第2話 デスゲーム開始
私が目を覚ますと学校の教室のような部屋にいた。ここは何処だろう。私が辺りをキョロキョロと見回しても私以外の誰もここにいない。
私はふと左手の甲に目をやるとそこには数字の3が刻まれていた。この数字は一体何なんだろう。
とにかく、この教室から出よう。何だか気味が悪い。それに早く人に会いたかった。十二人のテストプレイヤーの誰でもいい。とにかく、見知った顔に会いたかった。
私が教室から飛び出すと、今度はショッピングモールのようなところに移動した。後ろを振り返ってみるとさっきまで私がいた教室は消えていて、私の後ろには何もない空間が広がっている。
一体何が起きたの? 私瞬間移動したの? え? どういうこと?
「おーい!」
男性の声が聞こえた。その声のする方向を見ていると、テストプレイヤーの中にいた逆立った茶髪の男性がいた。
逆立った茶髪が印象的で瞳の色は黒。体型は標準体型で細くも太くもない。服装はホスト風の格好をしている。顔立ちは少し幼いかなと思う。年上の女性に好かれそうなタイプだ。
「キミはあの控室にいた子だよね」
「はい。私の名前は吉行 ユリと言います。よろしくお願いします」
私はペコリと頭を下げた。この訳の分からない状況をとにかく切り抜けたかった。そのためにはこの人と協力をしなければならない。見た目はチャラそうだけど、きっといい人だろう。そう信じたい。
「俺の名前は
見た目通りやっぱりホストだったか。確かに年上の女性に甘えるのが得意そうな顔をしている。完全に偏見だけど何人もの女性を食い物にしてきたんだろうな。
「まあ、とにかくヨロシク。この状況じゃ協力した方がいいもんな。ったく、報酬に釣られてテストプレイなんて引き受けた俺がバカだったぜ」
聖武さんが私に手を差し出す。私もそれに応えて握手をする。男の人の手って感じで何だかちょっとドキドキする。
「きひひ……お嬢ちゃん。そいつと組まない方がいいぜ。そいつは肝心な時に裏切るやつだからナ」
小柄な茶髪の男性が現れて私に忠告をしてきた。声も甲高くてまるで中学生みたいだけど、きっと私より年上だよね? お嬢ちゃんとか言ってきてるし。
「何だお前は……」
「俺の名前は
そう言うと加賀美さんは一人でどっかに行ってしまった。殺すかもしれない? 一体何なんだろう。冗談かな?
「あんな奴の言うことは無視して先に進もうぜ。きっと皆と合流出来るはずだ」
「はい」
私は聖武さんと一緒に前に進むことにした。すると今度は景色ががらりと変わった。今度はジャングルに瞬間移動したようだ。一体何なのもう。
「あー良かった。人いた!」
「あ、あの……私達と一緒に行動しませんか?」
茶髪でかなり髪を持っていて派手なドレスを着ている顔がキツメの女性と三つ編みの赤縁メガネの女性が私達に声をかけてきた。
茶髪の女性は体型がむっちりしていて、胸も大きくて男性受けしそうな体型をしている。……世の中不公平だ。
一方で三つ編みの女性は、ガリガリに痩せていて胸のあたりに親近感を覚える。服装も黒い服とスカートと地味めであるし、泣きボクロがあるから少し幸が薄そうな雰囲気を醸し出してる。
「あたしの名前は
「私は
「私は吉行 ユリって言います。よろしくね」
「俺は鈴木 聖武って言うんだ。まあよろしくな」
それぞれが自己紹介をする。聖武さんは何やら名取さんを見つめている。一体どうしたのだろうか。
「なあ、名取。お前、宮下を見てゲって言ったよな?」
「ん? 言ったけど……」
「お前もあいつの知り合いか……ってことは、当然アレを経験しているってことだよな?」
「はあ……アンタもそうなんでしょ? 全くお互いツイてないよねー」
二人は訳の分からない会話をしている。え? 何私にわかるように言ってよ。
するとまた場面がガラリと変わった。次に私達が移動した先は、学校の体育館のような場所だった。
そこには、十二人のテストプレイヤーが勢ぞろいしていた。私達はここに集められたのだろうか。
オールバックで筋骨隆々の柄物のスーツを着た強面の男性がこちらに近づいてきた。
「よお。どうやらもうすぐゲームとやらが開始されるようだな。ワシは
顔はにっこり笑っているけど笑顔だけで人を殺せそうなほどの威圧感だ。怖すぎる。真白さんなんか泡を吹きそうな勢いで怖がってるよ。
御岳さんの次に近づいてきたのはメシアと呼ばれていた金髪の男性だった。瞳の色は赤で、手足がスラリとして長くて高身長。モデル体型でいいなー。線が細い美形で、白いジャケットとチノパンを着こんでいる。
「やあ。僕の名前は
金髪で碧眼の少女もこちらに向かってきた。自己紹介がしたいのだろうか。
「やっほー。私の名前は
やたらとテンションの高い女の子のようだ。
「えっと……私は吉行 ユリと申します。よろしくお願いします」
私は丁寧に頭を下げた。これで皆の名前は大体わかったかな……後はあの死神って呼ばれた男の人だけだけど……
私は死神さんの方をちらりと見る。しかし、彼は私に目を合わせてくれない。
不意打ちのように、学校のチャイムのような音が鳴り響いた。体育館の檀上にボロボロの継ぎ接ぎだらけの二足歩行のウサギのぬいぐるみが現れた。
「はーい! ぼくの名前はジャクソン・ラビットだよ。みんなよろしくね」
ジャクソン・ラビットと名乗ったウサギから機械音声のような声が聞こえてくる。これは一体何なんだろう。
「突然ですが、皆様にはこのThanatos Fantasyのゲームの世界でデスゲームをしてもらいます。いいですか? もう一度いいます。デスゲームをしてもらいます」
え? デスゲーム? 何度言われたってそのことについて理解出来なかった。デスゲームって漫画や小説の中のだけの話でしょ? 現実でそんなこと起こりえるわけがないじゃない。
私と真白さんは顔面蒼白になる。しかし、他の皆は落ち着きはらっている。一体どういうこと?
「あ、この世界がゲームの中だからって油断しないで下さいよ。この世界での死は現実の死ですからね。皆様の肉体は現在こちらで管理しています。ゲームで敗北すると、毒針がプスっと刺さって死ぬ仕掛けになっております」
ゲームの世界での死は現実での死……?
「い、一体何を言っているの!」
私は思わず訊いてしまった。
「はい? あーはいそうですか。死というものがイメージ出来ませんか。それでは早速誰かに犠牲になってもらいましょう……そうだな。宮下 幸人さん! あなたには死んでもらいます!」
ジャクソンがそう言った瞬間、宮下さんの頭が爆発してしまった。首が完全にもげていて血が噴き出している。彼の肉片がそこら中に飛び散っている。え? これゲームだよね? リアル過ぎない?
茫然とする私。一方で真白さんは宮下さんの死体を見て悲鳴をあげた。無理もない。人が目の前で死んでいるのだから……って、周りの人達見ても真白さん以外冷静すぎない? 一体どういうこと?
「あー見せしめってやつ? いつものやつだよネ?」
加賀美さんは両手を後ろ手に回して頭の辺りで組んでいる。まるで余裕の表情だ。
「み、宮下たんついに死んじゃったの……?」
和泉さんは流石にショックを隠しきれてない様子だ。叫びはしなかったが衝撃は受けているのであろう。
彼の左手の甲に書かれている2という数字が1に変わった。そして、彼の吹っ飛んだ首が再生して復活したのだ。
「あーびっくりした。死んだかと思った」
「み、宮下さん! 無事だったんですか?」
私は宮下さんの元に駆け寄った。
「ええ。なんとかね。頭と首がちょっと痛むけどそれだけだよ」
宮下さんは首を上下左右に回して首の無事を確認している。良かった。生きているみたいだ。やっぱりゲームの世界で死ぬなんてバカバカしいよね?
「皆様お気づきの方もいらっしゃると思いますが、彼は復活するときに手の甲の数字が1減りました。そうです。この書かれている数字が皆様のライフなのです。このライフはゲーム内で死亡する度に1減って、この数値が0になればゲームオーバー。現実世界でも死ぬのです」
「GM。質問がある」
タクちゃんが手を挙げた。GM? 一体何の略だろう。
「流石は浅海様。もうぼくをゲームマスターとして受け入れているんだね。呼び方も玄人感があってグッド! では質問どうぞ」
ああ。ゲームマスターの略なのね。
「俺の左手の甲には数字の3が書いてある。他の九人も同様だ。ただ、宮下と名取の数値だけ違う。宮下は最初の数値が2で名取の数値は6だ。なぜ個人によって初期の数値が違う?」
その質問に対してジャクソンはニヤリと笑った。ぬいぐるみなのに笑えるんだ……
「いい質問ですねえ! しかし、ぼくがその質問に答えるわけにはいかないんだよ。なぜなら個人のプライバシーに関わる問題だからね。後で彼らに訊いてみれば? 理由を教えてくれるかもね。あーでも、教えてくれないかも。自分が不利になる情報になるかもしれないしね」
ジャクソンはタクちゃんの質問をはぐらかした。そして、ジャクソンが指パッチンをすると私達の目の前にそれぞれ情報端末が渡された。
「ふふふ。それは皆様の情報を握っているパッドです。ゲームらしく皆様にはそれぞれスキルというものを受け渡しました。スキルというのは超能力のようなもの。そのパッドで自分のスキルを確認出来ますぞ」
私は言われるがままパッドを起動して自分のスキルを確認した。私のスキルは……
スキル名『サイコメトリー』
能力:触れた物体の記憶を読み取ることが出来る。ただし生物に使用は出来ない
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