第五話:工作と諜報
「話の途中みたいだが、聞きたいことがある! 良いか?」と声を上げる
これに「何だ?」と
「さっきの『撞岩猛己』って誰?」という返答が返ってきた。
どうやら、
こんな
結局、貴狼が「ふう……」と小さくため息をついてしまうものの、鋒陰に――
「貴殿も――奴の名だけは聞いたことがあろう?」と猛己について語り始める。
「逆を言えば、聞いたことしかないぞ。
「
氏が『
元々は『
「貴兄の話を聞く限りだと、とーっても強そうな奴だな!」
「ああ、しかも規格外にな! 数年前の『救国政府』の決起に奴が加わっていなかったら、僅か数日で楽に鎮圧できたものを……。奴の筋力が知力を上回るとは思わなんだ……」
この貴狼の忌々しげな発言をきっかけに、
「何しろ、大きさが馬二頭分の猪を、一発の
そして、
「すっごい奴なんだな~!」と鋒陰は思わず感嘆の声を漏らすが、どこか乾いている。
きっと、『猛己』という者の圧倒的な力に実感が持てないのだろう。
あるいは、皆が言うほど大したことはないと考えているのか……。
そんな
そして、貴狼も鋒陰の
「宰相殿下! 猛己は、
既に
そのタイミングを見極めるために貴狼は、月清を通じて敵情の最終確認を行う。
これに月清は――こんな
――最初から無用な者を連れてくるはずがない! と思って話を始める。
「はい、閣下!
「――すると、
「猛己の長男である
なお猛己の次男である
ここまでの月清の報告を聴いた貴狼は「はははははっ!」と大笑いして――
「やはりか……! しかも、ここまでとはな……!」と無表情に述べてみせる。
「……」
貴狼の表情の急変に、何も言えなくなるほどの不気味さを感じた室内の一同。
そして鋒陰だけが「貴兄はこうなることを予測しておったのか?」と反応する。
すると、貴狼が得意気にニヤリと口元を緩めて――
「ふっ! 何しろ猛己が――あの忌々しい『佞邪救国政府』という賊共を割ってくれるように仕向けたのは――この俺よ!」と話し始める。その親指で己自信を指して……。
「でも――『畔河政権』とやらの首領の名前って訊く必要あったのか、貴兄?」
「確認のためだ、貴殿! 奴以外にも、賊共を割ってくれそうな奴がいなかった訳じゃない。
とはいえ、準備や訓練の関係上、猛己の挙兵はもう少し先になると踏んでいたのだがな。
まぁ、奴が今挙兵するにしないにしろ、今日の軍議は予定通り開くつもりだった!
既に必要な準備は済んでいる。後は
実は……貴狼は摂政に任じられて以降、京賀国が誇る諜報機関や個人的な密偵を活用して、佞邪救国政府に限らず、他の諸邦への工作活動や諸外国への諜報活動を続けている。
例えば、他の国が本邦(京賀国)に攻め込まないように、その国の首脳部に対して別の国を攻めるように仕向けたり、同国の地方の有力者に反乱を起こすように
また、追加の例としてはその国の反乱勢力への支援も挙げられる。
貴狼が今日までに何をしてきたかを、直感で正解に辿り着いた鋒陰は――
「
ところが、貴狼は自分がしてきた
「しかし、
「何で貴兄は、そう思ったのだ?」と鋒陰が
「詳しいことは後ほど話すが、長男の『傍矛』という奴は“へたれ”でな。
逆境には絶対に耐えられず、戦に必要な“勇気”があるかさえ怪しい男だ!
その上、政治や兵法に関する学問にも
続いて時狼も「絶対に
この断言に貴狼も「そうだな。そうだったな」と呟く始末。
これに陽玄が「そんなに相手を低く評して大丈夫か?」と心配するが……。
「そうは言われましても、そのせいで傍矛は
この貴狼の発言に、陽玄は――何だか、
何しろ、自分自身に“一族の中で有能な者”という自信がないから……。
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