第13話 世界の大富豪『ゲーム対戦、勃発』


 ところかわって、ウィリアム・スーパーゲーマーの邸宅では―。


 その場所はジェシーと同じく、アメージングリッチ連邦国の西海岸・カルーアリキュア州のシリコン・マイン地区でも郊外の歓声な住宅街の丘陵地帯に位置にあった。


 そこにウィリアムは、家族と暮らしていた。愛妻と長男、長女の二人の子供、それにアンドロイド・メイドが1体だ。


 セキュリティは民間のセキュリティ会社、『イーギスの盾』に任せていた。







 が、さすがに世界最高峰のセキュリティ会社であっても、瞬間移動で内部に出現するモノは予想していなかった―。


 その侵入者達を感知できるわけがなかったのだ。


 だが、事前にジェシーから連絡を受けていたウィリアムはすぐにセキュリティチームへ連絡していた。




 おそらく、10分以内にはここウィリアムの屋敷に駆けつけてくるだろう。


 ウィリアムはその間に逃げ切るか・・・耐えきれば自身の勝ちだと思っていた。


 面白くなってきた・・・ウィリアムはそう思った。


 彼は根っからの『ゲーマー』だったのだ。プロゲーマーとしても『ビルド』という名前で世界ランカーでもある彼がこの状況を楽しまないわけはなかったのだ。






 「・・・ってクイーン、君もゲームに参加しようっていうの?」


 ウィリアムは自身の妻・クイーン・スーパーゲーマーに尋ねた。自身の愛妻でもあるが彼女・クイーンもプロゲーマーで世界ランカーなのだ。


 「面白いことを独り占めは許さないわよ?ウィリアム。」


 「ふふふ・・・さすがは我が愛妻・・・そう来るか・・・。」




 「もちろん、私も参加するよ? パーパ。」


 そう言って部屋に入ってきたのは我が娘、ガール・スーパーゲーマーだった。彼女も若いプロゲーマーだった。全アメ・ゲーム大会のジュニア部門で優勝している。


 「おいおい・・・。妹よ? お兄ちゃんを抜け駆けしようだなんて・・・十年早いぞ?」


 ああ、我が息子、キッズ・スーパーゲーマーまで部屋に入ってきた。危険だから屋敷から離れるように言ったんだけどな・・・。





「ウィリアム。あなたのくそったれ家族は言うことを聞きやがりゃしねぇ。命令は却下だ。」


 そう言ってメイドロイド(メイドロボット)のメイド・メイド・イン・ジャポンが入ってきた。そうだ、このメイドに家族を避難させるよう命令を出したんだった。


 まあ、仕方ないか・・・ここは家族の意思を尊重するしかないか・・・。


 「わかった・・・。命令は取り消す・・・。メイドよ。」


 「了解だ。お前に似てるな、ウィリアム。さすがは家族だ。」


 「ふん、メイドロイドのくせに生意気だぞ。」





 そして、まさにその瞬間、そばの空間になにか扉のようなものが出現し、そこから二人の男が現れた―。


 「おでましのようだな。クイーン、キッズ、ガール、メイド、武力抵抗は無駄だぞ? ルールは簡単、交渉だ。」


 「おっけー、パパ。」


 「はーい。パパ。」


 「わかってるわ、あなた。」


 「バカなんじゃないの? てめぇら。」


 口の悪いメイドだな、本当に・・・。





 「貴様がウィリアム・スーパーゲーマーか? 吾輩の名は最強破壊神、シヴァルツ・シヴァイス。名前しか思い出せなくはない、けっこう思い出している。

自分が善なのか悪なのかそれすらもわからない・・・今のところはな。さっさとお金をよこせ!」


 「我はシヴァルツ様の敬虔なる使徒であり、魔界の王にして王の中の王・ラスマーキンである。我は魔族の王にして絶対無比の存在なりき……この世のすべてを支配するものである。シヴァルツ様には逆らうなよ! さっさとお金とやらをよこせ!」


 吾輩達、参上! である―。




 「来たか・・・!? そうだ。私がウィリアム・スーパーゲーマー、世界プロゲーマーランキング1位『ビルド』である!」


 「ほう・・・待っていたようだな。吾輩達が来ることを・・・。」


 「シヴァルツ様・・・。こいつは予知魔法『イベントホライズンテレスコープ』を知っていたのかもしれませんな・・・。」




 「あれ? ラスマーキン、そんな魔法があったのか?」


 「ええ。我が開発した光と闇の魔法でございます。我はこれにより、勇者のヤツが攻めてくることを予知しておりました。」


 「そもそも予知していたのなら、なぜ、逃げなかったのだ?ラスマーキンよ。」




 「いえいえ、そこまでさすがに予知はできません。エネルギーとエネルギーがぶつかり、どういう結果になるか・・・それはランダム結果になりますゆえ、決まった結果にはなりませんので・・・。まぁ、我が配下のラプラス・ディーモンならば、あるいは可能であったかもしれませぬが・・・。」


 「ほーん、そんなもんかの。案外、予知魔法・・・使いみちがないの?」


 「ははは、これは破壊神様・・・手厳しいでずな。これでも予知ができると準備ができますゆえ、重宝しますぞ。」




 「なるほどな・・・。で、こやつらもその準備をしていた様子であるな。」


 「御意! それはそのとおりでありますな。」


 二人の意見は一致した。だが、どういった準備を『ビルド』がしていたのかまではわからなかったのだ。








 「さて、お金を欲してるとのことだったな・・・。シヴァルツとか言ったな。オレはそういった脅しには屈しないぞ? テロリストの要求には応じない!」


 「おお!パパ!かっこいい!」


 「ふっふーん、そうだろ? もっと尊敬してもいいぞ?」


 「なんだ、こやつら・・・。」




 ふむ・・・。吾輩達の来訪を待ち構えてきただけはあるな。だが、我輩達も引き下がるはずはない。


 「では、最強破壊神・第2形態・・・。闇のオーラ発動!!」


 吾輩は2倍ほどの身長になり、六本腕となり、その破壊エネルギーを身にまとい、闇の衣とし、周囲にそのオーラの波動を撒き散らした・・・。




 闇のオーラの絶望的な威圧に対して、意思の弱い人間や生物はその場で意識を保つことはできない。


 だが・・・、このウィリアムとやらの家族は、召使いのゴーレムも含め、誰一人として倒れなかったのである・・・。


 これは褒めるべきことであろう。




 「へーん! そんなの怖くないよ―だ。ヴァーチャル・ホラーゲームのほうがもっと怖かったし。」


 男の子のほうがそう言ってきた。むぅ、たしかにこの破壊神たる我輩に何の恐れもなく言ってくる。


 「ほう。全員、意識があるのか・・・。褒めてやろう。」




 「ほう・・・。我が魔王軍でもシヴァルツ様の闇のオーラの前に立てるものは幹部連中ぐらいであろうな。人間がやりおるの。」


 うーむ、吾輩の恐ろしさ・・・、この者ら、わかっておるのかな? 吾輩に恐怖を感じないなどあり得ぬのだがな・・・。


 「まあ、よい。しかし、吾輩の破壊のパワーの片鱗を見たいわけではあるまい? 早う、よこすがよいぞ。『コギテ』でもよいぞ?」




 「ふっ、そうは言っても・・・お前らの前からいなくなってしまえば、言うことを聞かせようにも聞かせる術はないだろ?」


 ウィリアムはあらかじめ決めていた、全力脱出の合図を家族に伝えた。


 「最初のゲームは・・・。『鬼ごっこ』だっ!!」


 「わー! みんな逃げろ!」


 「おっけー! 逃げろ逃げろーーー!」




 一瞬でウィリアムの家族がゴブリンの子を散らしたかのように離散した。


 「む・・・! 挑発的な態度を取っておいて、初手で逃げの一手を打つとはっ・・・!!」


 「慮外千万(りょがいせんばん)!! 龍の寝起きのようであるな!!」


 まさに予想外の出来事であった・・・。このまま、逃げ切られては、また探して追いかけていっても、同じことを繰り返されるというもの・・・。


 なかなか、考えているな・・・。 だが・・・。




 バァーーーン! 


 「ワッ?」


 「ワッツ・ハプン!?」


 ウィリアム達は周囲の見えない壁にぶち当たったかの様子であった。


 そう・・・さきほどのジェシーのセキュリティチームのブラボーが試みた時と同じことだ。




 「なかなか意表を突かれはしたがな、…知らなかったのか…? 大魔王からは逃げられない…!!!」


 「な、まさか・・・。」


 ウィリアムはそれでもどこか穴がないか確認したが、やはり見えない障壁に阻まれているようだった。


 「アイム・アンダースタン!」


 まだまだって顔のウィリアムが、我輩達の方へ振り返った。





 「ゲームをしよう! オレと・・・いや、オレたちゲーマー家族とゲームで勝ったら、言うことを聞くとしよう!」


 「ふっふっふ・・・なかなかの男であるようだな・・・。この大魔王と最強破壊神シヴァルツ様のコンビにいかなる手段であっても勝ち目はないぞ?」


 「交渉成立・・・ということでよいな?」


 「まあよい。貴様らの手に乗ってやろうではないか・・・。あ! シヴァルツ様もいいですよね? 『芸夢』とかいう手段だろうと我らに恐るるものはありませんからな。」




 「お・・・おぅ・・・。」


 いやぁ・・・ラスマーキン君よ。吾輩の意見とか聞く耳持ってなかったよね? 君、賭け事とか勝負事にその熱くなる性格・・・向いてないよ・・・。


 まあ、いいか。 最終的には吾輩がすべてをぶっ壊す・・・いわゆる『神の祭壇破壊』という技もあることだがな・・・。





~続く~



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