第11節 -調査に必要なもの-
ルーカスが採集したデータの整理をしていた丁度その時、フロリアンがやってきた。
「准尉、何か手伝えることはありますか?」
「ベースの設営はもう終わったのか?」ルーカスが返事をする。調査に夢中になって時間が経つのを忘れていた。自分が思っていたよりずっと時間が経過していたらしい。
「はい。設営が終わって、隊長から准尉の様子を見て必要があれば手伝いをして来いと言われました。」
「ありがとう。どうやら思っていたより時間が経っていたらしいな。大体のデータ採集は終わったところだよ。」
ルーカスの返事は自信に満ちていた。思っていたより順調に調査は進みそうだとフロリアンは確信したと同時に、この短時間でこれだけの調査を完了して見せるルーカスの手腕に感服した。
言葉にすれば簡単にやってみせたように聞こえるが、リナリア島はおおよそ千五百平方キロメートルの面積を持つ島だ。世界中の国土と比較すると、フェロー諸島よりやや大きい面積がある。円に近い形の島で直径はおおよそ四十三キロメートル。直線にするとフルマラソンの距離とほぼ同じである。そんな島の地形データを短時間で採集してみせた手腕はマイスタールーカスと呼ばれるにふさわしいものだ。
「いつも准尉には驚かされます。」フロリアンは心から思った事を言葉にした。
「それくらいしか取り柄が無くてね。数少ない取り柄をこうして活かせる場所があることに感謝している。」
「ご謙遜を。」フロリアンは笑いながら返事をした。
「本当の事だよ。あとは採集したデータを合成していく作業と足りないデータを補完する作業だ。細かい作業になるからサポートをお願いしたい。」
「了解しました。」ルーカスの頼みにフロリアンは快く応じた。
「それが終わったらドローンを回収してベースへ戻ろう。さっき使い込んだ糖分と今から使い込む糖分の補給が必要だ。」冗談めかしながらルーカスが言う。
「ベースには甘いお菓子も用意してあります。ここへ来る前の準備をしている時、姫埜少尉からも ”それは調査にとても大事なものだから充分に用意をするように。決して絶やしてはならないんだ。” と言われましたから。」フロリアンと玲那斗の気遣いに感謝をしながら、ルーカスはその甘いお菓子を想像してさらに頬が緩んだ。
「さぁ、もうひと頑張りだ。」
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