第1章 第4話

「それでは盾を装備しましょう。

 すでにプレゼントされていますので、

 先ほどと同様に装備メニューを開き、盾を装備してください。

 両手持ちの武器を装備している場合は、

 武器の装備を解除してから盾を装備してくださいね。」


盾を装備しながらカカシに近寄ると、今度のカカシはメイスを持っていた。

「それでは攻撃を盾で受け止めてください。」

カカシはゆっくりとメイスを振り上げ、ゆっくりと振り下ろしてきた。

盾で受け止めようと思ったが、ふとイタズラ心が芽生え

持っていた剣でカカシの頭を攻撃してみた。


ガキンッ


『うおっとぉ』

想像していた音とは違う、鈍い音が響き剣を持つ手が吹っ飛ばされた。

その勢いに引っ張られ、身体ごと派手に転んでしまう。

…カカシが振り下ろそうとしてたメイスで、剣をぶん殴られたのだ。

『びっくりしたな…イタズラ禁止ってことか』


そう言いつつも、一度芽生えたイタズラ心はなかなか消えない。

もう一度、今度は胴体を攻撃してみる。


ガキンッ


横薙ぎにいった剣を、上から叩き落された。

[弾かれ上手の熟練度が上昇:0.00 → 0.04]

『上手も何も、武器落としてるんだけどな?

 熟練度が上がると落とさなくなるってことかね。』

拾いあげた瞬間、手に持ったはずの剣が消えた。


『あれ?』

「…」

いつも何かあればすぐ声が聞こえてくるのに、今回は聞こえてこない。

『イレギュラーな行動はサポートしてくれないってことか。』

辺りを見回しても特に剣は見当たらない。

『うーん…イタズラが過ぎたから没収されたかな?』

しょうがない。真面目に盾で防御するか。


ガキンッ

ガキンッ

ガキンッ


上から横から斜めから。

色んな角度から飛んでくるメイスを盾で受ける。

[盾の熟練度が上昇:0.00 → 0.04]

[盾の熟練度が上昇:0.04 → 0.08]

盾の熟練度が0.5に上がるまで防御を続けた。


「それでは、次はアイテムを入手して使ってみましょう。」


『おーい、武器は返してくれないのかー』

しばらく待つと


「それでは、次はアイテムを入手して使ってみましょう。」


『返してくれないのかよっ!』

再びカカシに向き合う。

ふと、カカシの武器に目が行った。

『…なんだ、ここに武器があるじゃないか』


相変わらず、ゆっくりと武器を振り上げては振り下ろし、

ゆっくりと右に開いては左に薙ぐといった行動を繰り返している。

振り上げた瞬間を狙って武器に飛びついた。


ゴンッ


武器に飛びついたまま、振り下ろされ地面に叩きけられた。

[受け身の熟練度が上昇:0.00 → 0.04]

『だから、受け身も取れてねーよっ!皮肉か!』


次は振り下ろした瞬間を狙う。

ズリズリズリズリ…

右に開いていくメイスに引きずられる。

『なん、だ、これ…全っ然、奪え、ないぞ』

そしてメイスと共に左に振り回され

そのまますっ飛ばされる。

[受け身の熟練度が上昇:0.04 → 0.08]


「それでは、次はアイテムを入手して使ってみましょう。」

『はいはい、悪かったよ…こいつは奪えないんだな。』

武器が無くなった救済はどこかであるんだろうと考え、

先に進んでみることにした。

奥の方に小さく見えている箱。あれにアイテムが入ってるってことなんだろう。


「アイテムはこのような宝箱に入っている他にも、

 モンスターを倒すことで手に入れたり、お店から購入したり、

 他のプレイヤーから入手することもできます」

宝箱というには粗末な木箱だが、開けてみた。


『ド定番のポーションってやつだろうな』

中には薄緑色の液体が入った試験管のような小瓶。

拾い上げてみる。その瞬間、小瓶が消えた。

『あれっ!?』

「おめでとうございます。ポーションを入手しましたね」

よく見ると視界の隅のシステムメッセージに

[ポーションを手に入れました]

と表示されていた。


「それではアイテムメニューを開き、

 先ほど手に入れたポーションを使ってみましょう」

『もしかして…』

武器メニューを開いてみると、[初心者の片手剣]と表示があった。

なるほど。さっきのは没収されたんじゃなくて、落とした武器を入手してた訳だ。

ってことは、武器を弾かれると装備からやり直しになるのか。めんどくさいな。


「それではアイテムメニューを開き、

 先ほど手に入れたポーションを使ってみましょう」

まずは、片手剣を装備しなおす。右手に現れる武器。

『さっき手に入れたばっかの癖に、

 無くすと不安になるってのもなんだかなー。』

そしてアイテムメニューを見てみると、やはりポーションと表示されていた。

表示に触れると、メッセージと共に選択肢が表示された。

[ポーションを使用します]


[はい][いいえ]


[はい]に触れると、そろそろ聞きなれてきた シュワンッ という音。

そして視界の右上に突如現れたゲージのようなもの。

左半分は赤く塗られ右半分は半透明の状態だったが、右端まで赤く染まる。

要はHPゲージってことか。

「ポーションを使いヒットポイントが回復しましたね。

 右上に表示されたのは、現在の残りHPを割合で示してくれるゲージですよ。」



「お疲れ様でした。チュートリアルはここまでです。

 次にログインすると、あなたは初心者エリアの一員です。

 共に戦う仲間や、ライバルを見つけ

 Dance with The Weaponを世界を存分に冒険してください!」

相変わらずどこから聞こえて来てるのか分からない声と共に、景色が遠のいていく。

一面真っ白だというのに、遠のく景色が分かるというのも変な感じだ。


そして

薄緑の天井を見上げていた。

『…は?』

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