第1章 第13話
「…さーん…スピさーん!スーピーさーーん!」
『あ、すいません。考え事してました。』
「トイレでも行き忘れた?それともお腹すいた?
イベントの続きだったら、
まだあと3時間はログアウトできないってことだよね。」
『え、ええ。そうなんですよ。
でもトイレも食事も大丈夫です。』
「アハハハ、それなら良かったー。
ねぇねぇ、この後何か予定あるの?」
『いえ、特に無いです。
また熟練度上げようかと思ってました。』
「お、それじゃーさ。
2人じゃないと上げられない技術、一緒に上げちゃわない?」
カカシ道場に移動すると、中でドリッピーがカカシ相手に武器を振るっていた。
「お、来た来た!スピさん、やっほーい!」
『お待たせしました。』
「じゃぁ行こうか!」
『あれ、ここで上げるんじゃないんですね。
どこに行くんですか?』
会話を続けながら、ドリッピーの後を付いていく。
「ここだとねー。
熟練度の上限値が5までに制限されちゃってるからね。
ボクも最近見つけたんだけど、街から数歩外に出ると、
セーフティーゾーンなのに、一部の技術は制限を受けずに
熟練度が上げられるところがあるんだよ。
そこで上げられる技術っていうのも、
このゲームでかなり重要な要素だと思う。
ほんとは人に広めたくない情報なんだけどさー。
2人でやらないと、ほとんど上がらない技術なんだよねー。」
『なるほど。
ガチ初心者で続けるかどうかも分からない俺は最適ですね。』
笑いながら言うと、ドリッピーも苦笑しながら答える。
「正直それもあるよ。
だから続けても続けなくても、他の人に教えないでね?」
街の外に出る。
「こっからゆっくり、まっすぐ歩いてみて。」
ゆっくりと歩いてみる。
10歩も歩くと、目の前にメッセージが表示された。
[初心者のフィールド (ノーマルゾーン)]
「ここからがノーマルゾーンね。
今のスピさんだと分からないかもしれないけど、
モンスターやプレイヤーの攻撃されると、
ログアウトメニューが30秒くらい半透明になって
ログアウトして逃げるってことが出来なくなるの。
ちなみに、30秒間攻撃避け続けたり、
逃げ続けたりすればログアウトできるよ。
じゃぁ、今度はそこから街の方に戻ってみて。」
言われた通り街に戻る。
3歩歩いたところでメッセージが表示された。
[初心者の街 (セーフティーゾーン)]
『ここからが街ってことですね。』
「そうそう。今セーフティーゾーンにいるでしょ。
じゃぁ、その状態で1歩半下がって。」
一歩半後ろに下がる。
「今いるところが、セーフティーゾーンなのに街の外っていう、
特殊なエリアね。
街を取り囲むようにぐるっと存在してるんだよ。
ということで、人目につかないように街の裏側に移動しまーす。」
街の入口から遠く、ダンジョンもモンスターも無い方面で、ほぼ人は来ない
というエリアに移動し、再び特殊なエリアを探して立ち止まる。
「じゃ、こっからが本番ね。まずパーティーを組みまーす。」
[ドリッピーさんからパーティーに招待されています。参加しますか?]
[はい][いいえ]
[はい]を触ると
「パーティーに参加しましたね。おめでとうございます。」
いつもの音声が流れてきて、パーティーの説明が始まる。
パーティーを組むと、パーティーメンバーのHPの割合が見えるようになること。
アイテムを使う相手に選べるようになること。
アイテム入手時は、直接入手ではなくパーティー共通のアイテムボックスに一度保管されること。
特殊な物を除き、共通ボックスからでも任意のタイミングでアイテムが使用可能であること。
共通ボックス内のアイテムは、パーティー解散時に特殊な計算に基づいて分配されること。
『すみません、チュートリアルの説明聞いてました。』
「大丈夫。ボクもチュートリアルメッセージ流れてたから。
アハハ。
じゃ、続きやろっか。
武器は片手剣だったよね。盾と一緒に装備しちゃって。
…装備できたね。
じゃぁ、お互いに斬りあうんだけど、
タイミングを合わせて武器同士を打ち合わせたり、
お互いに盾で受けたりするよ。
武器、盾、武器、盾の順番でやってみよう。
ゆっくりでいいからね。」
そう言って、ドリッピーが正面に来て構える。
「じゃぁ行くよー、まずは武器から。」
ガキンッ
自分の剣が、ドリッピーの剣を弾く。
[パリィの熟練度が上昇:0.00 → 0.04]
「片方の攻撃が遅いと、
遅い方の攻撃がパリィ扱いになっちゃうから、
剣を振る速度も合わせないといけないんだよねー。
何回かやってるとタイミング合ってくると思うから、続けよ。
次はお互いの剣をお互いの盾で受けるよ。」
ガキンッ
「次、剣同士ー。」
さっきのドリッピーの攻撃速度を思い出しながら剣をぶつける。
ガキンッ
「お、いい感じ!次は盾ね。」
ガキンッ
[型の熟練度が上昇:0.00 → 0.04]
「上がった上がった。次は剣ね。」
ガキンッ
「続けながら話するよ。盾。」
ガキンッ
「今、型の熟練度が上がったでしょ。
滅多に上がらない熟練度でさ。
いまいち用途が良く分かってなかったんだけど、
最近の検証ですごい重要な技術っぽいことが分かってきてね。
ひとまず5まで上げると分かるようになるはずだから、
百聞は一見に如かず、で実践しちゃおう。」
打ち合いに慣れてくると、少しづつスピードを上げていき、
30分もする頃には型の熟練度が5に到達した。
「上がったー!じゃぁ、効果のほどの実践だー。
スピさん、ちょっと盾構えててくれない?」
『分かりました。こんな感じかな。』
「お、いいね。足で踏ん張ると弱防御態勢になって、
攻撃ガード時の硬直が無くなるよ。」
『硬直?』
「これから実践するのも同じ要素なんだけどさ。
このゲームって格闘ゲームの開発メーカーが作っててね。
攻撃とか防御とかの行動には硬直があったり、
武器同士の有利不利があったりするんだよね。」
そしてドリッピーがすごい勢いでしゃべり始める。
「例えば、大剣と片手剣だとプレーヤーの強さが同じ場合、
大剣が有利って言われてるの。
大剣の攻撃は、片手剣側が通常態勢で防御しても
必ず硬直が発生しちゃって、次の行動が遅くなるし、
大剣側は攻撃態勢に入ってしまうと、
クリティカルを食らわない限り
発生した攻撃モーションを止められる事が無いのね。
パリィで弾けば回避は可能だけど、
片手剣だと大剣相手の場合はパリィ成功率が低くって。
大剣を盾でパリィしようにも聞き手補正がかからないから、
逆に弾かれちゃって大ダメージになることが多い。
一方、片手剣側はクリティカルを狙うためには
近距離戦を挑まなきゃいけない。
盾で大剣の攻撃をガードしても削らるHPが大きいし、
片手剣の攻撃を大剣でガードされたり、
下手に弾かれたりすると武器まで吹っ飛ばされちゃうし。
戦い方が難しいんだよ。」
『…は、はぁ。頭が追い付いていきませんでした。
とりあえず、攻撃や防御に硬直があるということと、
武器同士の相性で有利不利があるというのは分かりました。』
「あ、ごめん。熱くなって喋っちゃった。
今日始めたばっかだもんねー。
今の話は、ダンス続けていくとそのうち分かるからさ。
興味持ったらまた聞いてね。」
パタパタと手を振りながら、慌てて謝るドリッピー。
『ところで。
これから実践するのはどういった内容なんでしたっけ。』
「あ、そうだった。そこが肝心なんだった。」
またもパタパタと手を振りながら続ける。
「今から試すのはキャンセルです!」
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