第2節 -中央管制にて-
北大西洋公海上に位置しているセントラル1情報管制室のレーダーでは島の上空へ調査隊マークתのヘリが近づいていく様子がモニターされていた。先の通信からおよそ二十分が経過し、まもなくリナリア島上空だ。目的地への着陸前に一度通信を交わす手筈になっているが、これだけ目標へ接近しても通信が入らない事を不思議に思った一人の男性管制官がブライアン達へ通信を行う。
――セントラル1よりマークתへ。リナリア島上空からの様子を報告されたし。レーダー上、間もなく目的地だが何か変わった事はあるか?
通信機からは雑音しか返ってこない。
――セントラル1よりマークתへ。聞こえていたら応答してほしい。マークת、応答されたし。
通信機のトラブル?管制官の顔が不安で曇る。機上にはルーカスも同乗しており、万一常用の通信機器のトラブルがあったとしても別の手段で連絡をいれてくるだろうと思っていた。今回の調査計画では国連より提供された情報に基づいて通信障害や計器不具合が起きた場合を想定した二重三重の対応策を講じている。
しかし今のところ代替手段での通信も入らない。管制官は不安そうにコンソール上のレーダーを注視する。そこにはヘリの座標を指し示す緑色の光がしっかりと点灯している。その光を改めて確認して安堵するものの、拭えぬ不安感は募る。
頼むから無事に辿り着いてくれよ。今回の調査任務にまつわる怪現象の内容を思い返しながら心の中で祈った。一秒がとても長く感じられる。そしてついにブライアン達を乗せたヘリを示すレーダー上の光は島の目的の座標に重なり止まった。一瞬、レーダーの光に乱れがあったような気がしたが気のせいだったのだろうか。無事に着陸出来た事を祈る。
その時、音声通信ではなくメールによる応答を受信した。
送信者:マークת ジョシュア・ブライアン
宛先:セントラル1管制本部
件名:【情報】リナリア島調査について
結論:リナリア島へ到着。
詳細:現地状況確認を実施予定。詳細は追って報告する。
管制官は安堵するのと同時に、この数分の出来事にやや奇妙な感覚を覚えながらも調査隊が島へ上陸した事を上層部へ報告した。
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