第1章 第11話

急に色々な情報が流れ込んできた整理が追い付かない。

帰り道をゆっくりと歩きながら状況の整理に努めようとするが、

たまに襲う足の痛みに思考が途切れる。


なまじゲームの世界で自由に歩き回れる感覚を得てしまったために、

余計な感情も入り込んできて、ますます考えがまとまらなくなってしまう。


とにかく、自分の身体に何かしらのチップのような物が

埋め込まれているということは間違いないのだろう。

誰が何の目的で埋め込んだかは分からないが、

あのゲームをプレイさせるために仕込んだ、ということなのだろうか。


非合法な技術の検証でもしたいのならば分からなくは無い。

だが、それなら本人ごと拘束するんじゃないだろうか。

ましてや、既に運営されて1年以上経ったゲームに放り込まれている。

仮に開発や運営に関わる会社が首謀者だとしたら、手がかりどころの騒ぎではない。

ともあれ、まずは帰ったら運営会社には問い合わせしないとな。



小夜香にも事情を伝えないといけないだろう…

以前のリハビリの時には、あまりにも訳が分からず話をしていないままだ。

ただでさえ心配させてしまっているのに…追い打ちみたいな状況だな…

病院の日は必ず家に来てくれる。その時に話をしよう。


よし!重い話もあるが、とにかくやれる事からやっていかないとな!

俯いていてもしょうがない!

カラ元気を振り絞り顔を上げる。


「おかえりなさい!さぁ、今日も冒険を楽しんで下さいね!」


『…1日2回ってこともあるのかよ』

目の前には石畳が広がっていた。


この状況も、3度目ともなると若干冷静になる。

帰り道の最中だったよな。どこにいても容赦なくログインさせられるってことか。

あんな歩道のど真ん中で倒れてるとか勘弁して欲しい。

ともあれ、さっさとログアウトして、まずは家に帰りつこう。

システムメニューを開き、そのまま手が固まる。


[ログアウト]は半透明になっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る