2
湿った押入の中で、カビの匂いを深く吸い込む。
今日も嵐がやってきて、家を荒らしていく。
僕が膝を抱えていると、また君がやってきて、僕の隣に座った。
「痛くないの?」
君が、僕の顔の痣を指さして言う。
僕は痣を撫でながら答えた。
「痛くないよ」
「どうして?」
「これは、痛いじゃなくて、アイって言うんだって」
君は不思議そうに「ふうん」と言った。
「誰が言ってたの?」
「お母さん」
お母さんは、いつも僕にアイをくれる。
そして僕はまた立ち上がり、押入れから出た。
嵐が過ぎ去った後の、独特な匂いがする。
すすり泣く声が、籠ることなくはっきりと耳をついた。
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