第14話 世界の大富豪『ゲーム対戦、続』
「では、まずはオレの息子、キッズ・スーパーゲーマーがお相手しよう。テーマは『レーシングゲーム』だ!」
「ほう! 霊神供・・・れいしんぐ・・・芸夢、、、げいむ・・・。神にその霊魂を捧げて願いを叶えようというのか・・・面白い。」
「何言っちゃってるのかわかんないけど、おじさん達、僕はこの全アメで10代の大会で3連覇しているんだよ? 勝ち目ないよ?」
「ふはは・・・この大魔王に向かって来るというのか!? 愉快、痛快、魔力全開で行くぞ?」
「どうぞ? 僕にはイカサマも通じないよ?」
そう言っている間に、ウィリアムの妻のクイーンが、『芸夢』の準備をしている。
用意されたのは、世界的に行われているEスポーツとやらの中でも最もテクニック・技術が必要だという『ワイルド・ウェイブ・ワールド』、通称『3W(トリプルW)』だ。
格闘アクションレースゲームの金字塔であり、アイテムや機体によるレース相手への直接攻撃が可能な、アクションゲーム的な対戦要素を含んだもので、世界の絶景の中を通る幻想的なコースの中、それぞれ能力を持ったレーサーがそれぞれ特徴を持ったレーズマシンに乗り、世界一周をかけてレースをするというゲームだ。
ゲームは立体映像スクリーンに大々的に映し出された画面で、迫力のある戦闘が行われる。
元の世界の『コロシアム・システム』のようであるな。事前に復活魔法がかけられており、死んだ瞬間に復活する。もちろん死んだほうが負けではあるが。
まあ、お互い死力を尽くして戦うのは、美しいものだ。
「じゃ、それぞれ、レーサーとマシンを選ぶのだ。」
審判になったウィリアムがそう伝える。
「では、我はこの、『ウォリヤー・パンサー』というレーサーで、マシンは、『ニトロジェット』・・・に決めたぞ。」
「ふーん、『ウォリヤー・パンサー』はパワータイプか。マシンも『ニトロジェット』って爆発力のあるマシンを選ぶって、とことんパワー重視ってわけか。
ま、僕はいつものこの相棒・『ニンジャ・チーター』で、マシンは『ドラッグスピード』だ! 変幻自在の『ニンジャ・チーター』で、さらに特殊能力を持つマシン『ドラッグスピード』だよ?
果たして僕の戦略パターンは数千通り・・・読めないだろう? 勝ち目はないよ? おじさん。」
「ははは・・・予知魔法『イベントホライズンテレスコープ』・・・人間の子供よ・・・今回は使わなくてよいのか?」
「何言っちゃってるのかわかんないけど・・・まあ、予知くらいできちゃうよ? レーサーとマシン選びで僕は相手の戦略は手にとるようにわかってるんだ。」
「ふむ。準備はできている・・・というわけか。」
吾輩の能力・すべてを看過する能力で、この芸夢の概要を見てみる。
他のレーサーには、『シーフ・モンキー(盗む能力)』、『ウィザード・レオ(魔法タイプ)』、『モンク・ウルフ(回復タイプ)』、『アサシン・タイガー(暗殺能力)』、『サムライ・クロウ(溜め攻撃)』、『アーチャー・ドッグ(遠距離攻撃)』、『スナイパー・キャット(一撃の力)』、『アーマー・ベア(防御力重視)』などなど。
またマシンの方は、『ブーストデス(パワーアップタイプ)』、『インヴィンシブルスター(無敵時間タイプ)』、『デストラクションパワー(破壊力タイプ)』、『ミラージュエナジー(幻影タイプ)』、『ワープダークネス(瞬間移動タイプ)』、『タイムアタッカー(時間制限能力)』、『ディレイボムフィアー(時限爆弾タイプ)』などなど。
ふむ、吾輩の番がもし来たら・・・『スナイパー・キャット』で『デストラクションパワー』を選ぶとするか・・・。まさに破壊神たる吾輩にふさわしいであろう。
「準備はいいか? キッズ、ラスマーキン・・・?」
「僕はいつでもいいよ?」
「ふふふ・・・我も準備は完了した。」
「では両者、位置について! レディー・・・ゴ―ーッ!!」
ウィリアムがそうスタートの宣言をした瞬間!
目の前のリアルスクリーン、立体ビジョンのゲーム画面で、ラスマーキンの操作するマシン『ニトロジェット』が即座に、その最大爆発力の攻撃をスタート地点のキッズのマシン・ドラッグスピードにぶつけたのである。
「なっ!? スタート直後で、そんな・・・爆発力が起こせるなんて??」
ドグォオォォオオオオオオォォオオン!!
キッズ・スーパーゲーマーはいつも思っていた―。
「つまんない世の中だ・・・。」と。
なにせ、世界のプロゲーマーと言っても、ほとんどのヤツラは弱く、本当に強いのが自分の両親なのである・・・。
全アメゲーム大会で三連覇をしても、ライバルと呼べるヤツはいなかった。まあ、10代部門では、本当に向かうところ敵なしだったのだ。
さらに去年は、年齢制限無しの世界大会にも出場した・・・。
が、負けたのは自分の親であるウィリアムその人にである。だが、自身の父親の決勝の相手が自身の母親であったことも、準決勝の父や母の相手が自分でも倒せると思えた相手だったことに、世界大会の意味があるのか、はなはだ疑問に感じたのも事実。家の中で、家族で対戦している日常が、事実上の世界大会なのだから・・・。
そして、今の今も目の前のふざけた格好をしている中二病全開の二人の中年に対しても、おそらくは失望すると予想していたのである。
実際の武力や戦闘能力は知らないが、少なくともゲームの世界で、しかもキッズの一番得意とするレーシングゲームで、負ける要素があるはずもなかった。
そんなキッズが今、初めて衝撃を受けた。
まさか!? ゲーム開始直後、この瞬間にパワー最大の攻撃を仕掛けてくるだなんて、卑怯・・・ではないか・・・。そういう戦略も十分考えられてきた。
が、世界の晴れ舞台で、そんな、いわば、ゲーム時間を端的に短くする行為で、観客も納得するはずもない。
また、万が一、この特攻がハズレた場合、自身の被害は甚大でもう絶対に勝ち目はない。
ゆえに、スタートから直後はお互いの様子見があり、高度な掛け合いが始まり、削り削られ、中盤以降で、勝負に出る瞬間やそれを見切る読み合いがあり・・・。
と、試合展開していうことが定石となっていた・・・はずであった。
しかし、目の前のこのおじさんは・・・。恥も外聞もなく、何のためらいもなく最大の攻撃を、しかも、その攻撃をこのタイミングで!
お互いのマシンが接触がほぼ確実にできるこの最初の唯一の瞬間にぶつけてくるだなんて!?
「ま・・・まだまだ・・・!!」
キッズは不意打ちの初撃を食らったが、なんとか体力ゲージがゼロになることは避けられた。
当然、大技を繰り出してきたラスマーキンのマシンもエナジー切れになるはず。ここからはいかに長くエナジーを持たせながら、ゴールするかが勝負となる。
キッズは諦めずに、マシンコントロールを行っていく。
「ふむ・・・そこまでは予見しておったのだ。我の勝ちであるな。」
「まさか!? エナジーがもうないはずでは!? こちらは体力ゲージこそ削られたが耐えきった。ゴールまでのエナジーは残っている!」
「我が全力を使ったとでも?」
「そんな!? ありえない・・・。あの勢いでぶつかってエナジー切れになっていないだなんて!?」
「ふむ・・・。貴様に教えてやろう。このマシンの操作にはこの部分のプログラムが起動して行われよう? それを我は遮断し、このエナジースタンドに接続したまま攻撃したのだ。スタート地点だからこそ、可能なポイントというわけだな。つまり、エナジー補給を切らずにそのまま攻撃したゆえ、我のマシンのエナジーは微塵も減っていないのだ!」
「そ・・・そんなことが・・・可能なのか? いや、今まで試したものがいないのだから・・・わかるわけがない!」
「それはな・・・我の予知魔法によって予見していたのよ? だから勝負の前に我は貴様に予知魔法『イベントホライズンテレスコープ』を使わなくてよいか尋ねたんだよ。」
「そんな・・・未来を予知・・・していたとでも言うのか?」
「我にとっては造作も無いこと・・・。」
そう会話している間に、ラスマーキンのマシン『ニトロジェット』がゴールのテープを切った。
この瞬間、キッズの敗北が確定した。
「ウィナー! ラスマーキン!」
「当然である。」
第1ゲームの勝敗は大魔王に軍配が上がったのだ。
~続く~
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