3.誕生日の祝い

 『ソレイユ』はチョコレートケーキの名店だ。ぼくも前にプチケーキをもらって食べたことがあるが、後にも先にもあれほど美味しいお菓子は食べたことがない。


 その『ソレイユ』の常連さん(『仮にAさんとするね。三十代前半の女性だよ』と、町田は言った)が、この土曜日――二月二十九日に予約注文の品を受け取りに来たのだという。誕生日祝い用のチョコレートケーキだった。


「お姉ちゃんの話だと、あの店のバースデーケーキはメッセージプレートを二つまでつけることができるんだけど、そのひとつに『お誕生日おめでとう 2020.2.29』って書くよう頼まれてたんだって」


 それだけなら別段おかしいことはないようにも思うのだが――。


「でも、Aさんは去年も一昨年もその前も、この時期にバースデーケーキを注文していないの。彼女が過去、同じ時期にバースデーケーキを頼んだのはで、それもだった」


「それは確かに妙だな」


「でしょ? 生野ならわかってくれると思った!」


「そりゃあね。ぼくだってなんだから」

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