第8話 世界の大富豪『セキュリティチーム』
「Who are you? How did you come in my room? What happened?(あなた達は誰?どうやって入ってきたの?何が起きてるの?」
ジェシーが矢継ぎ早に質問をしてきたが、一瞬、吾輩とラスマーキンは言葉が違ったため、理解するのが遅れた。
が、すぐに、思念波を読み取り、思念翻訳魔法によって、ジェシーの話したことを理解する。
「ふむ、貴様はナノカ達とは違う言葉を話すようだな。ほれ・・・。こうすればわかるか?」
そう言って吾輩は思念波を変換し、相手の脳へ直接伝える思念波魔法を駆使した。
まあ、少し聞いてればこの言語も理解できるようになるのだが、今はこれでよい。
「吾輩の名は最強破壊神、シヴァルツ・シヴァイス。名前しか思い出せない・・・。自分が善なのか悪なのかそれすらもわからない。」
「我はシヴァルツ様の敬虔なる使徒であり、魔界の王にして王の中の王・ラスマーキンとは私のことだ。我は魔族の王にして絶対無比の存在なりき……この世のすべてを支配するものである。」
「ラスマーキン、お前の口上・・・ちと長くないか?」
「あれ? そうですか? いや、シヴァルツ様も名前だけって・・・目覚めてからけっこう経ちますので、変えたほうが良くないですか?」
むぅ・・・。ラスマーキンのやつめ、ちょっと吾輩が気にしていたことをさらっとツッコミ入れてきおったわい。
ふと前にいるジェシーを見るとなぜか、吾輩たちの姿を見てぽかんとした顔をしていた。
「おい、貴様、ジェシー・イーグルスであろう? この世界で一番の富める者であることは間違いないか?」
ジェシーがハッとした顔をして、答える。
「え、ええ。私はジェシー・イーグルスです。あなた達、その肉体・・・鍛えているのかしら? 美しい筋肉をしているわ。」
「む? 吾輩は破壊エネルギーで満ちておるからな。それは最高の肉体をしているのは間違いないであろうな。」
「我も大魔王、魔族の王である。魔法だけではなく肉体ももちろん強化されておる。」
ペタペタペタペタ。ジェシーがシヴァルツの身体とラスマーキンの身体をを触りまくってきた。
「うわ、これ、本当の天然肉体だわ。整形してないのね。すご! イッツ・ソウ・クーーール!!」
ジェシーはなんだか異様に興奮していた。
「いや、いや、そのとおりではあるが、ちょっと、待て。まずは吾輩の言うことを聞け。」
「そ、その通りだぞ。大魔王の身体に気安く触るでないわ。」
「あら。ごめんなさい。私としたことが、つい美しいものの目を奪われてしまって・・・取り乱したわ。」
「ま、まあ、次から気をつけるがいいわ。バイ・ザ・ウェイ、貴様の持っているお金を全部よこせ。紙のやつじゃ!」
吾輩がジェシーにそう伝えると、ジェシーはぽかんとした表情をした。
「紙のお金・・・うーん、それは全部と言われても無理だわ。準備できるとしても・・・銀行でなきゃ・・・。・・・というかあなた達って強盗なの?」
「強盗? なんだそれは? 我輩達は破壊神と大魔王であるわ。で、肝心のお金とやらは、その『ギンコー』に行けばあるのか?」
「まあ、事前に頭取に連絡すれば、用意できるとは思うけど・・・1ビリオンダラー(10億円)くらいまでならなんとか。」
「ほう。ではその『トウドリ』とかいう鳥に連絡するが良い。」
「はいはい、わかったわよ。でも、後でもう一回その身体に触らせてちょうだいね?」
「ふむ、まあ、それくらいはよかろう。ラスマーキンの身体を触ることを許可しよう。」
「ああ、シヴァルツ様!? するい・・・。我を生贄に捧げる気ですか?」
「知らん知らん。このジェシーという女に言え。」
とか言ってるそばでジェシーはスマホを取り出し、メイン銀行である『バンク・オブ・アメージングリッチ』の頭取・ダイスキーノ・マネーゲームへ連絡を試みた。
が、なぜか電波が通じなかった。まわりを見渡すが、どうやら、この暗黒の空間にいると通信網が遮断されると理解したジェシー。
「この空間の中だと、頭取に連絡がつかないわ。何か妨害電波か何か使ってるでしょう?あなた達?」
「ああ、この暗黒結界のことか? なるほど。では、仕方あるまい。解除するから連絡しろ。」
そう言って、ラスマーキンは周囲に張っていた暗黒結界魔法を解除した。
「あ! 電波がつながったわ。」
まわりがまた元のクリアな空間に戻り、周囲がすべてガラス張りのジェシーのいつものコントロールルームに戻った。
ジェシーはその瞬間、外から心配そうに見ていたセクレターゼと目が合った。
セクレターゼは安心した様子を一瞬見せたが、その部屋の中に二人(?)の背の高いイケメン・マッチョがいることに気づき、強盗かと推測した。
目と目をジェシーと合わせたセクレターゼは、ジェシーが何か連絡をしようとしていたことを察し、セキュリティ・チームへの通報ボタンを押した。
すると、その直後、ジェシーおかかえの私設セキュリティ・チームが駆けつけてきた。
ジェシー・イーグルスの私設セキュリティ・チームはリーダー、アルファ・エースは歴戦の英雄であり、元軍人で傭兵経験も豊富であった。
リーダー・アルファは、目配せで副リーダーの、ブラボー・ブラーヴォに合図を送り、催涙弾を間髪入れず投げ入れさせた。
また、特攻隊長のチャーリー・チャイロは、その合図とともに、コントロールルームの扉を開くと、デルタ・データとエコー・エコノミックとともに突入する。
この間わずかに数秒、実に息のあった作戦行動であった。
これではどんな凶悪犯やテロリストでも、たちまち鎮圧されるのは、コーラを飲んだらゲップが出るってことと同じくらい間違いないことと思われた。
彼らセキュリティ・チームの異名は『殲滅野郎・アルファチーム』だったのだ。
だが、今回ばかりは予想が大きく外れることとなった。
まず、催涙弾でターゲット2名は確実に虚をつかれ、涙と鼻水で正常な状態ではない・・・はずだった。
「魔法障壁・マジックバリア・・・自動発動型だ。大魔王がそのくらいの攻撃をやすやすくらうわけなかろう?」
「ふん・・・この程度、バリアを張るまでもないこと。効かんなぁ・・・。」
シヴァルツは自身の肉体をその破壊エネルギーで満たしている。まず状態異常攻撃は無効化される。
シパタタタタタタタタタタッ・・・シパタタタタタタタタッ!!
小気味よくサブマシンガンの集中砲火を浴びせる音が響き渡る。
もちろん、ジェシーを傷つけるわけにはいかないので、副リーダーのブラボーが催涙弾を投げ込んだ直後、素早くジェシーの元へ駆けつけ、彼女を抱え込み、もと来た入り口の扉から脱出を試みていた。
その動きと同時に、チャーリー、デルタ、エコーが、サブマシンガンを雨嵐のごとく撃ち込んだのだ。
「ふん、効かん効かんわ。くすぐったいぞ?」
破壊神シヴァルツへの低レベルの攻撃はすべて無効化され、ダメージはゼロであった。
大魔王もその膨大な魔力でもって弾丸すべてを反射し、無傷であった。
ブラボーはジェシーとともにドアから出ようとしたが、なにかの衝撃を受け、出口から出られないことに気がついた。なにやら見えない壁に阻まれているのだ。
「ふん、…知らなかったのか…? 大魔王からは逃げられない…!!!」
「な、まさか・・・。」
作戦指示を出したアルファが迅速に動き、その部屋の中に救援に入ろうとしたが、やはり見えない障壁に阻まれているようだった。
「ガッデム!」
「死ぬしかないな・・・貴様ら・・・。」
「いや、ここは吾輩に任せろ。」
「これはシヴァルツ様、おまかせ致します。」
「よかろう。貴様らが二度と吾輩らに楯突かないように吾輩のチカラの片鱗を見せてやろう?」
「あれは!! 見て! 彼の肉体が変化するわ!! なんて素晴らしいの!!」
ジェシーがブラボーに抱えられながら、大興奮してはしゃいじゃっていたのを無視して、ブラボーは目の前の男が変化していくさまを見て、一言つぶやいた・・・。
「オーマイガッ!!」
「最強破壊神・第2形態・・・。闇のオーラ発動!!」
吾輩は2倍ほどの身長になり、六本腕となり、その破壊エネルギーを身にまとい、闇の衣とし、周囲にそのオーラの波動を撒き散らした・・・。
「ふん・・・どうやら、吾輩と対峙できる資格があるのは、うぬらだけのようだな・・・。」
周囲で立っているのは、ジェシーとアルファの二人だけだった・・・。
~続く~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます