硬直が無くなる。』

「硬直ってどの?」

『多分全部。』


「…え?攻撃とかガードした時の硬直全部!?」

『装備切り替え時の硬直も。』

「……」

『……』

しばらくの無言。


「めんどくさいわね…」

たまに顔を覗かせる悪小夜香。口を開いたと思ったら めんどくさい ですよ。


『その感想は酷くないっ!?』

「だって、今までのメモまとめてきたの私なんだもんっ!

 今までの武器ごとの硬直時間だとか、

 有利不利のダイアグラムだとか、

 ぜーんぶ調べ直し、まとめ直しだよっ!?

 めんどくさいじゃない…」

だいぶ先のことまで考えてくれた上での台詞だった…悪小夜香は撤回!


『あ、そういうことね。ごめん。

 でも、全部を調べ直す必要は無いかも。』

「あら、そうなの?大丈夫?」

『むしろ今までのメモから、有効な情報の集め直しになるかな?

 理由は…見た方が早いと思う。』


装備の強化も一段落したので、小夜香はSeregranceでログインする。

『じゃぁ、模擬戦で見てもらおうかな。』


各エリアには必ず闘技場が存在する。

フィールドと違い、安全地帯から観戦ができる公開戦闘ができるのだが、

その他にフレンド同士での模擬戦も可能だ。

模擬戦であれば勝敗が戦績に影響しないので、実演して見せるには都合が良い。


観戦者無しの非公開モードで模擬戦を開始する。

『とりあえず動きを見せたいだけだから、

 未強化の初心者武器を使うよ。

 どの装備でも良いから攻撃してみて。』

自分は今後のメインになりそうなメイスと盾を構える。

Seregranceは使い慣れた片手剣と盾だ。


「じゃぁ行くわよ!」

上段からの斬撃が飛んでくる。

盾で受け止め、こちらも横薙ぎを繰り出す。

Seregranceも盾で受け止める、と同時に胴の中心へ繰り出される突き。

さすがに躱せないので、これも盾で受ける。

突き出された剣を、メイスで跳ね上げる。

これに反応して飛びのくSeregrance。


即座に槍に持ち替え足元に突き。

「きゃっ」

さらに飛びのくSeregrance。


今度は弓に持ち替え矢を引き絞り、放つ。

正面に放った矢は簡単に受け止められ、大きく離れた距離を詰め寄って来る。

そこに合わせて大剣に持ち替え、上段から思い切り振り下ろす。

「あっ」


振り下ろしのモーションに入ってしまえば、大剣の攻撃は片手剣では止められない。

かろうじて盾で受け止めるSeregrance。そのまま押しつぶされ片膝をつく。

恐らく若干ダメージも入っているはずだ。


とは言え、大剣は硬直が長い。通常なら若干不利ではあるものの反撃の目もあるが…

今の俺には硬直は関係ない。即座に再度大剣を振り上げ、盾目掛けて振り下ろす。

「えっ!?」


ガキンッ

ガキンッ

ガキンッ

あり得ない速さで、何度も大剣を叩きつける。


ギャインッ

5度目の振り下ろしを弾き返された。

「もーっ!なにそれっ!」

弾かれると同時に一旦距離を取る。


『分かって無いと、多分これだけで削り倒せるよね。』

「削り倒せるよね、じゃないわよっ!

 分かってても、ちょっとイラッとしたわよっ!」

『ごめんごめん。少しだけ調子に乗りました。

 なんならストレス発散に倒してくれてもいいけ』

「そーするっ!」


言うや否やSeregranceが斬りつけてくる。

…あ、ガードしたらやばい。

本能がそう言っている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る