第1章 第12話

一体どういうことだろう。

前回、間違いなく[ログアウト]が選択できることを確認しているし、

何よりログアウト操作をしてゲームから脱出している。


…毎回、何かの条件をクリアしないとログアウト出来ないのか?

さっさとログアウトしたい。とりあえずもう一度前回と同じNPCに話しかけてみるか。


そして30分程かけてNPCと話して周ったが、[ログアウト]は半透明のまま変化が無い。

やはりNPCとの会話がフラグでは無かった事を理解した。

どうしたものか…前回ログアウト出来るようになるまでにやった事といえば

NPCと会話しただけなんだけどな…

どうしたものか悩んでいると、目の前にウィンドウが表示された。


[ドリッピーさんから会話に招待されています。参加しますか?]

[はい][いいえ]


[はい]を選択すると

「スピさん見っけー!」

どこからともなくドリッピーの声が聞こえてきた。

「あ、これフレンドチャットね!

 近くに居なくても会話できるんだよ。

 ところでさっき居なくなってたみたいだけど、

 ログアウトできたんだよね?」

『…えーと…このまま喋ったら聞こえるんですか?』

「うん、聞こえてるよー!」

『さっきは、あれから街中のNPCと会話しまくってたら、

 いつの間にかログアウトが選べるようになっていて、

 そのままログアウトできたんですが、今は』

「あ、やっぱりそうなんだ。」

『やっぱり?』

「うん、問い合わせしてみたらね。

 イベントの時に使うような特殊なコントローラだと

 ログインしてから3時間はログアウトできないように

 制限がかかってるものがあるんだって。

 スピさん。

 どっかのゲームイベントで初体験してるとかじゃない?

 会場で説明忘れられたままゲーム始めちゃって、

 ログアウトできないー!

 って問い合わせが結構多いんだってー。」

『…そうだったんですね。わざわざありがとうございました。』

「いーよー。

 どっちみちスピさんが先にログアウトできちゃってたし!

 アハハハ!

 まだイベントの続きなのかな?

 どう?ダンス面白い?

 続けるなら教えてね!

 2人じゃないと上げられない技術もあるから、

 一緒にやろーねー!」


3時間…初回は本当のチュートリアルだからよく分からないが、

確かに2回目は3時間くらい経過していたはずだ。

ということは、今回も3時間後にログアウトできるようになるってことか?

くそ…歩道でぶっ倒れたまま3時間身動きが取れないのか?

車に轢かれて死ぬ、なんてことはないと思うが…


他の理由の可能性もある。とりあえず3時間を意識しながら、

他にログアウトの条件も探そう。

NPCとの会話は違った。となると、前回やっていたのは熟練度上げか。


自分ではどうにもできない事態にあって、焦る気持ちもあるが、冷静に客観視して抑え込む。

焦りのまま行動してもロクなことにならないからな。

とりあえず前回ログアウトできるようになった時の事は、やるだけやってみよう。

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